第88話 命脈族の役割
重装兵のサージの活躍で地脈族の奇襲を乗り越えた命脈族の兵達はこの建物へ戻ってきた。
数匹、亀裂が入っていたり、サージのように紋様のような溝が彫られている兵が見受けられた。
ホラクゥイーンとリテル達は遠くでその奇襲戦を見ていた。
そしてホラクゥイーンは事態が落ち着き、改めて地下全体の大まかな説明をしてくれた。
リテル達が落ちてきたこの大空洞は“ファストクルステ”という永い年月の間、同じ形を保ってきた長寿の地下。
地下に存在する一番大きな建物がこの命脈族の建物で、名は“トゥルムス”と言う。
トゥルムスの中には命脈族の心臓、いわば動力源のような物が保管されているそうで、それを戦い守り抜いてきた。
トゥルムスの周りには兵が戦力を整える場所、治癒する場所、殻を生成する場所と地脈族と戦うために簡単な設備が作られている。
ちなみに、命脈族、地脈族は共に食べ物が不要なので飯が必要がない。
減らす腹がない。
そして命脈族と地脈族の存在について。
命脈族は主に人類に従ってきて、人類と自然の均衡を保つことをしてきた。
また、同じように地脈族も人類と自然の均衡を保つことを目標としている。
全く同じ目標のはずなのに、争うなんておかしい。
リテルはこれを聞いた時、そう思った。
しかし、命脈族と地脈族の違いは色々とある。
はじめに、命脈族は生命の力を使っているのに対して、地脈族は大地の力を使っている。
生命の力は生き物に存在する力。
大地の力は植物や地に存在する力。
互いの供給源が違う。
命脈族は生命を大切に、地脈族は自然を大切に扱ってきた。
互いに攻撃の手を止めれば争いがなくなるのではないかと、考えるが安直にはいかない。
なぜ、やめられないのか。それには人類が関わってくる。
現在、人類は発展を遂げ、文明を築き、技術を生み出した。
それと同時に自然、循環が失われ続けている。
大地の力の源が失われているのと同じだ。
その徐々に減っていきている大地の力を均衡に保つため、地上に出ようとしている。
しかし、そうなっては命脈族と人類という二つの種族の間で挟まれ、また命脈族と人類が互いに手を取れば、地脈族が劣勢になってしまう。
そんなことが起きないため地脈族は地上へでない。
では、命脈族が地上へ出て人と手を組めばいいという案も昔はあった。
しかし、地脈族は心臓がないのに対して、命脈族は守るべき心臓がある。
もし、地上に出るための兵を割けば、兵の守りが薄くなって簡単に攻め込まれ、心臓が破壊されるだろう。
これもまた命脈族が地上へ出ることはない。
まるで永遠に続く戦いが互いの使命のようになってきている。
ただ互いが自分達の目的を忘れたことはたった一瞬もない。
「かなり複雑で、信じてもらえないものもあるでしょう。
しかし、これが現実です。我々は地下でずっと戦ってきました。
正直、これが未来へ繋がるのか我々もヒエラルキングも確信は持っていないでしょう。
なので、貴方達の力でこれを収めたいのです。」
「な、なるほどね?
俺達も戦いたいけど、兵には役割があるらしいね。」
「そうですね。我々の兵についても教えなければなりません。」
命脈族にはおおよそ9種類の兵の役割がいる。
近接に向き、 攻撃役の剣を持つ 交戦兵
近接に向き、 防御役の銅鐸を被る 頭鐸兵
近接に向き、 防御役の銅鏡を持つ 鏡兵 (きょうへい)
近接に向き、 補助役の身軽に動く 斥候兵
近接に向き、 攻撃役の重い殻を持つ 重装兵
中距離に向き、 攻撃役の銅鏡と銅鐸を持つ 双器兵
遠距離に向き、 攻撃役の銅鐸を持つ 鐸兵 (たくへい)
殻を治すのに向き、補助役の兵を助ける 土鐸兵
そして兵の被っている殻。
殻は軽かったり、重かったりと様々で、まれにサージのように紋様が見える殻がある。
紋様のある殻は生命の力をより発揮できる殻であり、長い期間壊れなかった殻にまれに浮かび上がってくる。
その紋様は戦いを生き抜いた強者で、ホラクゥイーンの指示の届きにくい場所で、兵を動かして戦場を有利に進めるまとめ役の印でもある。
さらに殻は有限であり、土鐸兵が一生懸命に殻を作らないと殻は増えない。
殻は非常に大切で、命脈族の体であり、命脈族の一つの人格でもある。
雑に特攻を仕掛ければ殻の消費に対して、生産が追いつかない。
計画的に戦闘を進めなければならない。




