replay.2
まさか、現実でこんなことが起こるだなんて…
浩介は慣れない靴に苦戦を強いれながらも、人混みを避けて走った。
さっきと同じホール、その3階には例の子供がいることを即座に確認し、エスカレーターの方へ向かった。一階ホールでは、変わらぬ光景。狂気だ。
エスカレーターを登ろうとした時、彼は気づいた。ぶつかった女性がエスカレーターに乗っていたのだ。今回は急いで来たので、出くわす場所が違った。
浩介はまた閃いた。走って登りながら、突然奇行に走った。
その女性の長い紐のバッグを盗っ人の如く奪いとったのだ。
「ごめーん!借りまーす!」と一言
「ちょ、待ちなさい!!ドロボー!!」
と一切浩介の声など聞こえず、怒り叫んだ。
浩介もまた彼女の声が虚しく聞こえず。バッグを握りしめ3階へと、一段飛ばしもしながら登った。
そして本日二回目の3階、ガラス柵へ着いた。
すかさず彼はバッグの提げを掴み、慟哭の子供へと向けた。
「何も考えずこれに掴まれ!!」と大声で子供に言った。
子供も声にビクつきながらもバッグに捕まる。
一階や二階の目線は確実にこちら側を向いていた。スマートフォンも。
プレッシャーに押されながらも、懸命にゆっくりゆっくりと紐を引っ張る。
「ぜってぇ離すなよ!助けてやるからな。」
そして数分後、子供は救出することができた。幸い怪我はなかった。
激しい歓声、抱き合う親子、10分前の地獄の光景が一変し、理想へと変わった。
謝りながら、バッグを女性へ返そうと……
ん?
返そうとしてる手が固まった。いや止まったのだ。一切動かなかった、
この感覚…まさか!
そして、目の前の女性が不敵な笑みを浮かべ、ウィッグを外し、体も風船のように萎み始めた
老いぼれた姿、顔に見覚えもある。先程も脳裏によぎった男だ。
「どう?英雄になった感覚は?君の電車の風景もなかなか良いもんになったでしょ。」
「黒ッ!」
「まぁまぁ落ち着いてよ。ってかあんたがそんな顔になるの初めて見たよ。」
「え?」
そう、彼は笑っていた。いつ以来だろう。
半年ぶりかな?
列車は加速し始める…
〜続く〜




