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からくり競艇〜サラリーマン、魂のフルスロットル〜  作者: 水前寺鯉太郎
SG挑戦編

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34/42

第34話:博多逃走曲・パグの接吻、再び

福岡SG、二日目の全レース終了後。

ピット裏の特別外出許可エリア。健太は、機体の闇を暴くための打ち合わせを兼ね、大原紫乃と共に宿舎の外へ出ようとしていた。

「佐伯さん、急ぎましょう。ハクが教えてくれた、東雲グループの接触ポイントが――」

紫乃が健太の腕を引き、足早に歩き出したその時。

背後の自動ドアが開き、氷点下のマブイを纏った「東京の女王」が姿を現した。

「……あら。佐伯さん、それに大原さん。奇遇ね。こんな夕暮れ時に、年の離れた二人でどこへ『特別監査』に行くのかしら?」

霧島麗華。その瞳は笑っているが、周囲の気温が5度ほど下がったかのような錯覚を覚える。

「……え、ええと、霧島さん。これはその、地元のコース特性のレクチャーを……」

健太が冷や汗を流しながら言い訳を始めた瞬間、麗華の手が健太の胸ぐらを掴もうと伸びる。

(スエ! 今だ、臨時決算だ!!)

健太のアイコンタクトを受けたスエが、昨日のサウナでの経験を活かし、さらに進化した動きを見せた。

「フガガガガッ!!(麗華さまー! 大好きーッ!!)」

スエは助走をつけて麗華の胸元へダイブ! 驚いてバランスを崩した麗華の顔面、特にその美しい紅を引いた唇から頬にかけて、情熱的な「全力ペロペロ」を開始した!

「きゃっ!? ちょっと、スエちゃん! やめて、まつ毛エクステが……ひゃっ、耳はやめてー!!」

麗華がスエの「愛という名の拘束」に悶絶し、視界を完全に奪われている。その隙に、白いペキニーズのハクが「こちらです」と言わんばかりに尻尾で健太たちを誘導した。

「……スエ、恩に着る! 麗華さんの怒りは後で俺が全身で受け止める!」

「……佐伯さん、あなたの犬、本当に特命ですね……」

紫乃は呆れ半分、感心半分で呟き、健太と共に博多の街へと消えていった。

中洲の闇:東雲グループの接触

スエのおかげで麗華の追跡を逃れた二人は、中洲の屋台街のさらに奥、人目を忍ぶ古い倉庫街に辿り着いた。

ハクが一点を睨んで低く唸る。

「……あそこです。私の14号機に、正体不明の『ブラックボックス』を運び込んでいる連中がいます」

暗がりに停まる黒塗りのワゴン車。そこから運び出されているのは、不気味な紫色の光を放つ**「違法外付マブイ・クラスター」**だった。

これをSG優勝戦で一斉にオーバーロードさせれば、福岡競艇場は火の海になり、大混乱の中で東雲グループが利権を奪い取る手筈だ。

「……なるほど。これが『不適切な支出テロ』の全貌か」

健太は眼鏡を外し、特命係長モードへと切り替えた。

だが、その時。健太たちの背後に、ガチガチと金属が触れ合う音が響いた。

「……おじさん、詰めが甘いよ。……私のハヤブサへの細工に気づいてから、ずっと泳がせてたんだから」

振り返ると、そこには東雲グループに買収された「闇の整備士」たちと、そして――なぜかスエを抱きかかえ、怒りで髪を逆立てた霧島麗華が立っていた。

「……スエちゃんを『撒き餌』に使うなんて、万死に値するわよ。佐伯健太!!」

麗華は、スエを解放して言った。

「……でも、あのゴミみたいな連中(東雲グループ)が私のSGを汚そうっていうなら話は別。……佐伯、大原。ここは『東京・福岡』の合同監査といきましょうか」

乱闘:特命と女王の共同決算

健太の拳が唸り、麗華のマブイが闇を切り裂く。

スエとハクが暴漢の足首を次々と狩り取り、紫乃が正確な指示を飛ばす。

「……サラリーマンを、なめるなよ……ッ!!」

博多の夜。SG開催の裏側で、史上最大の「場外・合同監査」が火蓋を切った。

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