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シンカータイカー   作者: よぐると
コアセンド王国編
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第72話 巨人への宣戦布告

 カイ、ムロフ、ホールン、サイダンは寂れた雰囲気と不気味さを醸し出す観察室を見つけた。

 人気もないこの地下深くで彷徨うことになる。


「カイ、確かに事は前に進んだけど・・・、僕達、どうすればいいの・・・?」


 サイダンが不安を募りながら言った。


「・・・!?すっかり忘れておった。リテルに聞いておくべきじゃったの。」

「どうすんの?!これじゃ袋小路すぎるよ!」


 みんなの心に焦りと緊迫が流れる。


「し、仕方ない。ここらで何か手掛かりになるものを探すんじゃ。

 何の場所か、何があるのか、何でもいい。」


 ムロフとホールン、カイとサイダンに手を分け、注意深く探すこととなった。

 カイとサイダンは道を進むと、とある紙がガラス越しの部屋にあった。


「あれ、手がかりになりそうじゃない?」

「うむ、強行にガラスを割ろうか。」


 サイダンの加速運動の変速先手(トランスジャブ)でガシャーン!とガラスが飛び散る。


「でかしたぞ。」


 サイダンはガラスの破片に細心の注意をして、指先でヒョイと盗んだ。

 すぐにガラスの破片の散った地面から離れ、カイと一緒に読んだ。


ENvの性質

レポート5

実験対象:ENv


 ENvを原点に戻すと、神経液である。ただ電気電子を含んだ神経液。ENvの状態では物質は破壊されていないので、ENvを魔人の脊髄へ戻した。

 結果は残念な結果に終わった。ENvはNvとは全く違う物質のようで、脊髄内でENv同士が引っ付き合い、脳幹付近で動きを止めてしまった。実験対象の女性の魔人は命を落としてしまった。

 この実験、この物質の研究を止める案が我々実験者の中で生まれてきた。



 何とも悲劇であろうと想像できる。

 内容はさっぱりだが、この施設やこの地下は実験的な行為をするための場所でもあるようだ。

 コネルギ以外の他に地下には氷山の一角より下の海に沈んだ部分がここに隠されている。

 そうであるなら人体的な実験を行っていたのか?魔人の脊髄というように身体をいじっているのではないだろうか。

 

「やはり、この場所は・・・。」


 前触れもなく、大きく揺れる振動がこの地下全体を揺らした。

 ちょうどカイの上の天井がひび割れた。

 大量の黄緑の液体が降り注ぎ、更にはシャッツと共に一つの巨体が落ちてきた。


「足引っ張んなこのずんぐり!」


 シャッツが巨人に捕まっていた。

 

「私は、遂げなければならない!」


 と、乱暴にシャッツを引きずり、降ってきた階段を登っていった。

 ドロドロに浸された通路を置き土産に出来事は一瞬で立ち去った。


「なんじゃ・・・。幻覚か・・・?」

「そんなわけないだろ!あ、追いかけるよ!」


 あまりの衝撃に事実を疑うカイを叩いて、ドロドロの足跡を追った。

 足腰に負担を覚えながら必死に階段を駆け登り、ある部屋へ続くドロドロを辿ると、シャッツが大きなポットの中に閉じ込められていた。


「シャッツ?!」


 シャッツはポットを内側から叩いて叫んでいるが、まともに、声は聞こえなかった。ただ、助けようとカイは刀を抜いた。

 ポットの隣にいた真っ黒の巨人は言った。


「私は、あなた達の、ような、人を、何度も、見てきました。

 しかし、未成年というのは、初めてです。

 地上へ、逃して、あげましょう。

 では、このポットへ、すぐに、上がれますよ。悪いことは、起こらない。」


 どうやらこのポットは地上へ移動できる乗り物のようだ。

 ではありがたく・・・というわけでもなく。

 はっきり言って、くだらない嘘だ。その巨人の瞳から殺気が漏れている。

 だがカイは刀を収め、ゆっくりポットへ歩む。


「そこの、子も、きてください。」


 サイダンに怪しく優しく手招きをする。

 巨人の目を盗んで、こっそりとカイはサイダンに目を合わせる。

 覚悟の目だった。


 ポットへ足を伸ばす瞬間、カイは不意打ちに刀に手を差し伸べ、巨人の首を目掛けて振った。


「おや?」


 巨人の首へ差し掛かったその刀だったが、巨人の皮膚の前では刃がびくともしない。

 巨人はカイを強く掴んだ。


「わかってました。私は、逃すつもりは、ありません。」


 と、詰めるようにカイへ話し、ポットへ放り入れた。


「カイ!」


 バタンっと勢いよく扉は閉まる。


 サイダンが手を差し伸べたが、巨人の一振りに体ごと弾かれた。

 壁にぶつかって、肩を負傷した。


 カイとシャッツが捕われた状況で、サイダンは絶望を感じていた。

 リテル達とも別れ、ムロフやホールンもあそこに置いてきた。


 抵抗できる力も武器もすぐには完成できない。

 挫けている暇なんてないのに、何もできない。

 巨人はサイダンに近づいてくる。

 

 絶望に震える手がヒラリと何かに触れた。

 紙だった。レポートと呼ばれるあの紙。


 サイダンは苦し紛れに、涙を拭って無茶を言った。


「僕は・・・こ、これをせ、世界にばら撒くんだ。

 これがお前の正体だったなんて、知らなかったヨー。

 もうこんなところ来なからねー。」


 下瞼を引っ張って、この場から逃げた。

 一か八かの賭けだった。


「待ちなさい。」


 あの巨人はカイとシャッツのポットをそっちのけで僕の後ろを追ってきた。

 振り切った針小棒大な嘘が効いたようだ。


 でも、ずっとこれから逃げ切るのは無理だ。

 闇雲に走ったとても、どこかでは機転を起こさないと何も変わらない。


 サイダンは廊下を走った。

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