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シンカータイカー   作者: よぐると
コアセンド王国編
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第67話 人工アビス

 タワーの地下1階まで侵入に成功した。謎のレポートと生き物を発見し、更に奥へ進む。

 地下2階で遭遇したのは大きな空間の中で一本の橋の下に大量の液体が機械で混ぜられている場所だった。

 鉄でできた橋一本だけの下にこれがあるのは肝が冷える。

 最悪な想像が心に浮かんでくる。いや、こんなこと考えるべきじゃない。

 橋の中間付近で交差するように橋が4本に分かれていた。

 選択肢が3つ。それぞれの分岐の先には部屋の名前が書かれていた。


 Cルーム、管理センター、Deal。この3つだった。

 Cルーム?Deal?なんだそれは?

 でも管理センターなら重要な物が何かあるに違いない。


 薄暗い細道へと足を踏み込んだ。

 自分の足音だけが、この空間で響く。ここにいるのは機械だけで、人の姿すらなかった。あの生き物も。

 管理センターという場所は機械が少なく見える。代わりに実験器具がたくさんある。ある部屋には手術が行われていそうな機械や小物があった。

 不気味だ。


 薬品の臭いが充満している部屋の中で、木棚を探る。

 何か、コネルギ以外に何かをしているはずだ。

 突き止めてやると、決意し至る場所を探した。

 

「またレポート・・・。」


研究レポート

Nvの発見

レポート1

研究対象:魔人の脊髄


 魔人の体内で生成される物質を抽出したところ、全く新しい黄色の物質を発見した。実験体4体の魔人の脊髄全部にあり、内臓、筋肉、血液に見当たらないことから神経の一種と推測している。比較的大人しい極獣のズウェル・クリングの脊髄を再び調査したところ、脊髄内では確認できなかった。

 つまり魔人の脊髄内でのみ生成されていることがわかった。ただ脊髄の中のものでは微々たる量で何ができるのかわからない。

 魔人から発見されたこの神経液を我々は「Nv(ネオナーヴ)」と呼ぶことにした。


「これだ!Nvというなんかの物質の証拠を手に。」


 この求めた成果に思わず声が出た。

 心が喜びそうだ。


 するとドタドタとこちらへ走ってくる慌ただしい足音が聞こえた。

 

 まずい、バレたか!?

 喜んでいた心が一転し、恐怖感が迫ってきた。

 すぐに部屋の奥へ走って、箱の後ろに隠れた。


 隠れた後に間もなく、さっきの黒いヤツが入ってきた。


「誰か、います、か?」


 野太い声が部屋全体に問う。

 戸を開けたり、辺りをウロウロしている。


 あいつの一歩一歩が僕の心を踏み潰してしまいそうだ・・・。

 必死に口を手で覆う。


「また、小動物、でしょう、か。」


 やっと部屋を出ていった。

 ほんの10秒ぐらいの出来事なのに、人生の半分が経った気がする。

 まだ行動するべきじゃない。後数分はここで心を落ち着かせよう・・・。






 ・・・もう離れたか?

 箱の後ろからそろりと顔を出した。

 そこにはもうひっそりとした部屋だけだった。

 胸を撫で下ろした。ホッと一息というところだが、まだ引き締め続けなければならない。この緊張は王国に戻ってからやっと解かれる。

 それまでは、任務を続ける。

 僕は廊下を警戒して足音、吐息まで絶つよう移動した。


 次の部屋は・・・制御室。

 最も重要な施設に違いない。壮絶な何かがそこにある。

 ただその分、警戒度は最大の場所。まだ油断するな僕。

 ひょっこりと部屋を覗く。罠とかがあるかもしれない。

 でも、部屋の中はすでに制御装置が顔を出していた。

 警備とかないんか?

 多分この地下施設を制御するいくつかのボタンがある機械を見つけた。

 ただ文字も印も書いていないからどれがどれに繋がっているのかわからない。

 ふと、機械の前に張られているガラス越しに見える景色に目がいった。

 大量な黄緑に光る液体のようなものが、どこかに流れていく様子が見える。


「これは・・・コネルギ・・・?

 一体、なんの物質なんだ?」


 冷たい蛇が僕の背中をなぞるように這い上がってくる気がした。

 そして2枚のレポートをもう一度見返した。


「コネルギって、魔人の脊髄液?」

「お伺いします。機械、検査の、担当は、変わり、ましたか?」


 部屋の前にはあの黒いヤツが、こちらを見て話しかけてきた。

 僕より背が高いそいつは、屈んで部屋の入り口を通ってきた。

 黒い全身に一色が光るその目はなんとも奇妙だった。


 その姿と、かけられた言葉に僕の心臓は飛び出しそうだった。

 でも僕が誰なのかまだわかっていなさそうだった。

 正直に言って死ぬなら、嘘でもついてやる。


「僕は、少し前に新しく所属した研究員だ。

 そして機械の検査の使命によりここへ来た。」

「そうですか、では、Cルームは、すでに、伺い、ましたか?

 毎度、Cルームの、検査を、してますよ。」


 僕は研究員という偽名職という形で嘘をついたが、なんとか危機を乗り越えられたようだ。

 ただ僕はCルームへ行かなければならない、怪しまれないために。


 そして鉄橋の場所まで戻り、今度はCルームという場所に向かった。

 なぜか黒いヤツが付いてくるので、ずっと怖かった。


 Cルームへ到着した。

 そこでいくつものカプセルとたくさんの配線を発見した。

 そのカプセルは大人一人が入るほどの大きさで、カプセルの中はよく見えなかった。

 僕はカプセルの部屋を奥へ奥へと進んだ。

 進んでいると、配線に躓いた。

 その配線の接続口が切れ、すぐそばの一つのカプセルの状態が急変した。


「危険を察知。」


 僕は黒いヤツに持ち抱えられた。

 いや握られたに近い。

 そのカプセルの中は液体で、その液体がカプセルを突き破ったのだった。

 その液体はビリビリと切れた配線と感電していた。

 どうやらこの黒いヤツは電気を受けつけない体質のようで、足がその液体に触れていても無傷だった。


「ありがとう。」


 と僕はお礼を言った瞬間、隣の空のカプセルへ入れられた。

 その時、僕は気づいた。騙されていたのは僕だったんだって。

 Cルームに誘導したのも、配線を躓きやすくしたのもコイツの計画だった。


 僕の頭上からさっきの同じ液体が降り注いで、カプセルを満杯にした。

 息もできず、僕は溺れるしかない。

 肺の空気も液体にどんどん置き換わり、ついには僕は全身液体漬けになってしまった。

 最後に見たアイツの顔は、なんとも言えない顔をしていた。

 焦りよりも、全てに驚き呆れた。

 僕の死因は溺死に終わった。

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