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【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【しとります】  作者: 呑竜
「第十一章:王女の旅立ち」

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「冒険の書三百十四:この先ずっと」

(ねえガルム、あんたこのまま、みんなに黙って生きていくつもりなの? 誰にもホントのことを言わずに、この先ずっと?)


 フィオナの質問が、唐突にワシの肺腑《はいふ》を抉《えぐ》った。

 回り道など一切考えない最短ルートの質問だけに、余計にザクリと、深く刺さった。


「ぐうっ……?」


 思わず唸《うな》るワシを逃さんとばかりに、フィオナは畳みかけてくる。

 

(だってさ、考えてもみてよ。あんたってばみんなにめちゃめちゃ慕われてるけどさ。それってドワーフの拳士ガルムとしてだけじゃなく、めちゃ可愛いいエルフの王女フィオナちゃんとしてもでしょ?)


「自分で言うことか? ……とはいえ、事実ではあるが」


 この外見にはめんどうな部分も多々あるが、楽をさせてもらっている部分もたしかにあるのだ。

 

「初対面から相手が好意的に受け入れてくれる。率先して物や金を捧げ、多大な労力をかけてでもワシの役に立とうとしてくれる。それはドワーフ時代にはなかった、たしかな恩恵だ。おまえのおかげでワシは、ずいぶんと生きやすい思いをしている」


 だからこそだ。


「おまえはこう言いたいのだろう? 『人の好意に甘えたままでいいのか』と。『騙したまま生きるのは非礼ではないのか』と」


(え、違うよ?)


「え、違うのか?」


 思ってもみなかった返しに、ワシは肩をコケさせた。


(そんなの、別にあんたが狙って手に入れたもんじゃないでしょ。グリムザールだっけ? 転生の術を使ったのはそいつで、あんたはそれに乗っかっただけ。転生先がたまたまわたしだっただけ。それを責めるのは、さすがに変じゃない)


 グリムザールとの因縁も拳士ガルムとしての前世のことも、すでにフィオナには話している。

 イールギットとの関係も含めてなかなかの情報量だったはずだが、フィオナはそれほど動揺していなかった。


 ここまでの経緯が経緯だったせいかもしれんが、「ま、それぐらいのことはあるかもね」と、こちらが拍子抜けするほどにあっさりと受け入れてくれた。

  

(誤解しないで。わたしは責めてるわけじゃないの。言いたいのはさ、そのままだと後悔するよってこと)


「後悔……?」


 フィオナと喋っているうち、いつの間にかけっこうな時間がたってしまっていた。

 メアリが指示していたのだろう、どこからかやって来たエルフのメイドたちが泉の周りに小さなテーブルを並べ、その上に弁当と水筒を載せて去った。


「ディアナちゃーん! お昼だよー! お弁当食べよー!」


 車座に座った皆の中から、ルルカがぶんぶんと手を振ってくる。

 何より食欲優先のチェルチが、早くも弁当に食らいついている。

 マリアベルがルチルナのために弁当を開けてやり、ルシアンやデクランが弁当の豪勢さに目を剥いている。


「……っ」


 いつも通りといえばいつも通りの光景に、しかしなぜだろう。

 ワシは一瞬、息を飲んだ。


「お弁当の中身は以前の探検ごっこの時のものをそのまま再現してみました。フィオナさまの大好きな『衣サクサク川魚のフリット』と『季節のキノコのピラフ』。『甘くてほろ苦い山菜の新芽の蜂蜜煮』に『野イチゴと干しブドウのねっとり甘酸っぱいマフィン』、『酸味豊かなコケモモのジュース』もありますよ」


 メアリが真面目くさった顔で、弁当の中身を解説してくる。

 

「おお……そうか」


 ドワーフ時代には考えられなかったほどに優しく温かい場所で、皆がワシを待ってくれている。

 アレスたちと冒険していたあの頃のように、陽気に手を振ってくる。

 一緒に飯を喰い、ジュースを飲みながら語ろうじゃないかと誘ってくる。

 なんてことのない光景が、なぜだろう胸にくる。


(もしもこの先……何かよくないことが起こって、あんたが死んじゃったとしてさ。みんなが悔やむのは、あんたの死じゃないんだ。わたしが生きて、わたしが死んだ。そのことを悔やむんだ)


「……それはもちろん、当然だ」

 

 空気が乾燥しているのだろうか、変に喉が渇く。 

 

「どうあれこいつはおまえの体で、悔やまれるのは、偲《しの》ばれるのは、おまえであるべきだ」

 

 なぜだろう、口が勝手に物を言う。 

 親に悪さを見つかった子どもがそうするように、弁解じみた言葉を勝手につぶやく。


「ワシはなあ、とっくに覚悟を決めているのだ。おまえの体を乗っ取ったことも、この生にしがみつく意地汚さも、おまえや、おまえと関係するすべて者の気持ちを踏みにじる悪人になることも」


(墓の下まで持っていけば、それでいいだろうって? 他の誰にも知られていないなら、傷つくのは自分だけだからそれでいいだろうって? いかにもドワーフな脳筋発言ね。でもね? でもさ?)


 ザクリ。

 斬り込むような口調でフィオナは言った。

 

(ねえち(・ ・ ・)ょっと( ・ ・ ・)、ナメないで(・ ・ ・ ・ ・)くれる( ・ ・ ・)?)


 次の瞬間に口をついた言葉は、想像以上に苛烈だった。

 実際にはそうされていないのにもかかわらず、胸倉を掴まれているかのような強さがあった。


(ルルカも、他のみんなも、もちろんわたしもね。あんたが思うほどに弱くないの)

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