第6話 実技試験で、うっかり
入学初日の午後、いきなり実技試験が行われることになった。学園側の説明によると、これは「推薦組の実力を確認するための、いわば顔合わせ」らしい。
試験内容は単純だ。教官相手に一分間、模擬戦を行い、何本「有効打」を取れるかを競う。周囲には他の生徒たちがずらりと並び、これから始まる試験を見物している。
「村人A、お前からだ」
指名されたのは、案の定、レイヴンの声だった。彼は観客席の最前列で、腕を組んでにやにやしている。
「せいぜい無様な姿を見せてくれよ」
(うるさいな、この人)
内心で毒づきながらも、俺は木剣を構えて教官の前に立った。相手は、見るからにベテランといった雰囲気の壮年男性だ。
「では――始め」
合図と同時に、教官が踏み込んでくる。速い。さすがは学園の教官、辺境のゴードンさんとは比べ物にならない速度と重さの一撃だった。
(よし、ここは一発だけ受けて、無難に終わらせよう。一分間耐えれば――)
そう考えていたのだが、身体は相変わらず言うことを聞いてくれなかった。教官の一撃を受け流した瞬間、前世の反射神経が「隙あり」と判断し、勝手にカウンターを叩き込んでしまう。
パァン、という乾いた音とともに、教官の木剣が弾き飛ばされた。
会場が、静まり返った。
「……なっ」
教官が、信じられないものを見るような顔で自分の手のひらを見つめている。試験開始から、まだ三秒も経っていない。
(やってしまった……)
「も、もう一本お願いします! 今のは油断してました!」
教官が慌てて木剣を拾い、再び構える。仕方なく応じたものの、結果は同じだった。二本目も、三本目も、俺の身体は淡々と「正しい対処」を繰り返し、教官を圧倒し続けた。
一分間の試験が終わる頃には、教官は肩で息をしており、俺はほとんど汗もかいていなかった。
観客席は、水を打ったように静まり返っている。
「……村人A、が……」
誰かがぽつりと呟いた声が、やけに大きく響いた。
レイヴンだけが、腕を組んだまま、信じられないという顔で立ち尽くしていた。




