表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
引力と猫の魔法使い [プロトタイプ版]  作者: sawateru
魔法使いと待つ影
58/70

第12話 日高誠と脱出ゲーム

 嘘だろ……!? 魔法士協会の奴らか!?


 今の俺達は、魔法生物「土煙田鼈(どえんたがめ)」の能力で姿と気配を隠しているはずだ。 


 それすらも無効にする力を持ったヤツなのか!? だとしたらヤバい。


 今、魔法士協会に捕まれば、俺の素性がバレてしまう。


 六年後の未来から来た存在で、幻の魔法生物「風麟海月」と契約した魔法使いだとバレたら、元に居た未来に戻れなくなるかも知れない。最悪は殺される。「未来を改変をする者」として。


「駄目だ! 追いつかれる!」

 桐生が泣き叫ぶ。


 その直後、ガクンと魔法自転車の速度が急激に落ちる。魔力切れだ。


 土煙田鼈(どえんたがめ)を召喚しながら魔法自転車を全力で漕いでしまったのだ。こうなる事は分かっていた。


「自転車を停めて隠れるぞ! 五分でもいい。魔力を回復させる」

「分かった!」


 町外れの小さな公園に入り込み、自転車を停止させた。俺達以外は誰も居ない。正午に近く、太陽の強烈な陽が照り付けているからだ。こんな日に外出するのは自殺行為に違いない。


 入口から離れた樹の陰に移動し、二人一緒に身を隠す。土煙田鼈(どえんたがめ)は発動したままだ。上手くやり過ごせれば助かる。


「だめだカケル……! 追いつかれた!」


 そんな甘い考えを否定する様に、すぐに追跡者が姿を見せた。


 自転車に乗った、学生服を着た少年だ。公園の入り口から俺達の方を見ている。


 高校生だろう。身長はかなり高い。百八十センチを超えている。黒縁メガネを掛けていて、髪はピッチリとした七三に綺麗に整えている。


 まるで映画や漫画でよく見る、悪役生徒会長キャラのような装いだ。こんなキャラ、実際に居るのかよ……。


 乗っていたのは魔法自転車だ。あれで俺達を追跡して来たらしい。


「そこに隠れている奴。出て来なさい」

 艶やかな声質だ。んん? 何処かで聞いた事があるぞ!?


「姿が見えませんね……。気配も無い。でも僕には分かりますよ? そこに、魔法自転車も在りますね? 音で分かります」


 すると桐生がすぐに反応を示す。

「音……!? 土煙田鼈は姿と同時に音も隠しているはずだぞ」

 

 いや、だったら、相手はどうやって俺達の居場所を割り出したんだ?


 謎の少年は両腕を手前でクロスさせ、自分の身体を抱き、突然クネクネと身悶える。


「どんなに小さな音でも聞き逃しませんよ……。タイプゼロワン。初期型魔法自転車の駆動音……。美しい音色です。ああ……素晴らしい……!」


 確信した。俺はコイツを知っている。


 ──橘辰吉!! 


 鳥の魔法使いだ! 絶対そうだ! 変態チックだし! やたらと魔法自転車に詳しいし! 


 本人から聞いていたイメージと全然違うじゃねーかよ……。悩んでいる悲劇の主人公っぽさ皆無だよ! あんまり六年後と変わってねーよ!

 

 目の前に居るのは、確かに水鞠家の魔法使いである橘辰吉だが、六年前の「今」は違う。恐らく、フリーの魔法使いとして、魔法士協会と契約しているに違い無い。今は敵だ。


「私は貴方と戦いたい訳じゃありません。話を聞きたいだけですよ。何故、水鞠家のアトリエから出て来たのか。そして何故私から逃げるのかを」

 橘辰吉は魔法士協会に依頼されて猫探しをしているだけだ。奴の言っている事は本当だ。


 でも駄目だ。言い逃れ出来る自信が無い。怪しい素振りを見せれば捕獲されるだろう。


 まともに戦って勝てる相手じゃ無い。橘辰吉は、六年後に水鞠家の正式な従者になる魔法使いの一人だ。


「カケル。お前、戦う力はあるのか?」

 桐生が身を寄せ、小声で話し掛けて来た。


「いや……何も無い」

 火喰甲魚(ひくいこうぎょ)水盾甲蟹(すいじゅんこうかい)風鱗海月(ふうりんくらげ)土煙田鼈(どえんたがめ)


 四体の魔法生物と契約しているが、どれも魔法使いと戦う力は持っていない。


 風麟海月の能力は謎だが、未だ故障中で、修復が終わらないと召喚も契約解除も出来ない状態だ。


 こんな事なら、もっと魔法生物と契約しておけば良かった。後悔してももう遅い。


 どちらにしろ、土煙田鼈(どえんたがめ)を召喚した状態では、他の魔法を使えないんだ。非力な自分を呪うしか無い。

 

 桐生は覚悟を決めた様だ。

「俺が奴に一撃を加える。その隙に逃げよう」

 桐生の魔法で気を逸らせて、姿を隠したまま逃げる。確かにそれなら可能性が有る。


 魔力は回復しつつある。今なら全力疾走で振り切れるかもしれない。


「それで行こう」

 桐生と俺は魔法自転車に乗り込んだ。

 

『魔法団子』

 桐生が魔法名を唱えると、三角形の立体魔法陣から魔法の球が飛び出した。


 三角形って事は、三つの性能を持つ球なのだろう。俺でも分かるが、この魔法の威力は弱い。これが桐生の魔法の限界の様だ。でも目眩しにでもなれば御の字だ。

 

「行くぞ!」

 チャンスは一度。失敗すれば全てが終わる。ここで捕まる訳には行かない!


 桐生が魔法の球を放つ。

 そこそこのスピードで放物線を描き、目標に向かって飛んで行く。俺は同時に魔法自転車のペダルに魔力を送り込んだ。


 次の瞬間、魔法の球が破裂する。

 届く前に橘辰吉の魔法の力によって潰されてしまった。

「それが貴方の全力ですか……? あまりにも弱すぎる……」

 

 読まれていた。こっちの考えはお見通しだったのか。

 

「やはりそこに居ますね。姿を見せる気が無いのなら、力尽くで行かせて頂きます」

  磨爪青鳥(まそうせいちょう)を使うのか? いや違う。確か、『籠の鳥』のイメージに目覚めるのは教師になってからだ。


 そうだ。橘家は楽器を使って魔法を操る一族だって言っていた。なら、強力な魔法を使用出来ないはずだ。今は何も手にしていない。


 俺は魔法自転車のベルの蓋を回転させ取り外すと、ズボンのポケットに入れた。


「桐生。全力で逃げるぞ!」

「カケル!?」


 止めていた魔力をペダルにから解放した。魔法自転車のエンジンが振動する。


 そして、土煙田鼈(どえんたがめ)の魔法迷彩で姿を隠したまま、柱の陰から橘辰吉に向かって飛び出した。


「カケル! 逆だよ! 敵に向かってる!」

 

 これでいい。鳥の魔法使いは魔法自転車マニアだ。この自転車を破壊して止める事なんて出来ない。橘辰吉なら避けるはずだ。


「何を……!?」

 橘辰吉は、姿の見えない魔法自転車が近付いている事を音で察知し、身を翻して避ける。そのままの勢いで地面に倒れ込んだ。


「逃がしませんよ……!」

 すぐに体勢を立て直し、右手を口元に構える。


 指笛だ。楽器を持っていないなら、音を鳴らす方法はそんな所だろうと思っていた。させてたまるかよ!


土煙田鼈(どえんたがめ)! 土煙を起こせ!』


 巨大タガメが空中から一瞬だけ姿を見せると、頭からブレイクダンスをする様に地面を回転する。大量の土煙が橘辰吉に襲いかかる。


「ゲホッ!? ゲホッ! オェ──!」

 土煙を吸い込み、堪らず嗚咽する橘辰吉。


 さらに、俺は予め用意していた魔法自転車のベルの蓋を思い切り投げ捨てた。


 土煙田鼈(どえんたがめ)の能力範囲外になり、ベルが姿を現す。地面に接触すると、「カラン」と独特な音を響かせた。


「こ、これは……!?」

 橘辰吉の注意が逸れる。

 

 今だ! 俺は全力で魔法自転車のペダルを全力回転させる。


「何やってんだカケル!」

「大丈夫だ。これで奴は追ってこない!」


 高速で移動する俺達は、公園からみるみると距離を開けて行く。


 骨董品であるこの魔法自転車のパーツを目の前にして橘辰吉が喰いつかない筈はない。頭では分かっていても冷静にはなれないものだ。今頃幸せな気分に浸っているだろう。


「本当だ……! はは……。追って来ない! 逃れたぞ! スゲェよカケル!」


 いや、相手が橘辰吉だったから逃げれただけだ。しかもヒントが無ければ危なかった。


 こんな億越えする価値のある魔法自転車に乗っていたのが子供と知れたら間違いなく捕獲されていた。怪し過ぎる。


「これからどうする? カケル」

「急いで綿貫さんの所へ戻る」


 結局、アトリエには何も手掛かりは無かった。作戦を考え直さないと。


 レスラーにアフロ、鳥の魔法使い……。


 この件に関わっている奴らの強さ……ヤバ過ぎるでしょ……。


 勘弁して欲しいよ。マジで。

 鳥の魔法使い橘辰吉の登場です。

 レスラー、アフロが来る!? からの橘辰吉の流れは結構好きです。


 日高も魔法使いっぽくなって来ました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ