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アクアエルド物語  作者: MANAM


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第五話

 一方その頃、イリスの居なくなった北の国の城ではヒウルが頭を悩ませている。リサはその側で何も出来ずにいる自分にもどかしさを感じていた。グッと拳を握り締めるリサ。

 そこへ一人の兵士が大慌てでヒウルの部屋へと駆け込んで来た。

「女王様! 失礼致します!」

「どうしたの⁉︎ イリスの行方がわかったの⁉︎」

「それが! 週間イリスの最新号が発売され、なんと手に入れる事が出来たのです!」

 嬉しそうに週刊誌を掲げる兵士に愕然として椅子に座り込むヒウル。しかしそんなお金ヒウルを気にせず兵士は週間イリスのページを素早くめくるとある写真が載ったページを開いてヒウルに見せる。そこにはこう書かれている。


『独占スクープ‼︎ イリス様(?)がお忍びでイースタン・アクア号へご乗船か⁉︎』


「イリス! これはイリスに間違いないわ!」

「まさか! 海賊に襲われたあの船に⁉︎」

 ヒウルとリサはイリスの情報が手に入った嬉しさよりも、襲われた船に乗っていた事に驚き逆に不安を募らせる。

だが、イリス捜索に一歩近付いた事に変わりはない。

「ご苦労! お前のイリス様愛のおかげで進展した。感謝するぞ!」

 リサの謝意に敬礼をすると兵士は週間イリス最新号を大事そうに抱え部屋を後にした。

「ああ…とりあえず兵を緊急寄港した港に派遣して…それから…」

「女王様! 宜しいでしょうか!」

 あれこれ思案するヒウルにリサが進言する。

「どうか私に行かせては頂けないでしょうか!」

「でもあなたを城から出すのは…」

 ヒウルはリサの真っ直ぐな目を見て、目を閉じて微笑み頷く。

「そうね…可愛い子には旅をさせろと言うものね…いいわ、イリス捜索あなたに任せます。ただし人々に気取られないようにね」

「はっ! ありがとうございます!」

 そう言うとリサは素早く部屋を後にし、旅支度をするため自室へと向かった。


 世界一治安の悪い街では、やっとのことで街まで下りて来たイリスがマリナに連れられカフェへと入る。

マリナが強面のウエイターにパフェを二人分頼むとイリスの顔を嬉しそうに見つめだす。

「あの…お姉ちゃん…」

「なぁに⁉︎ イリスちゃん!」

 勢いよく立ち上がりハイテンションで聞き返すマリナにびくっとするイリス。

「あの…あたしあんまりお金持ってなくて…」

「大丈夫よ! ここはあたしの奢りだから!」

 席に座り直すとまたイリスの顔を見つめなおして質問を投げかけて来た。

「イリスちゃんはどうして東の国へ行くの?」

「お父さんとお母さんを探すため…あ、でも今は男の子を探してるの。さっきカイゾクさんに襲われた船に乗ってたんだけど…」

 イリスの言葉にギクリとし、目を逸らすマリナ。

「へ…へ〜…そんな事があったんだ〜…ゼンゼンシラナカッタナア!」

「そうなの? この辺りじゃまだ話題になってないのかな?」

 明らかに怪しい棒読みを純粋に受けったイリスにマリナは胸を撫で下ろす。だがマリナの後ろから何者かの補足の声が聞こえて来た。

「襲われたのはイースタン・アクア号。襲ったのは悪名高き海賊のようですよ」

 後ろを振り返り声の主に鋭い眼光を飛ばすマリナ。

「あんた誰よ!」

 後ろに立つのは白髪の長髪を後ろで結んだ二十代後半くらいの中性的な面持ちのサングラスをかけた黒スーツの人物。

イリスがその人物に向かい叫ぶ。

「もしかして、シオンさん⁉︎」

「また会えましたね、イリス。ふふ、あなたならきっと旅に出ると思っていましたよ」

 シオンはサングラスを取りイリスにウインクを飛ばした。

「シオンさん、その格好は?」

「ここは危ない街なので私もそれなりの格好をしなければと新調しました」

 自慢気にスーツの襟を掴み胸を張るシオン。そしてイリスを取られたマリナはイライラを募らせテーブルを指でコツコツと叩き始める。

「あのさ、あたし達楽しくお茶してんだから邪魔しないでくれる?」

「おやおや。それは失礼しました」

 シオンはマリナに近付くとその肩に手を置きイリスに聞こえないくらいの声で呟く。

「賞金首の海賊マリナさん」

 驚きのあまり目を見開いて立ち上がるマリナ。

「あんた…やっぱりあたしのこと知って…」

「もちろん、当然知っていますよ。だってほら、壁にたくさんあなたの手配書が…」

 シオンが指差すが早いかマリナが駆け出すが早いか。言われてすぐ壁に無数に貼られた手配書を雄叫びを挙げながら剥がして回るマリナ。強面の店員に止められながらもイリスにバレないよう必死に剥がし続ける。

 マリナを見ながら微笑を浮かべ、フリーになったイリスと話を始める。

「ところでイリスはどこに向かっているんです?」

「東の国へ行こうとしたんだけどカイゾクさんに襲われて海に落ちてここまで流されちゃったの」

「あっはっは。それは災難でしたね」

 イリスの言葉に軽く返答するシオンと、驚きのあまり壁に頭をぶつけるマリナ。

「それでシオンはどこへ?」

「未だ風に乗り切れない風船のようにふらふらしていますよ」

 爽やかな笑顔を作ったかと思うとすぐに厳しい顔つきになり小声で呟いた。

「ですが、必ず探し出して見せますよ…ルイク!」

 ルイク、その名前を聞いてイリスは椅子から飛び上がるように立ち上がりシオンのスーツを掴んで見上げる。

「ルイク⁉︎ ルイクってお父さんの名前! シオンもお父さんを探してるの⁉︎ シオンさんはお父さんのお友達なの⁉︎」

 しまったというように口元を押さえ、そして困った様子で笑顔を浮かべてイリスの頭を撫でるシオン。

「ええ…まあそうですね…なんと言うか…」

 そして屈み込んでイリスと目線を合わせると人差し指を立て口元に当てて続けた。

「古い知り合いです。今はそれ以上言えません」

 そこまで言うとシオンの懐から何やら鳥の様な鳴き声が聞こえって来た。シオンは懐から懐中鳩時計を取り出し鳴き声アラームを止めるとて時間を確認し名残惜しそうにイリスに告げる。

「おっと…時間の様です。もう行かなければ」

「ええ⁉︎ もう行っちゃうの⁉︎」

「私達の向かう道は同じです。いずれまた会う事ができますよ」

「…うん」

 イリスは寂しそうに頷き、シオンはその頭を撫でる。

そして立ち去ろうと背を向けた時、首からグキっと聞こえるくらいの力で結んだ後ろ髪を引っ張られ引き戻された。

「いたた! 何をするんですか!」

 シオンは首を押さえながら振り向く。

「さっさと消えて欲しいところなんだけど、ちょっとあんたに聞きたい事があってね」

 腰に片手を当て不遜な態度で問いかけるマリナ。

「あんたあたしとどっかで会った事ない?」

「ええ、会いましたよ。数分前にこの席で。お久しぶりです」

 飄々ととぼけるシオンにマリナは真剣な表情で聞き直す。

「そうじゃなくて…もっと前…もっと昔に…」

 マリナの言葉にシオンは目を閉じて微笑み小さく笑った。

「そうですね。会った事があるかもしれません。まだこの世界に不思議な力があった頃にね。ではまた」

 そう言い残すと今度こそシオンはカフェから立ち去って行った。

「不思議な力か…そう言えばおじさんもライターを使わず葉巻に火をつけてた…でもそれって十年以上前…」

「あーあ…シオンさん行っちゃった…」

 ぶつぶつと考え事をしている横で名残惜しそうに手を振るイリスを見て、嫉妬がぶり返すマリナ。

「あいつなんなの⁉︎ やたらイリスちゃんに馴れ馴れしいけど!」

「シオンさんがお父さんとお母さんが生きてる事を教えてくれたの。だけどまずクラマール君を探さないと…」

 クラマールと言う名前を聞き、みるみる顔色が悪くなっていくマリナ。

(あいつが探してたのはこのイリスちゃんかぁあああ!)

 マリナは辺りを見回し大急ぎで会計を済ませて外に出ようとする。

「その子ならきっと大丈夫だわ! うん! だから早くこの街を出ましょ!」

「え…でもまだ探してない所もあるし」

 イリス達がカフェから出た刹那、横から叫び声が聞こえてきて、マリナはギクリとする。

「あー! イリス! やっぱり無事だったんだな!」

「クラマール君も!」

 (やっぱりあいつかぁあー!)

 マリナは手で額を押さえしくじったと言う様な表情になる。クラマールはすぐにマリナに気付き睨みをきかせる。

「あ! てめえ! イリスに変な事してねえだろうな⁉︎」

「大丈夫だよクラマール君! お姉ちゃんはあたしを助けてくれたんだよ!」

「へえ…お前がねえ…」

 疑いの眼差しをマリナに向けるとクラマールはイリスの手を取りマリナの前から去ろうとする。

「じゃあな! 賭けは俺の勝ちだ! 行こうぜイリス!」

「待ちなさい! イリスちゃんはあたしと一緒に行くのよ!」

「アホか! なんでお前みたいな海賊と!」

クラマールが食ってかかろうとするとマリナは必死にクラマールの言葉を遮って来た。

「わー! わー! しー! しーっ!」

 その様子を見てクラマールはニヤリとする。

「はは〜ん、そう言う事か。じゃあオレも一緒にお前の船に乗せて貰おうかなぁ?」

「なんであんたまで一緒なのよ!」

「あれれ〜? イリスに海賊だってバラされてもいいのかな〜?」

 クラマールは意地悪な笑みを浮かべマリナの腕を指でツンツンする。

「う…う…うう…」

 マリナは葛藤する。イリスとの旅を諦めクラマールともおさらばするか、それともクラマールを受け入れイリスと旅をするのか。

「わ…わかったわよ…」

「そうこなくっちゃな!」

 イリスとクラマールは手を取り喜び合い、マリナはクラマールの脅しに屈して涙を流すのであった。

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