「冒険の書二百六十一:イールギットは後を追った」
~~~イールギット視点~~~
「わ、わ、変なこと言っちゃダメだよチェルチちゃん……ってものすごい注目されてるうぅぅ~っ!? えっとえっと、わたしはルルカと言いましてぇ~……デクランさんの護衛で~……ハイドラ王国の勇者学院の生徒で~……あとあと、ディアナちゃんの友だちですっ! 今日はその……そこにいるダークエルフのお姫さまを名乗るギイが、実は悪者だってことを伝えに来ました!」
女神教の僧侶のルルカが、とんでもないことを言い出した――と同時に、ギイの護衛の女騎士が声を荒げた。
「ああああもう見なさいよ! あの子たちに追いつかれちゃったじゃない! それもこれもあんたがわちゃわちゃ騒いでたからよ!」
パシリとギイの頭を叩いたかと思うと……。
「ええい、こうなったら強行突破するしかないわね! さ、行くわよあんたたち!」
ここまできたらもう誤魔化すことはできないという判断だろう、女騎士の指示を受けたダークエルフの騎士たちが、一斉に動き出した。
「姫さまをお護りしろ! 指一本触れさせるな!」
「姫さまどうか! このままお進みください!」
「うおおおおっ、かかってこいエルフどもおぉぉぉぉ~!」
妙な結束力を見せたダークエルフたちがギイを護るように動き出した。
剣を抜き、雷や氷の魔術を唱え始めた。
まさかの事態に、エルフたちは動揺を隠せない。
「なんだ!? 何がどうなっている!?」
「え、え……侵入してきた奴らとダークエルフ、どっちと戦えば……っ!?」
「だ、ダークエルフは味方のはずでは……っ!?」
まさかダークエルフが敵に回るとは思っていなかったのだろう、おっかなびっくり剣を抜き弓を構えるが、攻撃に移る判断を下せないでいる。
中にはルルカたちの方を優先して対処しようとする者までいるが……。
「バカ者どもが! この状況を見てまだわからんか! 敵はダークエルフのほうだ! 幸い数はこちらが多い! 囲んで殺せ!」
イールギットが一喝すると、エルフたちが正気に戻った。
ダークエルフたちに向かって弓を放ち、剣と魔術で攻撃を加え、外部に救援を求めと、遅ればせながら正しい行動をとっていく。
結果として、数ではエルフが、士気と実力ではダークエルフが上になった。
一進一退の攻防が続くところへ、ルルカたちが加わった。
一丸となって、ものすごい勢いで。
「おら、ケガしたくなかったらどきなエルフども! 『呪いの稲妻』!」
先頭をきったチェルチが黒い稲妻を放って、ダークエルフの騎士を三名倒すと。
「義を見てせざるは勇無きなりというからね! 僕も協力させてもらうよ!」
ルシアンが光の剣を振るって続き、ダークエルフの騎士を三名倒した。
「イールギットさま! ここはわたしたちに任せて先に進んでください!」
ルルカが異常なほどに光り輝く戦杖でダークエルフの騎士をひとりぶっ飛ばすと、先に進むようイールギットに促した。
「牢にぶち込んだ恨みを忘れて味方してくれるのかっ……などと気にしている場合ではないな! いずれにしても助かった! 恩に着るぞおまえたち!」
イールギットは礼を叫ぶと、急いで首を巡らせた。
王の間の後ろにある扉が開け放たれており、長い階段が続いているのが見える。
ギイと女騎士はもちろん、ヘリオンの姿までも見えない。
ということはつまり……。
「あのバカ……人質にされたのかっ!?」
どさくさ紛れに国王をバカ呼ばわりすると、イールギットは長杖に座った。『飛行』の魔術が付与されたそれでもって高速で宙を飛び、ギイたちの後を追った。
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