13 洞窟での一幕
勇者って、もっと煌びやかで華々しく誰からも持て囃されるものかと思っていた。
だが、聞かされた実態は、前世の知識でいうと、ブラックな職場のデスマーチみたいな印象だ。
さっきまで疲れ知らずといった様子の4人が、急に死人のような目になってしまったのにビビり、気まずくなってしまう。
両親には先立たれて村の連中からは搾取されている身でも、便利スキルを駆使した気ままな生活が性に合っていると思っているオレにしてみれば、過密な日程を粛々とこなさなければならない生活は、無理ではないかと思えた。
「……えっと、……その……が、岩塩、見に行く、か?」
沈んだ雰囲気に飲まれて、目が泳いで、キョドってしまう。
でも、声をかけたことで4人は我に返ったようで、
「カティア、明かりを頼む」
「はいな」
熱を持たない、松明のような火を魔法で複数生み出して、洞窟を明るく照らし出した。
二人くらいなら並んで進める洞窟は、一本道が左右に蛇行しながら奥へと続いていて、しばし歩けば広場に行き着く。
広場は文字通り広く、天井も高く、平坦で、4人くらい入れるテントを複数張っても十分に余裕がある。
その奥が、一面、白い結晶に覆われている。
この白い結晶、全てが岩塩だ。
「これは、すごいな」
「結構な量採掘できそうじゃない?」
「人を呼んで採掘するには、計画を立てる必要はあるが……」
「カリンさん、ここの山はどなたかが所有しているのですか?」
一面の、不規則な形をしている塩の結晶を見て、感嘆したり、利益を考えてみたりしているようだが、フローラの言葉で首をひねることに。
「……うーん? ……いや、知らない。見つけたのはオレの両親だけど、村の連中にはここのこと言ってないから、誰のものとか考えたこともなかったな」
村の連中の耳に入れたなら、どうせ、ほんの少しの対価で採掘してこいって命じられていただろうし。
……あれ? でも、これって、盗掘とかそっち方向になる?
「領地としては我が伯爵家の領地だ。以前から採取していたとしても少量だろうし心配しなくてもいい。問題は、主要な街から離れていて、管理ができていないというところだな」
ミシェルの言葉で、ホッと一息。どうやら、罪には問われなくて済みそうだ。
「それはそうとして、カリン。この塩、どれくらいの量採掘できるか分かる?」
「いや、分からない。少なくとも、オレなら一生かかっても使いきれないくらいはあるだろうってことくらいしか」
カティアは埋蔵量を知りたいみたいだが、そんなの分かるわけない。
スキルで《鑑定》しても、埋蔵量が分かるわけじゃないしな。
「ま、とりあえず、テントを出すから。食事にして、休もうぜ」
返事を待たずに、テントを三棟《出庫》する。
骨組みは木製で布は薄く丈夫じゃないし寒さを遮ってはくれないけど、視線は遮ってくれる。
声とか音はともかく、最低限のプライバシーは守れるってことで、一晩だけは勘弁してもらおう。
木製のテーブルとイスを《出庫》して、食事もできあいのもので済ませてしまおう。洞窟内で火を使うのも、酸欠とかちょっと怖いし。
パン、豆と野菜のスープ、茹でたオーク肉と野菜のサラダ。
夕食にしては質素かもしれないが、どれもできたて作りたてをアイテムボックスに確保しておいたものなので、パンは温かくスープは湯気が立っている。
簡単で申し訳ないが、今日のところはこれで我慢してもらおう。
……なんて思っていたら、
「……おかしいぞ。岩山の洞窟なのに、宿の食事が出てきたぞ? なあカティア、おれは夢を見ているのか?」
「そんなわけないでしょ。……ねえ、カリン? 外で食べる食事なのに、どうしてこれが簡単なものと思っているわけ?」
「………………ごくり」
「……ああ、私、こんなに贅沢していてよいのでしょうか……?」
なんか、価値観が違うみたいだ……。
食事中は会話しないのがマナーだそうで、まずは夕食を済ませてからあれこれ聞いてみる。
その結果分かったことだが、馬の休憩時間を除けば、夜もぶっ通しで移動していたために、食事は宿でとるもの以外は固いパンとか干し肉干し野菜とかをよく噛んで水で流し込むようなものだったとか。
……ヨシュアたち、ずいぶん苦労してきたんだな……。
……うん。オレが世話している間は、食事には不都合させないから。絶対に。
デザートとして、リンゴを取り出して切り分ける。
腹も、心も、満足いくまで食べてくれ。
太るとか気にしなくていいから。
むしろ、みんなもう少しふっくらしてもいいと思うぞ。
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