表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透明都市アーカイブ―愛を売った男たち―  作者: 秀人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
68/151

第六十八話 空白の未来

人は、“失ったあと”にしか見えない未来を持っている。

 海沿いの街を出る頃には。


 


 


 空は、すっかり夜になっていた。


 


 


 レンは一人、駅までの道を歩いていた。


 


 


 潮風が少し冷たい。


 


 


 遠くで波の音が聞こえる。


 


 


 シロは蓮の部屋へ残った。


 


 


 “これから”を話すために。


 


 


 壊れた者同士。


 


 


 前とは違う形で、生き直すために。


 


 


 レンは小さく息を吐く。


 


 


 胸が少し痛かった。


 


 


 でも。


 


 


 嫌な痛みじゃない。


 


 


 むしろ。


 


 


 置いていったままだった感情が、ちゃんと自分の中へ戻ってきている感じがした。


 


 


 その時。


 


 


 スマートフォンが震える。


 


 


 メッセージ。


 


 


 美月だった。


 


 


 【まだ起きてる?】


 


 


 レンは少し笑う。


 


 


 タイミングが不思議だった。


 


 


 まるで。


 


 


 感情が大きく動いた夜ほど、美月から連絡が来る。


 


 


 レンは歩きながら返信する。


 


 


 【起きてる】


 


 


 すぐ既読。


 


 


 そして。


 


 


 【今なにしてたの?】


 


 


 レンは少し考える。


 


 


 説明できる気がしなかった。


 


 


 感情を失った二人と会っていた、なんて。


 


 


 でも。


 


 


 嘘もつきたくなかった。


 


 


 レンはゆっくり打つ。


 


 


 【昔の自分みたいな人たちと会ってた】


 


 


 送信。


 


 


 少し間が空く。


 


 


 そして。


 


 


 【そっか】


 


 


 短い返事。


 


 


 でも。


 


 


 そのあと続けて。


 


 


 【レン、最近ちょっと変わったね】


 


 


 レンは足を止めた。


 


 


 夜の海風が吹く。


 


 


 変わった。


 


 


 その言葉を、最近よく言われる。


 


 


 アカネにも。


 


 


 真奈にも。


 


 


 そして今、美月にも。


 


 


 レンはスマートフォンを見つめる。


 


 


 変わったのだろうか。


 


 


 少し前までの自分は。


 


 


 失うことばかり怖がっていた。


 


 


 愛されないこと。


 


 


 一人になること。


 


 


 空っぽになること。


 


 


 だから。


 


 


 縋って。


 


 


 壊れて。


 


 


 全部消した。


 


 


 でも今は。


 


 


 “失っても終わりじゃない”ことを、少しだけ知り始めている。


 


 


 レンはゆっくり返信する。


 


 


 【そうかも】


 


 


 送信。


 


 


 数秒後。


 


 


 美月から返事。


 


 


 【前より、ちゃんと笑ってる感じする】


 


 


 その文章を見た瞬間。


 


 


 レンの胸が、静かに揺れた。


 


 


 美月は。


 


 


 ずっと見ていたのだ。


 


 


 壊れていた頃の自分を。


 


 


 そして今。


 


 


 少しずつ変わっていく自分を。


 


 


 レンは夜空を見上げる。


 


 


 星は見えない。


 


 


 でも。


 


 


 前より少しだけ、呼吸しやすかった。


 


 


 その時。


 


 


 ふいに、アカネの言葉を思い出す。


 


 


 『前と同じには戻れない』


 


 


 でも。


 


 


 “新しく感じる”ことはできる。


 


 


 レンは静かに歩き出す。


 


 


 空白だった未来へ。

読んでいただきありがとうございます!


ここからレン自身の“その先”が動き始めます。

次回、アカネの過去へ繋がる“ある依頼人”が現れます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ