第42話:『片手の復讐者・G3東雲杯の罠』
復帰戦の舞台は、皮肉にも東雲グループがスポンサーを務める**『G3東雲エナジー特別競走』**。
平和島のピットは、異様な緊張感に包まれていた。
「……佐伯さん。無理だけはしないで」
古閑まきこが心配そうに健太の左肩に手を置く。右腕は特製のカーボン製サポーターで胸に固定されているが、健太の眼光は既に勝負師のそれだった。
「……フガッ! フガッ!!」
スエもまた、健太の決意を察し、鋭い牙を剥いて対戦相手のピットを睨みつける。
東雲の刺客:『死神の3号機』
対戦相手は、東雲が極秘に育成した闇レーサー、蛇崩連。
彼の乗る3号機には、福岡で大破したケルベロスの技術を転用した「高出力・違法マブイ・コンプレッサー」が搭載されていた。
「……佐伯、片手でレースとは舐められたものだ。その左腕、二度と動かなくしてやるよ」
蛇崩の背後から、禍々しい黒いオーラが立ち昇る。
スタート:片手三指の閃光
「レディー、ゴーッ!!」
大時計がゼロを刻む。
健太の左手、人差し指と親指がレバーを弾く。
奥義:『単腕一閃』。
「……な、何だと!? 片手であのタイミングを……!」
実況席の古閑が叫ぶ。健太はコンマ01のタッチスタート。片手操縦による「余計な動きの排除」が、逆に極限の反応速度を生んでいた。
1マーク:暗黒の激突
1コースを死守する健太に対し、3コースから蛇崩が狂気の「ツケマイ(体当たり旋回)」を仕掛ける。
蛇崩の機体から放たれる違法マブイの衝撃波が、健太のハヤブサを襲う。
「消えろ、亡霊ッ!!」
ボート同士が接触し、凄まじい火花が散る。右腕が使えない健太にとって、右側からの衝撃は致命的――。
「……スエッ!! 今だッ!!」
「ワンッ!!」
健太の足の間で、スエが全体重を左側に移動させ、同時に健太も左足を踏ん張って機体を強引に左へ傾斜させた。
『人犬一体・片手旋回』。
蛇崩の衝撃波を、健太は機体をあえて「潜らせる」ことで受け流し、その反動を利用して最短コースを突き抜けた。
「……馬鹿な! 物理法則を無視した旋回だと!?」
決着:強制捜査のチェッカー
バックストレッチ。健太のハヤブサが加速する。
左腕一本でハンドルを固定し、蛇崩の追撃を一切許さない。
「……蛇崩。お前の走りは『不正支出』だ。……ここで、差し押さえる」
健太がゴールラインを駆け抜けた瞬間、会場の大型ビジョンが突如切り替わった。
そこには、古閑まきこがリークした「東雲グループの不正送金証拠」と、今まさに特捜部が東雲本社に踏み込むLIVE映像が映し出されていた。
「……な、何だこれはッ!?」
蛇崩が呆然と立ち尽くす中、健太は左手を高く突き上げた。
「……東雲グループ、最終決算……。……『破産』だ」
ピットに戻った健太を、スエが全力のペロペロで迎える。
そして、その光景をモニターで見守っていた麗華が、一人静かに微笑んだ。
「……お帰りなさい、佐伯健太。……次は、私の番よ




