第11話 本気の無双
森の最奥、開けた空間で待ち構えていたのは、体長十メートルを超える、樹木と獣が融合したような異形の魔物だった。前世の記憶通りの姿に、俺は迷わず突撃を開始した。
「カイト、無茶をするな!」
「大丈夫だ、動きは分かってる! レイヴンは俺の合図で、右側から注意を引いてくれ!」
「わかった!」
かつて何百回と挑んだボス戦の記憶が、鮮明によみがえる。魔物の咆哮に合わせて放たれる範囲攻撃を、俺は最小限の動きで回避しながら、じりじりと背後に回り込んでいく。
「――今だ!」
合図と同時に、レイヴンが右側から斬りかかり、魔物の意識を逸らす。その隙に、俺は魔物の背中へと駆け上がった。
もう、隠す理由はなかった。前世で培った全ての力、三年分の経験の全てを、俺はこの一撃に込めた。
「これで――終わりだ!」
第二の目を貫いた瞬間、魔物は断末魔の咆哮を上げ、地響きとともに崩れ落ちた。
森が、静寂に包まれる。
「……勝った、のか?」
誰かの呟きが、やがて大きな歓声へと変わっていった。討伐隊の面々が、次々と武器を掲げて叫んでいる。ミラが、目に涙を浮かべながら駆け寄ってきた。
「カイト……!」
「終わったよ、ミラ。もう、村は大丈夫だ」
彼女を抱き留めながら、俺はようやく肩の力を抜いた。
その様子を少し離れた場所から見ていたレイヴンが、呆れたような、それでいてどこか誇らしげな笑みを浮かべていた。
「相変わらず、とんでもない奴だな、お前は」
「そう、かな。今回はちょっと本気出しただけなんだけど」
「……その『ちょっと』の基準を、そろそろ直した方がいいぞ」
周囲の兵士たちも、遠巻きに俺を見ながら、何やらざわめいている。「あれが噂の村人A」「いや、もう村人Aどころの実力じゃない」――そんな声が、断片的に聞こえてきた。




