15 帰路
夜が明けたので、みんなを起こして軽く食事して、すぐに家に戻る支度をする。
ユングフラウ号は、昨日の朝に野菜と水を与えただけで、腹減ってるだろうし、喉も乾いていると思う。
その事に気づかなかったヨシュアは悔やんだが、それよりはさっさと帰ることを優先してケツひっぱたいた。
帰りは駆け足だオラァっ!
武器や鎧を装備した状態でありながら、大小様々な石が転がっていて足場のよくない下り坂も、森の地面からはみ出ている根っこや葉っぱが溜まったくぼ地も平気で走る4人を後ろから見ていて、いろんな状況に対応できるように鍛えているんだな、と感心する。
……あるいは、休む間もない過密な日程をこなすために、走り方とか習得した……というよりは、習得せざるを得なかった。のかもしれない。
道中、ゴブリンをはじめとした魔物と何度か遭遇したが、オレの投石で、みんなの武器による攻撃で、ほとんど足を止めることなく仕留めて漏らさず《入庫》した。
「……うーん……。ゴブリン、多い気がするな。カリン、いつもこれくらい出てくるのか?」
「そんなことないぞ。いつもよりずいぶん多い。2日で20近い数と遭ったのは、初めてかも」
「そうなのか? ゴブリンとネズミはどこにでもいると聞く。この森も例外ではあるまい?」
ヨシュアは、ゴブリンの数が気になるみたいだが、集落とか見つけたことないから、森のどこかに拠点があるのか、よそから流れてきているのか、いまだに分からない。
ミシェルは、拠点があると思っているみたいだけど……。
「なあ、他のところだと、ゴブリンってどうなんだ? これくらい出てくるなら、やっぱりどこかに拠点があるのか?」
「普通はそうよ。でも、ゴブリンは一匹だと森オオカミにも負けるくらい弱いから、拠点を作ってもすぐに潰されてきたのかも。オークとかにさ」
カティアの言葉に、なるほどー。と返事しておく。
それにしても、走りながら会話できるくらいには、体力あるみたいだけれど……。
フローラ、静かだな?
「……なあ、フローラ? 大丈夫か?」
「…………はぁ、……はぁ、……はぁ、…………そ、そろそろ、……一度、……休み、……ません?」
いつの間にか息が上がっていたフローラを見てみれば、法衣が足に絡んで、ずいぶん走りづらそうにしていた。
「あ、うん。もう少しで森を抜けるし、少し休んだら、あとは歩くか」
「……ふぅ、……ふぅ、……いえ、休まずこのまま歩きましょう。村に戻るまでに体力を使い果たさないように、余力を残しておきたかっただけなので」
走る速度をゆるめれば、フローラは胸に手を当てて大きく息をする程度で、確かに余裕はありそうだった。
ヨシュアも、三人の様子を見ながら走っていたので、本当に、余裕を残しておきたかっただけかも。
比較的軽装なヨシュアとカティアはともかくとして、全身鎧を着込んでいるミシェルは、すごい体力だな。
「この鎧は魔法がかかっていてな。重さを半減させながら、体力の消費を抑えることができる魔法の鎧なのだ」
……と思ったら、装備が良いのが理由なようで。
それもそうか。お貴族さまなんだし。
「カリンも、狩りのときはなにか防具を身に付けた方がいいぞ。手甲と胸当てだけでも、安心感がずいぶんと違うものだ」
うーん、そういうものかね? これまで、防具と呼べるものを身に付けたことがないから、わかんねぇわ。
(……カリンも、胸がよく育っているだろう? 適した服や防具を身に付けることで、動きやすくもなるものなのだ)
…………う、うーん…………。そういうものかね?
胸が大きくて苦労しているらしいミシェル本人が言うのだから、そうなのかもしれない。わかんねぇけど。
オレとミシェルの小声のやり取りもしっかりと聞いていたカティアは、鬼のような表情で歯ぎしりしていた。




