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【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【発売間近】  作者: 呑竜
「第十章:王女の帰還」

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「冒険の書二百七十五:走り出す」

「フィオナ・ウル・ノクス・エリオンドール。おまえまで復活しようとはな」


 魔の森でオルグに襲われ、転んで頭を打って死んだフィオナ。

 とことんドジなエルフ娘の魂までもが、『万能の霊薬(エリクシル)』のおかげで復活しようとは。


 驚いたワシの問いかけに、フィオナは――

 

(ん~……『復活』というよりは『再生』に近いかも? 最初からいたのはいたんだけど、頭がぼんやりしてて声も出せなかった感じ?)


「なるほど『再生』……そう考えればつじつまが合うか。ワシがらしくもない振る舞いをしたり、らしくもない感情に振り回されたり。それらはすべておまえの半端な魂が、感情のチラツキが干渉していたせいだったのだな?」


(人のせいにしないでっ、あと半端とかチラツキとかも失礼だしっ。っていうかもともと、これ(・ ・)はわたしの体だしっ)


 まあ、それはそう。


「……ん〜で、どうするのだ? すぐに体を返せというのか?」


 本来の持ち主がいるなら、返すのが筋だろう。

 しかし、今この状況で体を失うのはさすがに困るのだが……。

 色々と問題が山積みだし、ルルカにチェルチにリゼリーナにと、謝らなければならない相手が多すぎるのだが……。


(できればそうしたいところなんだけど、そう上手くもいかないみたい。感覚的には『使い魔(ファミリア)』に近いかも? 魂は共有してるけど、主導権はガッチリそっちに握られてるみたいな?)


「使い魔? ああ、魔術師どもの使役する『意思を持った使い走り』か。カラスとか、ああいう」


(だ、誰がカラスよ! 他にもっと可愛いのがいるでしょうが! 猫とか犬とかフェレットとか……!)


「……四足獣ならいいということか?」


(そういうことじゃな~い! というか愛玩動物ペット扱いしないで! わたしはエルフよ! しかもお姫さまなの! あんたみたいな野蛮なドワーフと違って高貴な存在なんだから!)


「ああもう、いちいちうっるさいのう~……」


 ギャアギャア騒ぐフィオナに辟易へきえきして耳をふさぐワシ。

 体を返さなくて済んだのはいいが、こいつこのまま延々と騒ぎ続けるつもりじゃなかろうな……。

 それはさすがにキツイな、などと思っていると……。


(こらドワーフ、耳をふさいでないでわたしの話を聞きなさい! ていうか、そんなことしても意味ないけどね!)


「ああ~……どうやらそのようだな」


 フィオナの声は、どうやら耳の奥から聞こえてくるようだ。

 より正確には、脳の辺りか?

 外からではなく内からくるものなので、どうやっても防げないと。

 ああもう、本当にめんどくさい。


(ともかく敵よ、敵をなんとかしなさい!)


「敵」


(わかるでしょ!? わたしの国を滅ぼそうとしてる連中よ! 『闇の軍団(ダーク・レギオン)』って言ったっけ!? 全員やっつけて! 踏みつけて! 投げ飛ばしてギッタンギッタンにしてやるの!)


「ずいぶんと過激な姫さまだのう~」


(当たり前でしょ! あいつらのせいで『翠星珠エルダースフィア』が壊れて! そのせいでピピはいなくなっちゃったんだから! わたしの、親友が、世界樹、に、きゅう、しゅうされ、ちゃって……っ)


 急にトーンダウンしたかと思うと、ぐずりと鼻をすするような声が聞こえてきた。

 魂が鼻を啜る姿というのは想像がつかないが、泣きたい気持ちはよくわかる。

 友を失ったことでできる胸の空白も、今のワシなら想像できる。

 

(本当は、もっと、早く、復活、できたら、よかったん、だけど……)


「うむ」


(こんなに、遅く、なって……)


「そうだな……悪い。遅すぎた」


 もっと早く復活できていたなら、やり方次第ではフィオナとピピに話をさせてやれたかもしれない。

 だが、すべては遅すぎた。

 すでにピピはおらず、フィオナとはもう会えない。

 わずかな時間差で、ふたりはすれ違ってしまったのだ。


(しかた、ないわ。ピピの、おかげで、わたしは、再生、できたん、だか、ら。それに……最後に声、聞けたし、あいつ、ありがとって、言ってくれたし……)


「……言っていたな」


 ピピの別れのあいさつは、ワシにではなくフィオナに向けられたものだった。

 そういう意味ではふたりの会話は、別れは成立していたのかもしれない。


 とはいいつ、そんなに簡単に割り切れるものではないだろう。

 なにせフィオナはまだ八歳の子ども。

 ギャアギャアと泣いて騒いで、不満を叫び続けることだろう。

 大人としては、それをしっかり受けとめてやるのが責務なのだろうが……と?


(――はい、ここまでっ)


 パン、というのは頬を張った音だろうか?

 魂が自らの頬を張る、というのはどういう状況なのかわからんが、ともかくフィオナは気合いを入れ直したようだった。


(こんな情けない姿を見られたら、ピピに笑われちゃう。わたしはピピの憧れの友だちで、お姉さん的存在で、冒険者の先輩でなきゃいけないの……だからここまでっ)


「フィオナ……」

 

 ちょっとしたひとり言ではあったが、フィオナのピピに対する気持ちはすべてわかった。

 どんな存在でいたかったのか、どんな風に思われたかったのか、ふたりでどんな旅をしようとしていたのか。


 その上で、こいつは強がろうとしている。

 ピピに恥ずかしくないように、精いっぱい背伸びをしようとしているのだ。

 

(ていうことでドワーフ、もう一回言うわよ。奴らをやっつけなさい。わたしたちに手を出したことを、墓の下で後悔させてやるの)


 結果的にフィオナが選んだのは、すべてを怒りに転化する道だった。

 ピピを失った心の空白を、悲しみを切なさを、眼前の敵にぶつけることにしたのだ。


「……ふん、なるほどな。そうやって折り合いをつけるつもりか。プンプン怒って、ブンブン拳を振り回して」


 幼い振る舞いだが、嫌いな幼さではなかった。

 やられたらやり返すべきだし、売られたケンカは積極的に買うべきだ。


(……なによ。子どもだと思ってバカにしてるの?)


 ワシは苦笑した。

 これから長い時を共に過ごすかもしれぬ相方とのまさかの共通点――怒りっぽさとケンカっ早さ――を快く思いながら、口もとを緩めた。


「バカになどしておらんよ。それにな――怒っているのはワシも同じだ。だから、信じて任せろ」


 フィオナと話すワシを不審に思ったのだろう――当たり前だが――ルチルナとマリアベルが心配そうな目で見つめてくる。


「こんなに長いひとり言を……ひ、姫さまおかしくなっちゃったのよ?」


「まるでもうひとり誰かがいるかのような……? や、やはり薬が効き過ぎたのか? 大丈夫か師匠?」


 ハラハラ、ハラハラ。

 しまいには僧侶の治療が必要なんじゃないかとまで言い出した。


「落ち着けふたりとも、ワシは平気だ。心配するでない」


 これ以上おかしな奴みたいに思われるのはごめんだ。

 ワシはゴホンと咳払いしてごまかすと、辺りを見渡し状況を確認した。


 ①ワシが飛び降りたため、馬車二台は現在停止している。

 ②ここら一帯の闇の軍団は、傷を負ったドロガロンの後を追っている。

 ③ここら以外の闇の軍団の先鋒が、エルフヘイムに達している。魔物避けの巨大な壁である『大外壁』に火矢が放たれ、吶喊とっかんの声がここまで聞こえてくる。

 ④突然の襲撃に、エルフたちは動揺している。反撃している者もいるがあくまで散発的で、集団的な反撃は見受けられない。


 要約しよう――もはや一刻の猶予ゆうよもない。


「のう、マリアベルよ、ルチルナよ。ワシが先行して奴らを止める。道は開けておくから、おまえたちは後からついて来い」


「後から? 道は開けておく? それっていったい……」


「えっと……みんなで馬車に乗っていかないのよ?」


「いらん。馬車というか、おそらく馬単体よりもワシの方が速い」


「「…………え?」」 


 ワシは走り出した。

 全身に気を巡らせ、筋骨を強化し、心肺を強化して。

 グンと力強く地面を蹴ると、驚くふたりの声を置き去りにして。

 

 ──ズドドドドドドッ!


 爆発的な勢いで走りながら、改めて名乗った。


「ちなみにだが、ドワーフと呼ぶな。ワシはガルムだ」


(はっや……え、なに? なんて言ったのっ? ガルムっ? それがあんたの名前っ?)


 あまりの速さに驚いているのだろう、暴風の中で会話してでもいるみたいに、フィオナは声を張り上げた。


「そうだ、自分で言うのもどうかと思うがな、かつては最強の武人と呼ばれておった。故あって、ここ最近は調子が悪かったがな。今さっき、復活した。この体で出し得る、最大限を出せるようになった」


(さ、最大限……っ? だからこんなに速いわけっ?)


「い~や、こんなのまだまだじょの口よ。おっとそうだ、魂のみの存在であるおまえにあるかどうかは知らんがな……くれぐれも、舌を噛(・ ・ ・)むなよ( ・ ・ ・)?」


 言うなり、ワシはさらに加速した。


(……へ? え……? それってまさか、もっと速くなるってことじゃないわよね……ってええええええええぇぇぇぇぇ~っ!?)

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