第二十八話 はじめまして
本当に大切だった人ほど、“他人みたいな距離”が一番苦しい。
【mizuki_27があなたをフォローしました】
その通知を、レンはしばらく見つめていた。
心臓がうるさい。
呼吸が浅い。
理由はわからない。
でも。
“このままじゃ駄目だ”という感覚だけがあった。
レンは震える指で、プロフィール画面を開く。
笑っている女。
海。
カフェ。
白いマグカップ。
どの写真も、胸が妙に痛む。
知らないはずなのに。
その時。
新しい通知。
【メッセージが届いています】
レンの呼吸が止まる。
開く。
短い文章だった。
【……もしかして、レン?】
その瞬間。
胸の奥で、何かが大きく脈打った。
レン。
その呼び方。
頭の奥が熱くなる。
知らない。
知らないはずなのに。
涙が出そうになる。
レンはスマートフォンを握りしめた。
返事を打とうとして、止まる。
なんて返せばいい。
あなたは誰ですか?
でも。
そんな言葉を送った瞬間、何かが壊れる気がした。
しばらく迷って。
レンは短く返した。
【……はい】
送信。
数秒後。
既読。
そして。
【よかった】
その一言だけで。
レンの胸が、苦しくなる。
よかった?
何が。
どうして。
その時。
次のメッセージが届いた。
【急にアカウント消えたから、心配してた】
レンは眉をひそめる。
アカウント。
そういえば。
自分はSNSを一度全部削除していた。
なぜ?
わからない。
でも。
“全部消したかった夜”があった気がする。
美月は続ける。
【元気だった?】
普通の言葉だった。
でも。
レンはその文章を見ただけで、胸が痛かった。
どうしてそんなふうに話しかけられる。
どうしてそんなに優しい。
その優しさが、妙に悲しかった。
レンはしばらく画面を見つめる。
そして。
ゆっくり打ち込んだ。
【……あなたは?】
送信した瞬間。
胸がざわつく。
数秒。
既読。
そして。
返信が止まった。
長い沈黙。
レンの胸が嫌な音を立てる。
やがて。
メッセージが届いた。
【そっか】
その短い言葉が、異常なくらい苦しかった。
続けて。
【……忘れちゃったんだね】
レンの呼吸が止まる。
その文章だけで。
頭の奥で、何かが崩れそうになる。
悲しい。
どうしてかわからない。
でも。
その“悲しませてしまった感覚”だけが、妙にリアルだった。
そして。
最後のメッセージ。
【はじめまして、真壁レンくん】
レンは、その文章を見つめたまま動けなかった。
読んでいただきありがとうございます!
ついにレンと美月が再び言葉を交わしました。
次回、“忘れられた側”の感情が描かれていきます!




