「冒険の書三百二:エルフヘイムの今後と褒賞と」
国王自体が最大の癌だったので、その後は誰が継いでもマシにはなるだろう。
とはいえ、適当には選べない。
新王即位後の空白時間を敵対勢力に突かれるのも避けたいし、それなりの人物を摂政に据えなければいけない。
ということで、摂政はイールギットが務めることになった。
これはもう実力実績含め、文句の出ようがないところだろう。
ワシ個人としては嫌いだが、国民からの信頼も篤い奴だしな。
新国王はヘリオンの弟にあたるエイブラムが務めることになった。
外国へ『遊学』という名目で追放されていたのを呼び戻すそうだ。
ヘリオンとはまったく違う賢明な青年であり、立派な王になってくれそうだとか。
摂政と新国王の目星がついたところで、次に行うのは癌細胞の切除だ。
ヘリオンの傍で甘い蜜を吸っていた側近たちから官職を剥奪、ヘリオンと同じく民間に落として肉体労働に従事させることになった。
甘い蜜を吸う以外にも有能な家臣たちを閑職へ追いやっていたということなので、これもまた妥当な差配だろう。
ちなみに「フィオナよ。おまえがもう少し大人であれば女王を襲名させられたのになあ~……」とため息まじりでつぶやかれた時は肝が冷えたぞ。
いくら孫バカのイールギットといえどもそれはさすがに……さすがに、なあ?
+ + +
エルフヘイムの今後の体制が決まったところで、今回の国難に対し特別な功のあった者たちに手厚い褒賞が与えられることになった。官職の無い者には官職が与えられ、金や土地が与えられた。
幼いルチルナもなかなかの官職を与えられ、ピエルラ家の家長にベタ褒めされていた。
頭を撫でられ、肩を叩かれ、本気で次の家長に推薦されぐらいの勢いで……いや、ルチルナの成長具合を考えればあり得るか?
なにせ、若干五歳にしてあの落ち着き用だからな。
大外壁に迫る闇の軍団の大軍を前にしても泣かず、逃げずにマリアベルの指揮を皆に伝え続けた。
あの働きぶりを見れば、誰もがその未来に賭けたくなるだろう。
などと考えているうちに、ワシらは宝物庫へ案内された。
ルルカたち他国の人間へは官職を与えられないし、そもそも本人たちが褒賞金を望まないので、代わりに古代文明の遺物である『魔導工芸品』を与えることにしたのだそうだ。
ちなみにワシも、そのおこぼれに預かることになった。
「わわ、すごいねディアナちゃん。これ……全部が魔導工芸品?」
「ううむ……こいつはすさまじいのう。宝物庫全体が魔力の輝きに満ちているではないか……」
うず高く積まれた魔導工芸品を前に、ワシらは思わず息を飲んだ。
さすがは伝統あるエルフ族の宝物庫というべきだろう、捨て値で売り払っても家の一軒や二軒は余裕で建てられるような逸品ばかり。
「こ、これはさすがに悩んじゃうなあ~……」
「んんん~……あたいもわかんない。飯ならともかく、こうゆ~のを選ぶのは苦手だなあぁ~……」
ルルカやチェルチだけではない。
皆が皆、あれがいいこれがいいとさんざん頭を悩ませた結果――
ルルカは聖気の消費を半分に抑える『聖女の首飾り』を手に入れた。
ルルカお得意の神聖術を消費を気にせず打てるようになるというのだから、なんとも恐ろしい話だ。
チェルチは魔術やスキルの効果を増幅できる『増呪の護符』。
魔法戦士としての戦力アップに加え、敵を乗っ取る『魂魄支配』の強化もできる、素晴らしい選択だ。
ルシアンは光の盾を出すことのできる腕輪、その名も『光の盾』。
攻撃力は高いが防御力に難のあるルシアンにとってはなかなかいい選択だと思う。
ワシは短時間ではあるが空気を足場にできる『グリフォンブーツ』。
敵の意表をついた攻撃や回避ができる他、これからの『闇の軍団』との戦いにおいて想定される大型魔獣との戦いに役立つのではないだろうかと考えての選択だ。
ワイ助にも褒賞が与えられることになった。
『蒼穹の翼』という名の魔獣用の鞍があるが使い道がないから(つまりは余っていたから)とのことだったが、乗り手の魔力を吸収して一時的に飛行能力を増強できるとのことで、なかなかに使い勝手がよさそうだ。
ワシとの絆が深まったことが嬉しいのだろうか、本人(本ワイバーン)は「キャーキャー」と嬉しそうに鳴いていた。
マリアベルは最後まで悩んでいたが、この世の意志あるものすべてと話すことのできる指輪『世界と語る者』に決めた。
いいアイテムだとは思うが、特にマリアベル自身の能力には影響を与えないものだし、この選択には少し疑問が残るが……。
「しかし……改めてすごいな、どれもこれも伝説級の品だぞ……?」
それなりの功績を上げたという自負はあったが、まさかこれほどの物がもらえるとはな……。
「ま、ままままあ~わたしたち頑張ったしね? がががが外交官の補助どころじゃないお手柄を立てたしね?」
「思い切り声が上擦っとるぞルルカ」
「だだだだだだってさ~、こここここお~んな国宝級のアイテムが貰えるだなんて思わなかったんだも~ん」
膝をがくがく震わせているルルカにツッコみを入れていると……。
「フィオナ、こっちへ来い。おまえの活躍は魔導工芸品ごときで済ませていいものではないからな。他に官職も与えられることになったぞ」
ワシらの選択を待っていたのだろうイールギットが、おかしなことを言いながら手招きしてきた。
「官職うぅ~? なんだなんだ、めんどうなのはいらんぞ?」
いったいどんな官職を与えられるのか、それによってワシを縛ろうとしているのではないかと疑っていると……。
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