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線路はいつか途切れる  作者: 秋村 楼
5/9

replay.2

まさか、現実でこんなことが起こるだなんて…


浩介は慣れない靴に苦戦を強いれながらも、人混みを避けて走った。


さっきと同じホール、その3階には例の子供がいることを即座に確認し、エスカレーターの方へ向かった。一階ホールでは、変わらぬ光景。狂気だ。


エスカレーターを登ろうとした時、彼は気づいた。ぶつかった女性がエスカレーターに乗っていたのだ。今回は急いで来たので、出くわす場所が違った。


浩介はまた(ひらめ)いた。走って登りながら、突然奇行に走った。


その女性の長い紐のバッグを(ぬす)()の如く奪いとったのだ。


「ごめーん!借りまーす!」と一言


「ちょ、待ちなさい!!ドロボー!!」

と一切浩介の声など聞こえず、怒り叫んだ。


浩介もまた彼女の声が虚しく聞こえず。バッグを握りしめ3階へと、一段飛ばしもしながら登った。


そして本日二回目の3階、ガラス柵へ着いた。


すかさず彼はバッグの提げを掴み、慟哭(どうこく)の子供へと向けた。


「何も考えずこれに掴まれ!!」と大声で子供に言った。


子供も声にビクつきながらもバッグに捕まる。


一階や二階の目線は確実にこちら側を向いていた。スマートフォンも。

プレッシャーに押されながらも、懸命にゆっくりゆっくりと紐を引っ張る。

「ぜってぇ離すなよ!助けてやるからな。」


そして数分後、子供は救出することができた。幸い怪我はなかった。



激しい歓声、抱き合う親子、10分前の地獄の光景が一変し、理想へと変わった。


謝りながら、バッグを女性へ返そうと……



ん?



返そうとしてる手が固まった。いや止まったのだ。一切動かなかった、


この感覚…まさか!


そして、目の前の女性が不敵な笑みを浮かべ、ウィッグを外し、体も風船のように(しぼ)み始めた


老いぼれた姿、顔に見覚えもある。先程も脳裏(のうり)によぎった男だ。


「どう?英雄(ヒーロー)になった感覚は?君の電車の風景もなかなか良いもんになったでしょ。」


「黒ッ!」


「まぁまぁ落ち着いてよ。ってかあんたがそんな顔になるの初めて見たよ。」


「え?」

そう、彼は笑っていた。いつ以来だろう。

半年ぶりかな?


列車は加速し始める…


〜続く〜





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