第84話 悪ども、夢を見る
監獄の建 コトブキを一刺しし、脱獄に成功したグルジエとニグメは近くの村にひっそりと訪れていた。
グルジエは知名度があり、簡単に出歩けば気づく人には気づかれてしまう。
何気なく呑気に干されている布を巻いて村を歩くことになった。
トラスト村。
この村は海に接していて食料、資源が巡る。
船を奪うのに適した村だった。
ただ、恐怖の象徴である監獄が比較的近くに存在するため、村といえど警備がいる。
少し道を通れば槍を持つ警備が立っているのが見えた。
ニグメは警備の前を通っても気づかれなかったので、傘のある建物のしたで、少しゆっくりと過ごした。
「こんな匂いだったか。」
グルジエは座りながら大きく息を吸った。
久々の外は、息苦しいあの場所と全く違う空気で気持ちが良かった。
ずっと誰も入っていなかった部屋の空気が窓を開けられ、一気に換気される気がした。
「お前はもう気軽に吸える場所じゃないぞ。」
「そうだな。」
もうすぐ脱獄犯のラベルが貼られるグルジエはしっかりと空気を吸った。
すると眺めていた空から少しずつ雨足が見え、激しい雨となった。
「はは、残念だったな。
天気でさえに嫌われたな。」
グルジエは空から目を移し、海の奥を眺める。
すると、雨に飲まれた船がこの村に来るのが見えた。
何か荷を積んでいる船ではなく、旅船みたいな感じの船だった。
手を頭の後ろで組んで、同じように海を見ていたニグメは「ん?」と声を漏らして、スッと立った。
目を細めて数秒、固まったままだった。
「来たぞ。」
「何がだ?」
「俺たちの船だ。」
ニグメは激しい雨の中、気にもせず船に近い岸に走った。グルジエもその後を慌てて追う。
「お前の船か?仲間に伝えていたのか?」
「いや、今から俺たちの船になる。」
その船が近づいて来るにつれて、雨も強くなる。
ニグメはその船にむかって大声で言った。
「久しぶりだなぁ?ジャック!!」
その声を聞いた船はゆっくりと船を曲げて、帰ろうとしていた。
「待て!」
ニグメは無属性魔法で、半透明の足場の空間を作り、海の上を走っていく。
グルジエも「煙の子」で煙になりながら、ニグメの後ろを追う。
船との距離は縮まり、船内に着地した。
「来んじゃねえよ。なんでお前がいるんだ!」
と、声と船から現れたのはジャック=クゥオータン。
能砕と超砕を持ち、戦闘に長けた海賊の船長。
ニグメと同じ海の悪党としての分類だが、手を組むことはなく仲がいいわけではない。
ただニグメは今、船を欲しているのでジャックの船に乗り込んだ。
それならそこらの船を奪えばいい、という選択があるがたまたまジャックの船が通ったからこういう選択になった。
「これは俺達の船だ。出てけ!ん・・・?
その後ろの奴は誰だ?」
布を巻いたグルジエを指差す。
グルジエが布を解くと、ジャックは驚愕した。
「お、お前。ニグメ、どうしてそんなやつと・・・。
俺を殺しに来たのか?!」
「落ち着け。お前はそんな小物じゃないだろ。
それにグルジエは俺の仲間だ。」
「死警官が?そんなわけない。」
「色々あってな。
互いに共犯。互いに仲間だ。」
状況を飲み込めないジャックと、壁裏でその話を耳にするジャックの仲間。
「それで、何が目的だ?」
「へえ、前回の威勢と違うな。グルジエがいるからか?
まぁいい。
俺達で同盟を結ばないか?」
ニグメの提案にジャックは怪しむ。
「もちろん。同盟といっても船を貸してもらっている身だ。
お前らの目的を先に果たそう。」
ジャックは笑う。
こんな同盟の条件が簡単だと。
「それなら話が早いな。
俺達は巨大樹の島 ヘヴンホール島に航海しようとしている。
今は食料の確保で村を襲おうと思ったが、お前がいたからこういうことになってる。」
「それが終われば、俺達は俺の目的の島に送ってもらおうか。」
「それでいいだろう。」
グレイン海賊団、グルジエ、ニグメは同盟を結ぶことになった。
そして、初めての悪事はトラスト村の食料の略奪だった。




