レイナード
レイナードは悩んでいた。
新しく赴任してきた教師についてだ。
その教師は平民主義、つまりは平民も貴族もみな平等という考えの一族筆頭とされるマーキュリー家の三男だった。
マーキュリー家といえば王家に次ぐ五つの貴族の一角だ。
故に、敵も多い。
その最たるものが貴族主義者であり、彼らはマーキュリー家の失脚をたくらんでいる。
その方法として、王に罰として赴任させられたこの学園での仕事を失敗させてしまう事を考えたのだろう。
教師の半数以上はこの貴族主義であり、さらに学長が乗り気だったことも災いした。
レイナードを始めとする平民や没落貴族は何らかの形で有力貴族の子飼いになっている。
例えば親が貴族の下請けである場合などがそれにあたる。
つまるところ弱い部分を握られている。
そこを突かれ、レイナードは渋々だがこの教師を尾行していた。
何度も気づかれた様子はあったが、特に何かされることもなく泳がされている。
それはそれで気持ちの悪いものだが、あえてその行為に甘えた。
ロイ教員がこちらに配慮しているとは思えないが、それでもやりたいようにやらせてもらえるならば行幸。
レイナードは好きなように探らせてもらった。
しかし、勉学はもちろん魔術や体術においてもロイの仕事は完ぺきだった。
彼の赴任から最底辺だったクラスは今では最上級クラスにも匹敵するのではないかという成績を修めるようになった。
ここまでやってしまえば、他の教員たちも面白くないのだろう。
なにせ生徒の成績の悪さは教師の怠慢と行動で示してしまったのだから。
平民主義だった教員含めてほとんどがロイに対する嫌がらせを行うようになった。
しかし本人は気に留める様子もなく、それらを交わし、受け止めとのらりくらりと立ち回っていた。
それがさらに拍車をかけ、一部の教員は自爆していった。
あるものはロイの所有する重要書類にわざとインクをこぼしたことが国王の耳に入り処罰を。
またある者はロイの妹であるリリアにちょっかいを出そうとして、物理的にぼろきれのようにされた。
このような事件事故は大小問わず日に数回発生し、そのたびにロイは奔走していたが授業には一切の手抜きがなかった。
「……なんだこの完璧超人」
思わずレイナードがぼやく。
ロイの行動を全て並べてみたが、一寸の落ち度もない。
どころかやっていることは間違いなく前項の部類であることが性質が悪い。
仮に、法的に良くても倫理的にはという行動をとっていればそこを攻撃できたがそう言った様子はみじんもなく、その逆もしかりであった。
そもそもレイナードの仕事はロイの監視であり、隙を探すことではないがいつしかレイナードはロイの隙を撃つことばかりを考えていた。
どうすればこの男を倒せるか、どうすればこの男に一泡吹かせられるかと。
その感情がロイ本人に知られているとも知らずに




