「冒険の書二百九十:チェルチ、葛藤する」
~~~チェルチ視点~~~
ディアナと再会できた時さ、あたいはホントに嬉しかったんだ。
だって、一度は死んだもんだと思ってたから。
ドロガロンに呑み込まれてさ、そのまま滝つぼへ真っ逆さまでさ。
そんなの、死んだと思うに決まってんじゃん。
だけどディアナは生きてた。
ミニコーラスを通した『念話』のおかげで無事が確認できて、色々面倒ごとに巻き込まれてはいるみたいだけどエルフヘイムに向かってきてるのがわかった。
そりゃあもう、嬉しかったよ。
ああ、また会えるんだ。
一緒に話せて、一緒に笑えて、一緒のもん食べて。
夜は肩を並べて寝て、寝相の悪いあいつの足を文句を言いながらあたいの顔からどかして。
今までと変わらない旅ができるんだって思って、ニッコニコになっちゃった。
すぐに会えたらよかったんだけど、そういうわけにもいかなかった。
こっちはこっちで色々あったから。
イールギットに襲われて捕まってさ、牢屋にぶちこまれてさ。
ダークエルフの連中はエルフヘイムに入り込んでるし、中にはあのギイや、変身したヴァネッサまでいるし。
あげくの果てには世界樹の命の源である『翠星珠』が割られちゃって、『千年結界』がなくなったのをいいことに『闇の軍団』が一斉に雪崩こんできて……。
もう終わりだあ~って思ったよ。
あたいたちは負けたんだあ~って……でも、ぜんぜんそんなことはなかったんだ。
ここぞってとこで、ディアナが駆けつけてくれた。
エルフたちの指揮をとって、闇の軍団に対抗させてくれた。
ワイバーンに乗りながら飛行生物たちをやっつけて、しまいにはロック鳥だぜ?
竜種と並ぶ伝説の魔獣を、イールギットのやつと息を合わせてだけど、やっつけて見せたんだ。
そんでもって、地上に降り立ちながら言うんだよ。
「待たせたな皆」って、すんごいイイ笑顔で。
あたいもさ、色々言いたいことはあったんだ。
「心配かけやがって」とか。
「遅いんだよまったく」とか。
「今度飯おごれよ、喰えなくなるまでつき合ってもらうかんな」とかとか。
憎まれ口を叩きたくなったんだ。
だけどなんでか、言葉が出てこなくなった。
本人を前にしたら、なんも言えないの。
なんかさ、キラキラしてるんだよ。
ディアナの周りにキラキラしたものがあって、まぶしくて顔が見れないの。
最初は『精髄』によるもんだと思ってた。
復活した魔力が体の中に納まりきらずにあふれて輝いてるんだって、だからまぶしいんだって。
でもさ、なんか違うみたいなんだよ。
光のせいだけじゃないみたいなんだよ。
だってそれだけなら、ルルカがディアナに抱き着いてるの見てモヤモヤしたりしないもん。
そう、あたいはモヤモヤしたんだよ。
ルルカが抱き着いてるの見て、それ自体はいつもの光景なのに、ちょっとだけ……ヤダなって。
そうゆーの、ヤメてほしいなって。
んでさ、急に思い出したりするわけ。
『あんたもサキュバスなら、自分のすべてをかなぐり捨ててもいいと思えるような真実の愛を見つけるんだよ』って。
人族の旦那を愛するがあまりあたいの育児を放棄したサイテーな母ちゃんの言葉が、頭の中に蘇るわけ。
「なんでこんな時に……思い出すんだよっ」
あたいは思わず頭を抱えた。
「ああああああもうわかんない! あたいってばなんか変だ! ひさしぶりにディアナに会ったら変になっちゃった! 全然うまく話せないし顔もきちんと見れないし! わーわーわー! わーわーわー!」
耳を押さえて、声を荒げまくって。
あたいは逃げた。
ディアナに顔を見られないように、これ以上変なことを言わないようにするために。
その場から飛んで逃げた。
「あたいは別に、ディアナのことなんかなんとも思ってなああぁあぁ~い!」
誰にも聞こえないとこまで飛んでから、思い切り叫んだ。
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