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シンカータイカー   作者: よぐると
コアセンド王国編
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第83話 相反する正義と正義

 ニグメとグルジエは脱出を試みていたところで、緑建のコトブキの蔦にニグメは引っ張られ、監視員の仇のように壁に吹き飛ばされた。


「困るんだよ。

 君みたいなのを世に逃すのは、私の地位を落とすことになる。」

「フンッ、あの世に落としてやる。」


 ニグメは小刀を取り出して、蔦を切断する。

 そしてニグメは付加魔法放出法の「空間の滴り(スペースフォロー)」で刃渡を3倍以上に伸ばした。


 岩壁の隙間から植物や幹、蔦がコトブキの体を形成し、姿を現した。


「女が(けん)に務まるのか?

 一度俺に逃げられたのも良い証拠じゃないか?そうだろ?」

「今逃さなければいいだけ。」


 コトブキは廊下を植物でぎっしりと詰めて、棘のある茎が襲いかかる。

 それをニグメは容易く魔法で伐採した。


「守るだけじゃ、何にも面白くない。」


 飽き飽きしながら、ニグメは幾多の茎に対処する。


 ドアの隙間から見える茎から、グルジエはそこにいるのがコトブキだと知った。

 でも参戦しようとは思えなかった。

 

 正義が心に葛藤を渦巻く。

 

 脱出を決心したのに、いつもならすぐに良し悪しを判断できたのに。

 正義の上で営んできたからこそ、正義の外に出ることができなくなっていた。


 この間も、ニグメに迫っている。


「そろそろ諦めか時か?」


 ニグメは動きを止めた。


「何の挑発だ?大人しく捕まるんだな。」


 コトブキの蔓の動きも止まった頃合いに、ニグメはニヤッと片頬を上げ、手に持っていた小刀をコトブキを守っている植物の壁に刃を向けて投げた。

 かなりの速度だったが、コトブキには当たらなかった。


「武器もかわいそうな希望までも捨てたのか。

 往生際が清々しい。」


 蔓がニグメの足に絡まるが、今度は切るも、動くもしなかった。


「正義は多数派の意見と権力が必要だ。

 でも、廃れた正義じゃぁ、正義とは言えないな。」

「口は達者だな。」

「正義じゃなくなれば、何が残るか?

 自分の正義と自分が正義だ。」


 グルジエはニグメが今まで発していた言葉が、グルジエにかけられた声だと気づいた。

 コトブキは対話をしていると考えているだろうが、全くそうではなかった。


 自分の正義と自分が正義、確かに俺の心に残っているのは政府の正義じゃなかった。

 すでに政府の正義の契約はとっくに切れていた。


 グルジエは一思いに、体を煙に変えた。



 ニグメの背後から白い煙が地面を這ってくる。


「この煙は何だ?」


 コトブキの植物の壁の隙間から煙が漏れている。

 ニグメはきちんと答えた。

 

「よく覚えておけ、グルジエだ。」


 その名を聞いた瞬間、振り返るコトブキの影を踏んだグルジエが刀を突き刺した。

 そのままコトブキは倒れ、壁に生い茂っていた植物はコトブキの体に戻った。


 グルジエは小刀に付着した血をじっくりと見た。


「やっぱり正義に囚われた人は狂わされるんだな。

 正義という虚勢が判断を遅らせる。

 グルジエ、しっかり染まったな。」

「俺にわざとトドメを差し出したな?」

「これで俺らは同格だ。」


 まんまとハマってしまったとグルジエは悔しかったが、すぐに気持ちを切り替えた。

 コトブキの首をはねずに、グルジエとニグメは悠々と脱出した。


 脱出したはいいものの、船がなければ海を渡ることはできない。


「ここからどうする?見立てなしで脱出したのか?

「グルジエ、俺たちは立派な罪人だ。

 それなら見かけた船を奪うしかないだろ。」


 罪人は罪人らしく、行動することになる。

 グルジエは同じように悪事を犯すことに戸惑っていても「自分が正義」だ、とその度、心に納得させていた。

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