14 洞窟での一夜
「あのさ、カリン? 本当に、交代で休まなくてもいいの?」
装備を外し髪を下ろしたカティアが、申し訳なさそうに聞いてくる。
「ああ。でも、その代わり、家に帰ったら休むから、夕方までは応対できないと思うぞ」
「十分過ぎる。無理はしないでくれ」
「してないしてない」
鎧を脱いでインナー姿になったミシェルが、立派な胸部装甲を揺らしながら心配してくるが、実際に無理はしていない。
「……うう……。良い年して、子どもみたいなことをしてもらってすみません……」
オレのひざに頭を乗せて、真っ赤になっているのは、フローラ。
こういうとき、一番長く起きていようとするヨシュアは、全会一致で真っ先に眠ってもらった。
テントの床は板張りで、その上に敷き布団を敷いて、膝枕してお腹ぽんぽんしたら、秒で寝た。
今はもうぐっすり夢の中だ。
で、次の順番がフローラ。
女性用テントで三人一緒になれば、女子会みたいなノリでおしゃべりでも始まるのかと思えば、口から出るのはオレの心配ばかり。
それよりは、自分のこと心配しろっての。
たくさん食べて、しっかりと寝て、体力回復させつつ疲れも残さないようにしないと。
なんなら、マッサージでもしてやるぞ? なんて言ってみれば、
「よろしく頼む」
とミシェルが真剣な表情で頼み込んできた。
普段から鎧を着ているのに加えて、胸が重いから肩がこりやすいと。
胸の話を持ち出されて、カティアは悔しそうに歯ぎしりしているが、既に眠っているヨシュアとうとうとしているフローラのためにも大声出したりはしない。
膝枕したフローラが寝息をたて始めると、起こさないようにそっと離れ、ミシェルをマッサージしてやることに。
そのためには、布団にうつ伏せになってもらう必要があると告げれば、すぐにうつ伏せに寝転がっていた。
……それだけ、肩凝りに悩まされているということなのだろうけど……。
ほぼ抵抗できない状態で、背中からマッサージを受けるのは、どうなの? と思わなくもない。
「私は、貴族として、武人として、それなりの回数、どうしようもない悪党や笑いながら他人を地獄に落とそうとしてくる者と対峙したことがある。それに対して、きみは、このような環境でありながら、驚くほど善人だ。きっと、ご両親が素晴らしい人格者だったに違いない。私は既に、きみのことを信用している」
そんなことより、マッサージ早く。と言われてしまっては、こっちも信用に応えないと気が済まなくなるわけで。
肩と背中を中心とした、全身マッサージを一時間ほどがんばらせてもらった。
その間にカティアは眠ってしまっているし、ミシェルも開始5分もしないうちに寝てる。
全員ちゃんと寝てるのを確認してから、起こさないように静かにテントから出る。
カティアが生み出した魔法の明かりは、光量を落としてはいるものの、今も洞窟を控えめに照らしている。
夜はいつもすぐ寝てしまうが、朝までは暇だから、普段やらないことでもしようか。
あれだ。ホーンディアーの角を使って、槍でも作ってみるか。道具なら、アイテムボックスに入ってるし。
柄は何にするか……。木よりは、ホーンディアーの脚の骨にするか。……んん……一番長い脚の骨でも、槍にするには短い……。それならいっそ、投げ槍にするか。
角の方に穴を空けて骨を差し込んで、楔で止めて。はみ出した楔を削って、完成っと。
楔を通す穴を空けるのが少し難しかったけど、なんとかなったな。
もう1本同じものを作って、ファングボアの牙はどうするか少し悩み、研いで投げナイフにすることに決めた。
よく刺さるように鋭く研ぐのは、ちょっと神経を使う。
先端の鋭さを潰してしまわないように、何度も具合を確かめ、無心で研ぐ。
2本の投げナイフができあがったところで、もの作りはいったん切り上げる。
入り口の結界の様子を確認するために足音をたてないように歩けば、夜の闇が少しずつ明るくなっていくところだった。




