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シンカータイカー   作者: よぐると
コアセンド王国編
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第75話 命賭け

 狂人の様にひたすら走り続けるサイダン。

 汗滲んだ紙を握りしめ、そのまたすぐ後ろで手を伸ばす巨人が追いかけてきている。

 サイダンの特性、加速運動で走り続けるほど速くなるので、まだ追いつかれる見込みはない。

 ただ、疲れも時間の問題になってくる。

 巨人の体は意外にも柔らかく、その柔軟さで地下に血管の様に巡る通風口を移動道として利用してくる。

 回り道から先回り、また予測が難しい突然の飛び出しで、一筋に逃げるのはムリだった。

 見たことがあるような通路を何度も走って行くうちに、実験的な機械のある場所から薬品の臭いがする場所へと移り変わっていった。


「いつまで、走る?」


 巨人の問いかけにも反応せず、サイダンは走り続けた。

 リテルとか、ムロフとかに聞こえる声で助けを求めたサイダンだが、行き着いた先は道が途切れていて、その先は深淵だった。

 電気で照らされていない訳ではなく、建設中かの様に途端に切れていた。


 サイダンが袋の鼠の状態を見て、巨人はゆっくりと歩いてきた。


「飛び降りるか、回収か、早く、決めなさい。」


 肩が激しく上下に動き、鼓動も太鼓の様に耳元で鳴っている。

 冷静に考える時間は一切ない。もう直ぐ手前まで巨人の手は迫ってきている。

 どっちが正解なのか、いや、どっちも不正解だと思っている。

 だけど、わざわざ不正解を選ばなければならない。

 無力な自分に嫌気が差した。


 


 サイダンは心を振り絞って、がむしゃらに巨人の腕にしがみついた。


「死ぬなら、みんなのために死んでやる!」


 初めて自分から死ぬことを志望するなんて思いもしなかった。

 自分の発言に思わずバカに思えたが、もう引き返せなかった。


 加速運動で溜まった足の力を解放し、深淵側へと引き始める。


「?!一体?理解、できない。」


 巨人はずっしりと構えていた体をサイダンに引きずられていることに理解できなかった。

 引きずられ、向かう先は奈落。


「死ぬ時ぐらい、役に立ちたいんだ!

 褒めてもらうのは死んでからでいい。」


 どれだけ今に抵抗しようとも、いくら頑張っても現実は皮肉だった。


 巨人はサイダンを掴み返した。

 強引に腕から引き剥がし、握りしめた。


「その証拠は、染めて、お終いです。」


 息ができないぐらいもう苦しくて。

 声を出しても喉から空気が掠れでるだけだった。


 すると限界の最中(さなか)にキンキン声が聞こえた。


「チョーレイキャクチューイ!チョーチューイ!!」


 巨人はサイダンから目を離し、セバスチョーを目に捉える。 


 セバスチョーが鉤爪に淡青を発光させる筒を運んできて、僕を掴んでいる腕にそれを投げつけた。

 その筒は腕に当たった瞬間に一気に爆発した。



 巨人の拳はヒュルリと解けて、サイダンを乱雑に手放した。

 サイダンは膝で立つのがやっとで、少しずつ呼吸ができるようになった。


「セバスチョー、あなたは、()()()では、ないでしょう?」


 巨人は右腕を片方の手で押さえ、少し震え怯えた声で言った。

 純粋な黒だった体が一箇所、青くなっている。


 そしてセバスチョーに向けて問いかけた「そっち」の意味がサイダンにはわからなかった。そもそもこの状況で余裕を持って理解しようともしなかった。

 セバスチョーは何にも返事をしなかった。


「これでいいんだな?!セバスチョー!

 舌絡(タングル)!」


 リテルが巨人の背後から飛び出してきて、青く染まった右腕に両腕の舌を絡みつけた。

 翼も生やし、全力でその箇所を引っ張ると、バキッと弾ける音鳴らし右腕を失った。


「どこで、その、情報を・・・。まさか、セバスチョー・・・。」

「ダンドリヨォーシ!ウラドリヨーシ!

 チック、ヤッテキマシタヨー!」

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