第5話 入学試験と「村人A」という肩書き
王都の騎士学園は、想像していたよりもずっと大きかった。
石造りの校舎が、まるで城のように敷地いっぱいに広がっている。門をくぐっただけで、辺境育ちの俺には気圧されるものがあった。
「――お前が、例の推薦組か」
受付を済ませたところで、声をかけられた。振り返ると、身なりの良い少年が数人、俺を取り囲むように立っている。中心にいるのは、金髪を後ろに撫でつけた、いかにも「名家の子息」といった雰囲気の少年だった。
「辺境の村出身、職業は……村人A?」
彼は俺の入学書類を横からのぞき込み、わざとらしく笑った。
「はっ。村人Aが特別推薦とはな。王都の連中も、そんな辺境の噂に踊らされるとは、地に落ちたものだ」
(あー、これはあれだ。ゲームで言うところの「序盤の見下しキャラ」だ)
前世の記憶が、うっすらとテンプレートを思い出させてくる。この手のキャラは大体、後々ライバルになるか、痛い目を見て改心するかのどちらかだ。
「言い返さないのか? それとも、言い返せるだけの実力もないのか」
「いえ、特には」
「ふん、つまらん」
少年――後で知ったが、名をレイヴンといい、伯爵家の三男坊らしい――は興味をなくしたように鼻を鳴らすと、取り巻きを連れて去っていった。
(別に地味に構わないんだけどな……。目立たず、平凡に。今度こそ、それを徹底する)
そう心に誓い直した俺だったが、その決意は、翌日の実技試験であっさりと崩れ去ることになる。




