pray
世界で私だけが経験した事件、いや一件が過ぎてからちょうど一週間、特に変わったことも無かった。あの黒とか言う男にも、一切出くわさなかった。
窓からは影を一つ残らずかき消すような光が差していた。
浩介はジャムが全面に塗られたパンとコーヒーを机に置き、新聞紙をおもいっきりに開いた。
文面には『事故死!先月に続いて6件!』と書かれていた。
自殺や他殺とかではないのかと疑問に思いながら、コーヒーを口へと運んだ。
「アッチ!考え事なんかしてると他のことを忘れるものだなぁ。」
不機嫌ながらも食事を済ませて、彼は普段着へと着替える、そのまま流れるように玄関へ行き、茶色の靴で外を出た。
決して何か急ぎの用事もなく、先週のせいなのか?それとも奴のことを信用できないのか?
惹かれるように、ショッピングモールの目の前に立っていた。
「なーんで来ちゃったのかなぁ…まあ適当に散歩して帰るか…。」
隣では歩きながら、若いカップルがたわいもない会話をしていた。
「ねぇね、ここにもオープンしたらしいから行きたい〜〜」
「はいはいわかったから」
そんな二人を、目で追いながら、続いて中へと入っていった。
中はほとんど変わらず、例のお店は行列が馬鹿みたいにできてる。店の横を抜け、彼は広間のベンチへ向かった。
しかし、そこには人という人が広間を囲っていたのだ。まるで、パンダがそこで展示されてるかのように、人が群れていた。
「なんかライブでもやってのんか?」
独り言を口にしながら、人々の目先を見つけた瞬間、大きく目を開いた。
3階のガラス柵から子供が今にも落ちそうな所だったのだ。誰にも手をつけられない場所に、その子はいたのである。横には母親らしき女性が、手を差し伸べようとしてるのも見えた。まさに事件だ。
そんなことを理解してないのか、それとも集団心理といえるのか、囲っている人々の中には、スマートフォンを子供にかざしている者や、ただ騒ついて、立ち尽くしている者もいた。
浩介は、善意なのか、正義なのか途端に走り出した。
列車は平常運行中だ。
〜続く〜




