17 帰宅
家に戻ると、待ちわびたと言わんばかりの勢いでユングフラウが小屋から飛び出してきた。
……ヨシュアとかじゃなくて、オレのところにまっすぐ。
「ただいま。ごめんよユングフラウ。腹減ったろうし喉も乾いたろう。すぐ用意するからな」
顔を擦り付けてきたので、わしわしと撫でてやってから小屋に向かえば、水と野菜が入った桶は、どちらも空になっていた。
桶を一旦きれいにしてから、水と野菜を入れてやると、あっという間に空にしていた。
よほど、腹も減らしていて、喉も乾いていたのだと、可哀想なことをしてしまったと反省する。
しかし、当のユングフラウ号は、腹を満たし喉を潤し満足そうに藁の上に寝転がっていた。
「えーと、まだ早いけど昼飯にするか? その後は、オレは夕方まで休ませてもらうけど。その間、ヨシュアたちはどうする?」
どのみち昼食の準備に時間がかかるので、水だけ足してやってすぐに家の中へ。
「カリンが休んでる間は、おれたちも休むよ。独自に調査するには、時間も情報も足りないし。森を調べながら移動するのにも、おれたちは知識も経験も足りない。きみだけが頼りなんだよ」
「……そ、そっかー……」
そんなこと、言われたことねぇや。
……と、とりあえず、昼メシ作ろう。
「な、なあ。なにか食べたいものあるか? オレが作れるものなら作るぞっ」
「なんでもいいわよ」
カティアにあっさりと言われて、やる気がしょぼんとなった。
一番困るセリフだっていうの、ほんとだな。
「確かに。カリンが作ってくれた食事は、どれも美味かった。なにが出てきてもきっと美味いと思える安心感がある」
……そ、そっかー……。
そんなこと、言われたことねぇや。
「酢漬けの野菜は大変美味でした」
「あ、はい」
フローラって、ピクルス好きだね。遠慮なく食べさせてると、在庫なくなりそうだよ。
「じゃあ、おれたちがまだ食べさせてもらってない料理で頼めるかい?」
「ん、分かった」
朝が煮豆と野菜サラダだったから、なんにしようかな?
うん、よし、あれにしよう。
献立はわりとあっさり決まった。
まずは、鍋でお湯を沸かして、沸くまでにたまねぎとピーマンと、猪肉のベーコンを刻む。
お湯が沸いたら、手製の乾麺……といっても、うどんみたいに太くて、太さも不揃いだけど……を、茹でる。
茹でてる最中に、フライパンを竈に乗せて温めつつ、油をしいて野菜とベーコンを炒める。
麺が茹で上がったら鍋から取り出し、野菜に火が通ったら、麺を合わせてさっと炒める。
味付けは、手製のトマトソース。たっぷりと入れて絡めたら、味見をする。
最後に塩を振りかけて味を整えたら、トマトスパゲッティの完成。うどんみたいな太さだけど。
付け合わせに、野菜スープとカリカリに焼いたバタートーストを添えて、召し上がれー。
「すごく美味いよ。カリンは本当に料理上手だね」
ヨシュアがニッコニコでお代わりを要求している。
ストレートな言葉が嬉しいなあ。
「街で店開いてもやっていけると思うわよ」
カティアは、なんでも商売や利益に話を持っていきたがるな。
「……………………」
もはや無言で食べるだけの生きものになっているミシェル。なんか言えや。
「……ねえ、カリンさん? 私の……いいえ。勇者隊みんなのお嫁さんになりません? ここから、この家から、出ていかなくてはならないのですよね?」
なんか、フローラがぐいぐい来る。目がギラギラしててちょっと怖いぞ?
……んー……、まあ、その、なんだ?
そんなに喜ぶんなら、毎日でも食事作ってやっても良いけどさ?
オレのアイテムボックスの備蓄も、無限にある訳じゃないからさ?
食事代はそっち持ちなら、なんとかできるかもな?
……でも、そっか。ヨシュアたちに着いていくって選択も、あるんだな……。




