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シンカータイカー   作者: よぐると
コアセンド王国編
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第79話 応報と不屈

 リテルただ一人、またあの場所で目を覚ます。

 赤や黄色の淡い色の花が広がるフラワーフィールド。

 木は一切なく、丘が繰り返してある穏やかな平地だった。

 甘い香りより透き通った無臭の風がそよいでいる。


 この景色が以前の記憶をリテルの脳から掘り出してくる。

 リテルの予想では後に死神の様な鎌を持った馬骨が現れるだろう、と思っている。

 

 案の定、奴はやってくる。

 同じ鋭利な鎌の持ち先を地面に杖のように突き立てて、待っている。


 全く同じ光景。


 鎌をもう一度地面へ軽く刺し直すと、リテルの辺りから地面がひび割れ始める。

 光の届かない断層が顔を現す。

 この場から逃げようにも翼は出てこないし、両腕は舌に変わらない。 

 

 奴の特性なのか、魔法なのかリテルが持っている特性を発揮できなかった。


 リテルがオドオドと崖っぷちを彷徨っていると、ゆっくり歩み寄ってくる死神に全速力で走る生き物が額の先の針で突き刺した。

 全身は骨だけの死神で刺さったのかわからないが、同時に世界は光で白く包まれた。






 ゼヴァが巨人を追いかけた先では、巨人が魔人を襲っていた。

 手当たり次第で、潰して握って、巨人の周辺から悲鳴が鳴り響いていた。


 狂ったのか、今までに貯めていた魔人は消えていく。


 建物の隙間からその光景を目の前にするサソリ男のジュルグは怯えていた。

 どうしてこうなっているのかわからない。

 今まであの上から見ていただけだったのに、突然降り掛かってくる。

 誰も見たことがなかったのに、こんなことが起きることを知っていた。


 建物の影の奥に逃げると、巨人は足音で気づいたのか巨体を隙間にねじ込ませながら手を伸ばしてくる。


 必死に刀を持った小僧を探す。

 

 するとトンネルの奥からあいつが出てくるのが見えた。


「お、おい!た、助けてくれ!!」


 ジュルグはカイの元へ潜るために手を伸ばす。

 が、弱体化されている魔人の足では巨人から逃げ切ることはできず、ジュルグはみんなと同様に握りつぶされた。


 カイとサイダンはその光景に目が当てられなかった。

 7871は口を押さえて、悲惨な光景から目を背けていた。


「おや?」


 巨人はピタッと動きを止めてサイダンを見る。

 あの高さから落ちたサイダンが生きていることに驚いているようだ。


「おどれ、わかっちょるんじゃろうな?

 目の前で仲間が死ぬ瞬間を見たことがあるんか?!」


 カイは溢れる涙を拭う。


「仲間を庇って死ぬ団長を殺す野郎がどこにおる!」

「つまり、私、ですね?」

「ようわかっちょるな。」


 カイは右手で刀を抜く。

 ゆっくり取り出された刀から流線状に怨々しい重圧のある紫の威圧が溢れていた。

 2度目のみなぎる力。チの妖精との出会いから始まった力。


 隣にいるサイダン、7871は目を見開き腰を抜かす。

 巨人でさえ一歩下がるものだった。


「死は平等じゃと、刻み教えたろう。」


 横へ一線、薙ぐ。

 巨人に放たれた三日月形の紫光が柔軟な左腕を斬りつける。

 深く傷を負う左腕の痛みに巨人は悶える。


「ありえない・・・。その力は、私の肉体を・・・。」

「正義なもんじゃろうて。」


 カイは刀を持ち直し、次は縦に振った。

 巨人にまた飛ぶ紫光。巨人は受けきれないと判断して、魔人がたくさんいる方向へ走り去った。


「おどれ待て!」


 足がすくんでいるサイダンを置いて、巨人の後を追いかける。

 一瞬で巨人が過ぎ去る場所は悲惨な場所に一変する。

 死んだ魔人は連れ去られ、巨人によってある一つの場所に集められていた。

 先に巨人が死体の山で突っ立っていて、カイは少し後で到着した。

 

「最悪な目に合わせてやる。」


 眼力のある目でカイと目を合わせ、魔人の山へ飛び込んだ。

 魔人の山はみるみるうちに黒い体で覆われてた。

 カイは不測の事態に身構えて待つ。 


 巨人が魔人達を取り込むと、人型の体から原型もなく四本の足、四本の長い腕、それらを支える膨らんだ黒い体。同じなのは黒い体とハットだけだった。


「なぜ、わた・・・、違う、俺を恐れていたのかハッキリしてきた。

 ハハハ、この俺をこんな姿にしたからだ!」


 さっきまでの巨人とはかけ離れ、流暢に話し始め、一人称が私から俺に変わった。

 チック・ザ・マンは化け物へと魔人を取り込んで姿を変貌させた。


 四本の腕が同時にカイを追ってくる。

 カイは鞘に刀を入れ、逃げることに専念した。

 一つにでも掴まれたならもう抜け出すことが難しい。

 反撃のチャンスを伺いながらカイは腕達に気をつける。


 そしてカイは逃げているうちに、だんだんと角へ角へと詰められていることに気がついた。逃げることばかりでそのことを見落としていた。


「まずい・・・。」


 カイが逃げた先には壁が立ちはだかっていた。


「お終いだ。もう逃げ道はない。

 ハハハ、ハハh、アガッ。ン?!」


 突然化け物が自分の顔を殴る。


「僕の体だ!身勝手にはさせない!

 僕達が悪いんだ。彼に非はない!」


 暴れている化け物の声は異なり、一つの体の中で二人の人が喧嘩しているようだった。

 それにもう一人の人格はカイを守る発言で、互いに発言が衝突していた。


「俺のモノだ!」


 乱暴な人格と自分の不徳を理解している人格同士が一つの体を不器用に動かし、互いが同じ体を殴り続けていた。

 腕を掴んでは掴み返して、喉を締めては抵抗して、どっちの行動も自分の体をに攻撃していた。

 

 カイはこの異様な状況にすぐに抜刀をしようとは思えず、躊躇いの心のせいで、どっちつかずの行動のまま思い切って刀を振ろうとはできなかった。


「お前は分かっていない!今なら容易に復讐ができるんだぞ!

 

 それが未来にどうなる?!僕達が変わらなきゃ!


 黙れ。」


 乱暴な人格だけが体を支配する。

 

 カイが逃げ始め、後ろを追う。

 乱暴な人格ただ一人の体は自由自在に自分の体として動かして、カイの後ろ足を捕まえた。

 吊るして宙ぶらりんのカイに化け物は刀を取り上げ、放り投げた。

 そしてカイに話す。


「もうお前ら人間はどれほど酷い生き物だったか、俺が全部知っている。

 表情を何一つ変えず、喜んだのは俺の成功だぞ!

 大概にしろ!貴様もその因果だ。」


 カイを握るその手を振り上げた。

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