第74話 カイの行方
一つの配管の中を滑る様に下へ下へと降っていく。
レールに沿ってポットが流れるままにカイは刀を握りしめて、この事態に備えていた。
時々、肌を凍らすほどの冷たい空気が吹きかけられる。
点々と光る蛍光色が繰り返され、遂にポットは動きを止めた。
そしてポット扉が勝手に開くと、そこにはたくさんの魔人の姿があった。
そこにいた彼ら彼女らは痩せこけていて、衛生も綺麗ではなかった。
カイは言葉が喉に詰まっている。
驚くことに、魔人は青年から年寄り、性別、種類問わず無造作に集められていた。
コアセンド王国の地下の真実がこれなのか・・・?
カイは異様に静かなこの空間で、一人階段で両膝を抱えている青年に声をかけた。
「ここがなんなのか?見ての通り王国栄光の足場さ。
俺達はここで生涯を過ごすんだ。あの窓が見えるか?」
その青年は壁のかなり上についている窓を指さして言う。
窓越しには何もない。
「あっこからずっと見てくるんだ。黒いやつが。
何にもしてこないけど、ずっと見てくる。今はいないけど。
だから俺達はずっと放送される指示にしようなしに従うしかないんだ。
それに、みーんなあいつと目を合わせない為にいつも下を向いている。
空の色なんかとっくに忘れたよ。知ってるはずなのに・・・。」
青年は一つため息を漏らした。
「こんなに話したのはいつぶりかな。
俺は・・・あれ?名前なんだっけ?自分の名前すら忘れちゃったよ。
やっぱり番号で呼んで。7871だ。
君は?」
この問いはカイの番号を聞いているのだろう。
ただカイには持ち合わせた番号はない。この部屋の外で何が起きているのか知らない7871に出来事を話した。番号がないのも一緒に。
「カイは魔人じゃないんだ。じゃあなんでここに?」
カイは黒いやつに強引に入れられたと言った。
本当はシャッツがボタンを押したせいだが、出来事の根幹は黒いやつだ。
7871はそれを聞いて一瞬驚いたが、あっ、となにかを思い出し、俯いた。。
「ここは硬すぎる壁ばかりで、出ようとも思わなかった。
柔らかいものなんて何にもない。」
わしは誰も試みたことがなかったという文言に一つ思った。
企んだことがないのか、はたまた失敗したんじゃろか。
その結果が知りたいが為、訊いた。
「それは誰も成し遂げられなかった、ということか?」
「違う。全員失望したんだ。
後から入ってくる人を見るたびに誰も助けようと、救おうとしなかった。
なぜか、救える自信がなかったからだ。」
希望を持った瞬間、失望を持つことになる。
救おうと思った気持ちは打って変わって、さらに現状を知ることになる。
今に触れてわかって、諦めがつく。
受け止めたくない現実を受け止めることは辛い以外何もない。
「じゃが、わしはここにいる用はないんじゃ。
脱出を手伝ってくれるか?おどれ。」
「おどれ?それは俺の名前?」
「わしの口癖じゃ。」
勘違いした7871は少し気まずかった。
単なるはやとちりだった。
カイとは立ち上がった。
7871は少し遅れて立った。
「おどれ、特性はあるのか?」
彼は自分の特性を聞かれた時、沈黙した。
魔人なら変身系や人間と比べて一つは特性を持っててもいいはずなのに、言わなかった。
「まぁ、案内ぐらいは頼むぞ。」
話題を逸らした。自然に。
「一番の脱出口はやはりあの窓じゃろ?」
「・・・そうだ。多分外に出れるのはあそこだけ。唯一の壁という逃げ道。」
あの窓の下へ歩き出した。
カイはいつも通り歩いて行くと、並列して7871が歩いていないことに気づいた。
右を振り返ると、彼がゆっくりぎこちなく歩いてきていた。
「なんじゃ?具合が悪いんか?」
「いや・・・。体に力が入りにくいんだ。君は人間だから平気なんだ。
来た時に冷たい風を食らっただろう。
多分、あれは俺ら魔人に何か悪い作用があるのかも。」
「皆が弱々しいのもそれが原因?」
「だいたい合ってる。」
カイは7871の歩幅に寄せながら、時間にも気にしながら、歩いた。




