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【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【しとります】  作者: 呑竜
「第十章:王女の帰還」

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「冒険の書二百七十一:ピピの身に起きたこと」

「ダメえぇぇぇぇ~!」


 マリアベルの悲鳴じみた声が、辺りに響き渡った。


 今まさにドロガロンにとどめを刺そうとしていたワシだ。

 さすがに構っている暇はないから無視しようとしたのだが……。


「師匠! 師匠頼む! ピピを止めてくれ!」


 よほどの緊急事態なのだろう、マリアベルが必死に助けを求めてくる。


「くっ……?」


 ピピの身にとんでもない危険が及んでいるのは間違いない……となれば放っておくわけにもいかんか。

 だがここで仕留め損なうと後が面倒だし……などと躊躇しているうちに、ドロガロンは森の奥へと逃げ出してしまった。

 敵対していたのだろう(捕食者と被捕食者の関係だから当然だが)『闇の軍団(ダーク・レギオン)』がここぞとばかりに後を追っていくが、どちらが勝つかはわからない。


「『精気吸収アブゾーブ』のことを考えるあとあと面倒なことになりそうな気もするがっ……などと悔いている場合ではないかっ! マリアベルよ、いったいどうした!? ピピに何があったのだっ!?」


 振り返ると、そこにはピピがいた。

 馬車から降りたまま、空を見上げていた。


 もちろん、それだけなら不思議でもなんでもない。

 植物が外に出るのは当たり前。

 光を求めて空を見上げるのも、当然といえば当然。


 だが、今は状況がよくなかった。

 ドロガロンや『闇の軍団(ダーク・レギオン)』との戦いの最中であるのはもちろんだが、ついさっき世界樹の核(・ ・ ・ ・ ・)が破壊( ・ ・ ・)された( ・ ・ ・)ばかりだ。

 つまり、世界樹の幼生体であるピピは――

  

「ピピ、馬車の中に戻れ! いま外に出たらおまえは……!」  


 ワシは叫んだ。

 ピピに駆け寄りその手を掴もうとしたのだが――すり抜けて(・ ・ ・ ・ ・)しまった( ・ ・ ・ ・)

 

「おまえ……体が……っ?」


 ピピの体には、すでに重大な異変が起きていた。

 白色の花弁を思わせるような頭部も、ぐるぐると年輪のような円を描く瞳も、ちんまりとした若草色の体も。

 そのすべてが半透明になっていた。


 たしかにそこにいるはずなのに触れない、触ろうとしてもすり抜ける。

 まるで幽体にでもなってしまったかのようだ。


「師匠! いったいどうすれば……!?」


 半狂乱になったマリアベルが、ワシの肩を掴んで盛んに揺さぶってくる。

 気持ちをどこに置いていいかわからないのだろう、足をジタバタさせている。


 その気持ちはわかる。

 わかるのだが……。

 

「これは……」


 ワシは瞬時に理解してしまった。

 ピピの体に起きている異変、これはもはや、止めることができないものだ。

 

「もう……」


 世界樹の苗木は、世界各地に世界樹を増やすことを第一目的とする。

 それが叶わぬ場合は、母樹のもとに栄養を持ち帰るのを目的とする。


 今このタイミングで馬車の外に出て来たのは、対魔術防御のかかった鉄板ですら防げないほどに母樹からの『引力』が強まったからだろう。

 核を破壊され滅びゆく母樹のために、とうとうその身を捧げなければならなくなったのだ。


 つまりピピのこれは本能に基づく行動であり……一度そのスイッチが入ってしまったら、おそらく誰にも、止められない。

 ピピの脳は切り換わってしまった。

 それこそ手足を縛ろうと、頑丈な牢屋に閉じ込めようと無駄だろう。

 なんとしてでもピピは外へ出ようとし、そして……。


「ごめんね……フィオナ」


 ピピは振り返ると、ワシの顔を見て微かに笑った。

 いつもの元気なそれとは違う、どこか寂し気な笑みだった。


「ピピはね、おかあさんのところに行かなきゃいけないの。だから、一緒に旅には行けないの」

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