第12話 ナイショ話
これは少し前、学校での出来事だ。
蒼太が駐車場に行き、居なくなったあと翠と紅蓮の間には険悪な空気が満ちる。
そんな中、心とメイは何とかこの空気を払拭出来ないかと考えるが口を挟むことが出来なかった。
掛ける言葉が見つからなかったのだ。
「...どういうつもり?紅蓮君」
低い、翠の声が静寂をたった。
さっきまでの笑顔が嘘のような無表情になる。
肩を震わせ紅蓮に問いかける。
「どうするもこうするもないだろ?蒼太の記憶が戻るかもしれない。あそこでいつも俺たち遊んでたしな」
むかって紅蓮は、朗らかに言ってのける。
「記憶を戻す手掛かりになることはしてはダメって約束したよね」
「お前らはしたかもしれないが俺は了承した覚えはない。俺は蒼太に思い出してほしい」
「それが早いんだよ!リスクを考えて!!」
「大声出すなよ、周りに見られるだろうが。問題を先延ばしにするなよ」
紅蓮は鋭い眼光に翠を移した。
「僕が言っているのはそんなことじゃない」
翠と紅蓮の睨み合いが続く。
「はぁ、この際言うぞ。俺はお前らの考えに反対だ」
「...」
「何故考えない、何故支えない、何故諦めた!
言っておくが翠!俺はお前を許してないぞ!!!」
「紅蓮!あれは翠君が悪いわけじゃ!」
翠に掴みかかりそうな剣幕の紅蓮に慌てて心が仲裁に入る。
「...」
「...くそっ」
何も言わない翠に紅蓮が悪態をつく。
「俺は俺流でやる。そっちは勝手にしろ、俺は手を出さない。そっちが手を出してくるなら別だがな...。心、メイお前らもどっちに付くか決めとけ。俺は自分が正しいと思う事をする蒼太にバレないよう、ちゃんとしろよ。じゃあな」
紅蓮は校門へ向かい振り向くと背を向けたまま言い去って行った。
「どっちが蒼太の為になるか考えろよ...」
去り際にポツリと言葉を残して。
「ちょっと!待ちなさい!」
心は紅蓮を追い走ってゆく。
「コロちゃん!」
メイは俯く翠を気にしながらも心を追いかけるのだった。
それは心とメイに言ったのかそれとも翠に言ったのか、もしくはその両方か。
どちらにしろ、その言葉は翠の心にずっしりと重くのしかかるものだった。
「…そんなの分からないよ…」
ポツリと呟いた言葉は誰にも拾われ事なく、地面に沈んでいくのだった。




