第12話 英雄と、村人A
事件から一週間後。王都では、討伐の功労者として、俺とレイヴンを含む討伐隊全員に、国王からの感謝状が授与されることになった。
式典の壇上、大勢の貴族や騎士たちが見守る中、俺はどうにも落ち着かない気分で立っていた。
「本討伐において、最大の功績を挙げたのは――カイト殿。彼の的確な状況判断と、比類なき実力によって、この国は災厄級の脅威から救われた」
国王のその言葉に、会場から大きな拍手が湧き起こる。
(いや、俺はただ、知ってる情報を使っただけで……)
そう思う俺の隣で、レイヴンが小声でつぶやいた。
「お前、まだそんなことを考えているのか」
「え?」
「表情でわかる。『大したことはしていない』って顔をしてるぞ」
図星だった。何を隠そう、俺は未だに、あの一連の出来事を「たまたま知っていたことが役立っただけ」としか捉えられていなかった。
式典が終わった後、控室に村長とミラ、そしてゴードンさんが訪ねてきてくれた。
「カイト……本当に、ありがとう」
村長が深々と頭を下げる。ゴードンさんも、無言のまま俺の肩を強く叩いた。
「あの日、俺が構えを見せた時から、なんとなく分かってたよ。お前は、ただの村人Aじゃないってな」
「はは……結局、隠しきれませんでしたね」
「隠す必要なんて、最初からなかったんだよ」
ミラが、隣で静かに微笑んでいた。
「開き直った方がいいって、言ったでしょ?」
「……ああ。おかげさまで、だいぶ楽になった」
窓の外には、王都の穏やかな夕焼けが広がっていた。かつて社畜として働き詰めだった前世からは、想像もできないような日々だ。村人Aとして始まったこの人生は、いつの間にか、誰も予想しなかった場所にまで辿り着いていた。
もっとも本人だけは、今でもこう思っている。
(俺は、ただの村人Aなんだけどな)
その認識のズレこそが、この物語における、最初で最後の――そして、決して直らない「オチ」なのかもしれない。




