replay .1
浩介はがむしゃらに走った。人ごみを押し退けて、エスカレーターへと直行した。
エスカレーターを登ってる途中にも子供に目を向けたが、まだ同じところであたふたしていた。今にも落ちそうだ。
彼は焦りもあったのか、ずっとエスカレーターを登りながら子供を見ていたので、前に注意を向けず、案の定登りきったところで、妙に長い紐のバッグを掛けた女性にぶつかった。
二人とも尻もちをつき
「あんた何するのよー!!」
とその女性は少し怒り気味に言ったが、彼はすぐさま立ち上がり
「すいませーん!」
と一声かけて走っていった。
まだ間に合うあとちょっとだ。久々に走ったのか、息切れが激しい。汗もかいていた。
ついに女性と子供が目の前にいるガラス柵まで辿り着き、手を差し伸べる。しかし、あと数センチというところで手が届かない。
子供を大泣きをしながら
「助けてー!!助けてー!!」と叫んでいる。
「今に助けてやるからな」と安心させるような言葉を投げかけた。
少し体をガラス柵へ体重かけて距離を伸ばそうした。
その次瞬間だった。
子供はつるっとその場で足を滑らせた。
浩介にはその光景と刹那が全てスロー再生されているかのように長く感じた。
グシャッ!
その音が全てを物語った。
目の前でゆっくりと崩れた母親らしき人、高音でまるでホラー映画のような悲鳴、あたりはどんどん騒めきが増える。
そして一階のホール中央には赤い液体が純白なタイルを侵食し、肉片らしきものがあたりに散っていた。
まさに地獄絵図。
浩介は吐き気に襲われ、足から崩れた。あんなところでぶつからなければとかあと少し早く気づいたら、そんなことも考えていた。
数秒ほど目を瞑り、奴を思い出した時、とある一言が走馬灯の如く走った。
「なんか起きたら「戻れ」って言いな」
彼は一切を疑わずして、立ち上がり、たった一言。
「戻れ」
そして、唐突にそれは起きた。
瞬きをした次の光景に驚きを隠せなかった。
ショッピングモールの目の前にいたのだ。かいていた汗も一切かいておらず、あんなに息切れしていたのに、自分の状態は良好だった。
「へ?」
思わず情けない声を漏らす。
状況に置いてかれる浩介の横から、若いカップルが通る。
「ねぇね、ここにもオープンしたらしいから行きたい〜〜」
「はいはいわかったから」
大きく開いた瞳孔で二人を追った。
この会話…って……
虚空を見て考えた。
浩介の頭の中に稲妻が三本ほど走り、不思議な出来事に理解した。
咄嗟に彼は走り出した。
〜続く〜




