表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過労で退職したら、隣に住む雪女上司に拾われてヒモになりました  作者: 伊達ジン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/19

第15話 鬼娘の誘惑と氷点下

 背負い込んだ夏見の体は、小柄な見た目に反してずっしりと重く、まるで沸騰した湯沸かし器のように尋常ではない熱を放っていた。


「私が引きずって運ぼうか?」という信子の物騒な提案を、「フローリングが傷つきますし、信子さんまで熱に当てられて溶けたら困ります」と冷静に押し止め、どうにか三〇二号室の客間に転がしたのが数時間前のこと。


 結局、神楽坂のスペイン料理店でカバ、赤ワイン、そして度数の強いオロホまで飲み干した鬼娘は、帰りのタクシーの後部座席で寝落ちしてから一度も目を覚ますことなく、客間のベッドで高い寝息を立てていた。俺が掛けた薄いタオルケットも、凄まじい寝相であっという間に蹴り飛ばされていたが、あの異常な体温なら風邪を引く心配はないだろう。


 翌朝、午前六時三十分。


 俺は自分の部屋である三〇一号室のベッドで目を覚ました。

 八月も下旬に差し掛かったとはいえ、遮光カーテンの隙間から漏れる朝日はすでに暴力的なまでの熱を帯びている。エアコンをつけていても、古ぼけた一人暮らし用の部屋には微かな寝苦しさが漂っていた。六年間のブラック企業勤めで染み付いた、アラームが鳴る前に跳ね起きる悪習は抜けていないが、目覚めの時の絶望感がないだけで、体はひどく軽い。

 シャワーを浴びて汗を流し、軽く身支度を整える。これから向かう「職場」の環境に合わせて、夏場にもかかわらず薄手の長袖スウェットを着込んでから、俺は隣の三〇二号室へと向かった。


 合鍵を使って重厚なドアを開けた瞬間、設定温度十六度の強風が吹き荒れる極寒の空気が、むわっとした廊下の熱気を容赦なく押し返してきた。

 真夏から真冬への、強烈な温度差。しかし、この極端に冷え切った空気こそが、今の俺にとっての日常であり、奇妙な安心感を与えてくれる『職場』の匂いだった。


「キャン!」


 リビングへ足を踏み入れると、サークルの中で丸くなっていた茶色い毛玉――モカが、俺の足音に気づいて短い尻尾をちぎれんばかりに振った。


「おはよう、モカ。まだ皆寝てるから、静かにな」


 俺はサークルの前にしゃがみ込み、柵越しにモカの柔らかい頭を軽く撫でた。甘いヤギミルクの匂いがする鼻先を俺の指に押し付け、モカは嬉しそうにくぅくぅと喉を鳴らした。


 ひとしきりモカの相手をしてから、キッチンへと向かう。


 今日は二日酔い……いや、鬼の規格外の胃袋と代謝を持つ夏見を含めた、三人分の朝食を作らなければならない。

 俺は大きな冷蔵庫を開け、中の食材を素早く見定めた。


 夏見用には、昨夜の大量のアルコールを燃焼し、底なしのエネルギーを即座に補給できるガッツリとしたメニューが必要だ。

 チルド室から厚切りの豚バラ肉を取り出し、包丁で手早く一口大に切り分ける。ボウルに入れ、すりおろしたニンニクと生姜、多めの醤油、酒、みりん、そして隠し味にオイスターソースを加えて揉み込んだ。十分ほど常温に置いて味を馴染ませる。これだけで、食欲をそそるジャンクな香りが漂い始める。


 並行して、信子用の朝食の準備を進める。

 先日の朝にアジの干物を絶賛してくれたが、連日同じような脂の乗った和定食では、いくら雪女でも胃が疲れるだろう。特に今日は、昨夜から夏見の熱気にあてられて少し消耗しているかもしれない。


 俺は冷蔵庫から、昨夜のうちに引いておいた昆布と鰹の冷たい一番出汁を取り出した。

 どんぶりに冷やご飯を盛り、細かく刻んだみょうがと大葉、白ごまをたっぷりと乗せる。そこに、キンキンに冷えた一番出汁を注ぎ、仕上げに氷をいくつか浮かべた「冷やし茶漬け」だ。

 おかずには、卵三個を使ってたっぷりと出汁を吸わせた、ふんわりとしただし巻き卵を焼くことにした。熱々のだし巻き卵と、氷の浮かぶ冷たい冷やし茶漬け。温度差を楽しめる、さっぱりとした献立だ。四角い専用のフライパンで、菜箸を使ってリズミカルに卵を巻き上げていく。綺麗な黄色に焼き上がっただし巻き卵からは、上品な出汁の香りが立ち昇った。


 続いて、フライパンにごま油を熱し、漬け込んでおいた豚バラ肉を投入した。

 ジュワッという激しい音と共に、ニンニクと醤油の焦げる暴力的なまでに香ばしい匂いが極寒の部屋に立ち込める。


「……んー、めっちゃいい匂い」


 背後から、少し掠れた声が聞こえた。

 振り返る間もなく、背中に柔らかな重みと、暴力的なまでの熱を帯びた体温が押し付けられた。


「おはよう、俊作さん。朝からすっごいご馳走じゃん」


 夏見だった。

 俺はフライパンを煽る手を止めずに、背後をちらりと確認する。

 彼女は信子から借りたであろう黒のキャミソールと、極端に丈の短いショートパンツという無防備すぎる格好だった。褐色の健康的な肌が剥き出しになっており、引き締まった手足から発せられる熱気が、長袖のスウェットを着た俺の背中越しにもはっきりと伝わってくる。エキゾチックな香水の残り香と、健康的な甘い体臭が入り混じった匂いが鼻腔をくすぐった。


 夏見は俺の腰に両腕を回し、背中に顔をすり寄せるようにして密着してくる。


「おはようございます、夏見さん。二日酔いは無いようですね」

「鬼に二日酔いなんてないよ。それにしても、俊作さんの背中、広くてあったかいね。クーラー効きすぎてて寒かったから、ちょうどいい暖炉見つけちゃった」

「火を使っているので危ないですよ。それに、そんな薄着でうろついていたら風邪を引きます」

「えー、いいじゃん減るもんじゃないし。っていうか、アタシ鬼だし」


 夏見は腕の力を緩めるどころか、さらに密着度を高めてきた。背中に当たる双丘の柔らかな感触が、男としての理性を容赦なく揺さぶってくる。

 彼女は俺の耳元に顔を寄せ、悪戯っぽい声で囁いた。


「ねえ、俊作さん。昨日の夜も思ったけどさ、俊作さんって本当にイイ男だよね。気配りできるし、料理は最高だし、なにより大人の余裕がある」

「お褒めいただき光栄ですが、俺はただの雇われ主夫ですよ」

「だからさ、信子みたいな冷たくて堅物な女に飼われてないで、アタシのところに来なよ。アタシなら、毎日一緒に遅くまで遊んで、もっともっと楽しいこと、いっぱい教えてあげるからさ」


 小悪魔的な魅力を持つ美女からの、直球の誘惑。

 だが、俺の心拍数は一定を保ったままだった。六年間、ブラック企業の理不尽な接待やトラブル処理で鍛えられたメンタルは、この程度のからかいで崩れるほどヤワではない。

 俺はコンロの火力をとろ火に落とし、背中に感じる熱量をそっと押し返すように身をかわした。


「お気持ちだけ受け取っておきます。これ以上『基本給』が上がると、税金対策や確定申告を真面目に考えなくてはならなくなりますから。今の、のんびりとした主夫業が俺にはちょうどいいんです」

「あーあ、また論理的に躱された。本当、ガード固いなぁ」


 夏見が不満げに唇を尖らせた、その時だった。


 キッチンの入り口の空気が、物理的に凍りついた。

 ピキ、ピキピキッ……という、空気中の水分が凍結する微かな音が鳴る。


「……夏見」


 地を這うような、感情の欠落した絶対零度の声。


 俺が視線を向けると、そこには信子が立っていた。

 プラチナブロンドの髪を少し乱した彼女は、青みがかった瞳から一切の光を失い、焦点の定まらない虚ろな目で、夏見と俺のわずかな距離感を見据えていた。


 部屋の温度が、急激に低下する。

 設定温度十六度だったはずの空気が、一気に氷点下まで下がったのが肌でわかった。ダイニングテーブルの上に置かれていた麦茶のピッチャーの表面が、瞬く間に白く曇っていく。

 いつもなら信子の心地よい冷気を喜ぶモカも、そのただならぬ威圧感に本能的な危機を察したのか、「くぅん……」と情けない声を漏らし、俺のスウェットの裾を小さな前足で必死に引っ張りながら、俺の後ろへと隠れようとした。


「あんた……私の俊作に、朝から何ベタベタ触ってるの」


 信子の声は静かだったが、その背後には目に見えるほどの白い冷気が渦を巻いていた。


「あはは、おはよう信子。俊作さんがあったかくてさー。ちょっと暖を取ってただけだよ」


 夏見は全く悪びれず、むしろ俺の腕に軽く触れてこれ見よがしに笑ってみせた。


「……暖を取る?」


 信子の瞳の奥で、青い炎が燃え上がった。

 フローリングの床がミシッと音を立て、信子の足元から放射状に白い霜が広がっていく。


「問答無用よ。その熱い頭ごと、芯から凍らせてあげる」


 信子がゆっくりと右手を持ち上げ、夏見に向けてかざそうとした瞬間。

 俺はフライパンの火を完全に止め、二人の間に一歩だけ足を踏み出した。


「お二人とも、そこまでです。朝から争い事は、俺の雇用主の機嫌も、大事な客人の機嫌も損ねるので」


 俺は努めて平坦な声で言い、ダイニングテーブルの方へ手で示した。


「信子さん、おはようございます。ちょうど朝食ができたところです」


 俺はフライパンから熱々の豚バラ肉を深皿に盛り付け、もう一方のコンロで作っておいただし巻き卵を切り分けて小皿に乗せた。


「夏見さんには、スタミナ満点の豚バラ肉のニンニク醤油炒めを。そして信子さんには……」


 俺は冷蔵庫から、氷を浮かべたどんぶりを取り出し、テーブルの信子の指定席に置いた。


「みょうがと大葉をたっぷり乗せた、冷やし茶漬けです。一番出汁をキンキンに冷やしておきました。それに、温かいだし巻き卵を添えてあります。氷が溶けないうちにどうぞ」


 出汁の繊細な香りが、凍りつきかけていたリビングの空気にふわりと広がった。

 信子は振り上げていた手を止め、テーブルの上のどんぶりと、俺の顔を交互に見た。ギリッと噛み締めていた唇の力が、少しずつ緩んでいくのがわかる。


「……俊作は、私を温めるための、私だけの専属主夫よ。なんで夏見なんかに抱きつかせてるの」

「料理中で両手が塞がっていたので、避けきれなかったんです。次からは気をつけますから、ひとまず冷気を収めてください。せっかくのだし巻き卵が冷めて、冷やし茶漬けの氷が巨大な氷塊になってしまいますよ」


 俺が諭すように言うと、信子は不満げに腕を下ろし、深く息を吐いた。

 すると、部屋を覆っていた異常な冷気がゆっくりと霧散していった。凍りかけていたピッチャーの表面も、少しずつ水滴へと戻っていく。モカが安堵したように、俺の後ろからひょっこりと顔を出した。


 信子はまだ夏見をジロリと睨みつけながらも、大人しくダイニングチェアに腰を下ろした。


「いっただっきまーす!」


 夏見は全く意に介する様子もなく、対面に座って豚バラ肉を豪快に白米の上に乗せ、口いっぱいに掻き込み始めた。


「んんーっ! うまっ! ニンニクと生姜がガツンと効いてて、お肉も柔らかい! これ朝から食べられるなんて、俊作さんマジで神!」

「お口に合って何よりです。ご飯のおかわりは炊飯器にたっぷりありますから」


 信子も無言で箸を持ち、冷やし茶漬けを一口すする。

 キンキンに冷えた一番出汁の旨味と、みょうがの爽やかな香りが口いっぱいに広がる。冷たいご飯を飲み込んだ後、温かいだし巻き卵を口に運ぶ。

 その瞬間、信子の顔に張り付いていた「氷の女帝」の険が嘘のように溶け落ち、いつものだらしない至福の表情へと変わった。


「……美味しい」


 吐息のように漏れたその一言に、俺は小さく安堵の息を吐いた。


「よかったです。昨夜はお酒も進んでいたようでしたから、今朝はさっぱりと胃を労わるメニューにしました」


 俺も席につき、自分の分の朝食に箸をつける。

 夏見はあっという間に一杯目のどんぶりを平らげ、「おかわり!」と空になった器を俺に突き出した。

 信子はそれを見て、呆れたようにため息をついた。


「俊作のご飯を、そんなにガツガツ食べないでよ。品がないわね」

「美味しいんだから仕方ないじゃん。俊作さん、毎日こんな美味しいご飯作ってくれるなら、やっぱりアタシのところに……」

「なりませんよ。俺は信子さん専属ですから」


 俺が即答すると、信子はフンと誇らしげに鼻を鳴らし、姿勢を正した。


「聞いたでしょ。俊作は私だけのものなんだから、諦めなさい」


 夏見は「ちぇー、つまんないの」と口を尖らせたが、すぐにその大きな瞳に悪戯っぽい光を宿した。


「じゃあさ。引き抜きは諦めるとして、今日、この後アタシの買い物に付き合ってよ、俊作さん」

「買い物、ですか」

「そう! 昨日の美味しいディナーと、今朝の最高のご飯のお礼。アタシがなんか奢ってあげるから、デートしようよ!」


 突飛な提案に、テーブルの空気が再びピリッと張り詰めた。


「はあ!? ちょ、ちょっと待ちなさいよ! なんで私の俊作とあんたがデートなんかするのよ!」

「いいじゃん、別に減るもんじゃないし。それに信子、今日の午後から美容室とエステの予約入れてるって言ってたよね?」

「うっ……」


 図星を突かれたのか、信子が言葉に詰まる。俺という専属主夫を手に入れてからというもの、彼女は休日のメンテナンスにも少し気を遣うようになっていた。


「俊作さんだって、毎日この極寒の部屋に引きこもって家事ばっかりしてたら息詰まるでしょ? たまにはパーッと外の空気吸いにいかないと」

「……そうですね。ちょうど夕食の買い出しに出ようと思っていたので、そのついででよければお供しますよ。俺も少し、歩きたい気分でしたから」


 俺が同意すると、夏見は「やった!」と無邪気に両手を挙げた。

 信子は不満そうに俺と夏見を交互に睨みつけていたが、美容室の予約という負い目があるためか、それ以上の強硬な反対はできなかった。


★★★★★★★★★★★


 午後一時。

 猛暑のピークを迎えた都心を避け、俺たちは新宿の大型商業施設へとやってきていた。

 館内は冷房が適度に効いており、設定温度十六度の我が家から出てきた俺にとっては、これでも少し暖かく感じるくらいだった。


 朝の無防備な部屋着から一転して、アシンメトリーなカッティングのサマーニットに、風に揺れるワイドパンツという洗練された装いに着替えた夏見は、俺の隣を歩きながら、目を輝かせて様々なショップのショーウィンドウを覗き込んでいる。フリーランスのデザイナーというだけあって、彼女のファッションセンスや色彩感覚は街を歩いていてもひときわ目を引いた。


「あ、このお店、ちょっと見ていい?」


 夏見は一つのアパレルショップに入ると、いくつかの服をハンガーラックから取り出し、鏡の前で自分の身体に当ててみた。


「ねえ俊作さん。この二つなら、どっちがアタシに似合うと思う?」


 夏見が両手に持っていたのは、鮮やかなターコイズブルーのノースリーブと、落ち着いたテラコッタ色のドレープブラウスだった。

 普通の男なら「どっちも似合うよ」などと適当にお茶を濁すか、彼女の陽気な雰囲気に合わせて派手な色を選ぶ場面かもしれない。俺は少しだけ立ち止まり、彼女の肌の色と、店内の間接照明の当たり具合を静かに観察した。


「テラコッタ色の方をお勧めします」

「へえ、なんで?」


 俺が即答すると、夏見は少し驚いたように瞬きをした。


「夏見さんの健康的な肌の色に、その赤みがかったブラウンが自然に馴染んでいます。それに、そのブラウスは生地の落ち感がとても綺麗なので、歩くたびに生まれる陰影が、夏見さんの活発な雰囲気に上品な大人っぽさを足してくれるはずですよ」


 以前の職場で、アパレル関係のクライアントを相手に市場リサーチや接待を繰り返していた頃の経験が生きた。ただの直感ではなく、相手が納得できる明確な理由を添えて提案する。それが、ビジネスでも日常でも俺の染み付いたやり方だ。


 夏見はブラウスを鏡の前で軽く揺らし、自分の姿を真剣に見つめた後、ふっと嬉しそうな笑みをこぼした。


「……俊作さん、ただ料理が上手いだけの主夫じゃないね。ちゃんとアタシのこと、見てくれてるんだ」

「エスコート役としての、最低限の仕事ですよ」

「そういうかわし方も、嫌いじゃないけどさ」


 夏見は満足げにテラコッタ色のブラウスを店員に渡し、「これ、着て帰ります」と告げた。


 その後、館内の少し落ち着いたカフェで休憩を取ることになった。

 夏見はアイスコーヒーのストローをカラカラとかき混ぜながら、テーブルの向かいに座る俺の顔をじっと見つめてきた。


「俊作さんって、一緒にいてすっごく楽。無理に男らしくリードしようってガツガツしてないし、アタシの歩幅や見るものに自然に合わせてくれる。こういうのが大人の余裕ってやつなのかな」

「ただの職業病みたいなものです。相手の要望を先読みして動くのは、六年間の社畜生活で嫌というほど叩き込まれましたからね」

「ふふっ。でも、やっぱり信子のところにだけ置いておくにはもったいないくらいイイ男だよ。……マジで、気が変わったらアタシのところに来てよね」


 冗談めかした口調の中に、微かな熱が混じっているのがわかった。

 俺はグラスの結露をペーパーナプキンで拭いながら、静かに微笑みを返した。


「ありがたいお誘いですが、今の雇用主の『氷の女帝』っぷりも、俺は案外気に入っているんですよ」

「あはは! 信子が聞いたら、また部屋が凍りつきそうだね」


 夏見は楽しそうに笑い声を上げ、残りのアイスコーヒーを飲み干した。


「さあ、お茶も飲んだし、次は夕飯の買い出しに行こっか。俊作さんがどんな風に食材を選ぶのか、ちょっと見てみたいし」


 立ち上がって軽やかに歩き出す鬼娘の背中を追いながら、俺は次のスーパーでの献立の組み立てを、頭の中で静かに計算し始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ