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転生少女は灰を継ぐ 〜その婚約破棄令嬢、うちの辺境でもらいます〜  作者: なづきち
神獣? 私の大事なものに手を出すなら、何だろうとぶっ飛ばす

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16 後片付け

 アヴィとディアンには瓦礫の片付けを言いつけておいて、おそるおそるステラ様(とシルク)と一緒に、避難したみんなを呼び戻しに行く。大怪我をした人は居ないとステラ様は言っていたけれど、ドラゴンの出現にトラウマになってやしないか不安だった。

 領主館を出て街の方へと向かうと、やがて人だかりが見えた。うちの軍人たちと、顔見知りの狩人ハンターたちで構成された集団だ。先頭のいかつい大男二人――軍団長と組合長ギルマスへと話しかける。


組合長ギルマスがなんでここに?」

「そりゃドラゴンが攻めてきたってんだから、知らん顔してるわけにゃあいかんだろうが」

「それは……まぁ、そう、ね?」


 軍人と違って狩人ハンターは命がけで戦う義務はないのだけども……と不思議そうにしている私の考えが伝わったのか、組合長ギルマスが鼻を鳴らす。


「あのなぁ、俺たち狩人ハンターだって故郷は大事なんだ。こういう時に体を張らんでどうする。……まぁ今回はお前さんが片付けたみたいだがな」


 よく見てみれば、駆けつけてくれた狩人ハンターたちはみんなこの辺境伯領出身だった。いつのも魔災とは違って、ドラゴンという一般人では相手取るのが厳しい相手だったのに……それでもいざという時は戦うことを選んでくれたのか。なんだか感慨深いものがある。

 私がステラ様を連れてゆっくり歩いて来たことで戦闘が終結したことは自明だ。組合長ギルマスが「お前ら帰っていいぞ!」と狩人ハンターたちを散らす。彼らは緊張感もなく……いや、緊張をしなくてよくなったからこそ、ことさら賑やかに帰っていった。組合長ギルマス自身が残ったままなのは、この後の軍団長との会話を聞くためだろう。


「当主様、お疲れ様でした」

「あぁ、うん。軍団長グラディスもお疲れ。こっちの様子はどうだった?」

「領民はつつがなく避難してくれました。子どもたちは一部気絶していましたが、すでに全員起きていますし、軽傷を負った者も治療済みです」


 魔災はよくあることだが、ドラゴンのような大物が出るパターンは少ない。それでも特に大きな混乱はなかったようでホッと息を吐く。


「それで、ドラゴンは討伐した、ということで間違いないでしょうか?」

「あー……討伐はしてない」

「……逃げられた、と?」


 真実を言うべきか迷ったけど……あのドラゴン親子が領主館をうろつくのは確定しているのだ。正直に言った方が後でこじれることもないだろう。ただ少し、事実とは異なることを混ぜさせてもらう。


「……あのドラゴンは魔物じゃなく聖獣だった。攻めてきたのは……すれ違いのようなもので、仕方なくぶちのめしたら成り行きで契約することになって……まぁ、協力者みたいなのになった」


 さすがに神獣を支配下に置いたなんて言えやしない。聖獣ランクと契約しただけでも大事になりそうなのに、さらにその上の神獣を、協力どころか支配下に置いただなんて、国にバレたら絶対に厄介なことになる。好きで抱え込んだわけじゃないし、何なら巣に帰ってほしいくらいなのに、巻き込まれるのは絶対にごめんである。

 私の報告の内容に、軍団長と組合長ギルマスが揃って硬直する。まぁ無理もない話、か? 隣に居るステラ様が慌てることなく冷静なままなので、信用度は上がるだろう。別に私の信用度が低いってわけじゃなく、それほどに大きな話という意味でね。


「嘘だろ? と言いたいとこだが……クロノアだしなぁ……そんな馬鹿みたいな嘘吐くやつじゃねぇし……」

「当主様がそこまで怪我をしているのは初めて見た。それほど強力な相手だったのだろう、信ぴょう性は高い」


 おっと、ボロボロ服のままだった。怪我は全部治って問題なく動けるからうっかりしていた。

 二人の言葉に、後ろに待機していた軍人たちもざわめきだした。


「攻めてきたのが聖獣? それをぶちのめした??」

「それで契約まで? ……マジっすか」

「うおおおぉ……さすが当主様! 強いとは知ってたけど、そこまでだったとは……!」


 元々軍部の人間は私の力を知ってるから養父様じーさまが死んでも残ってくれたってのもあるんだけど、普段から訓練で転がしまくったり、狩ってきた魔物を見せて力を示し続けておいたのが功を奏したようだ。疑いの目を向けるでもなく素直に信じてくれている。

 信じてくれたのはいいんだけど騒ぎになりそうで、ヤベって思ったのだが、軍団長がすかさず「静まれ!」と締めてくれた。


「箝口令ってほどじゃないけど、聖獣と契約したことはあんまり吹聴してくれないでくれると助かるかな。ちょっと防衛を手伝ってもらうくらいで何かするわけじゃないし、よその領地から変な言いがかりを付けられても困るし……」


 さすがに国王陛下と宰相閣下には伝えておかなければならないけど、本当にアレで何かするつもりはないのだ。国家への反乱なんてもちろん考えてないし、領土を増やしたいという欲求もないし、爵位を上げてほしいとかも全くない。ステラ様の警護をしてくれるのは助かるけど、付随する色々が厄介すぎるのよねぇ。

 私の心配事を伝えると、みんな神妙に頷いてくれた。聖獣(実際は神獣)を国に寄越せと言われても無理だし、じゃあ契約者である私を寄越せとなったりしたら、彼らからすれば困るだろうしね。私が居ないだけで防衛力がガタ落ちするし。


組合長ギルマス、ドラゴン素材の在庫をあげるから、適当な噂を流しておいてくれる?」

「もらいすぎな気がするが……まぁわかった」

「あと、ドラゴンと聞いても駆けつけてくれたみんなにお酒とご飯を奢っておいてよ」

「フハハ、それじゃあやっぱり金は余らんだろうな」


 細かい話はまた今度、と組合長ギルマスは帰っていった。軍人たちも、避難した領民たちを呼び戻すために散っていく。

 私は軍団長に頼んで、子どもたちの避難場所へと連れていってもらった。……大丈夫だといいんだけどなぁ…………というのは、杞憂だったようで。


「ねーちゃん!」

「ドラゴンやっつけた!?」


 わらわらと私の方へと駆け寄ってくる。盾で防いだとはいえあの咆哮にさらされたというのに、怯えてもおらず、めちゃくちゃ元気だった。体の方は後で念のため検査をするとして、メンタルの方に傷が残ってなさそうで大きく安堵の息を吐く。これで何かあったらあのバカをどつき回すところだった。おっと、ランとレンと侍女さんもこっちに合流してたのか。珍しく負傷した私に驚いているようだけど、問題ないよと手を振っておく。


「クロお姉ちゃん……血がいっぱいだけど、大丈夫なの……?」

「大丈夫大丈夫。全部治ってるから。リンはみんなを誘導してくれてありがとうね」


 リンはあのドラゴンを目撃して、私を残して逃げたから更に不安だったのだろうか、安心させるよう頭を撫でる。

 ……あれ、腕に何だか違和感が……後にしよう。下手に顔に出して余計な不安をさせるものじゃない。


「えーと、みんなに伝えておくべきことがあります」


 この子たちも領主館(の敷地内)に住んでいるので、ドラゴン親子とは絶対に顔を合わせる。勝手に護衛係に決めてしまったけど、もしこの子たちが「イヤだ!」と言うなら追い出すか、こっそりわからないよう護衛させるしかない。

 果たしてどうなるか……と意を決して口にしてみれば。


「んー、いいよー」

「ディアンとはもうともだちだしね!」

「ねー」


 順応力ぅ! 今日会ったばかりのディアンが友だち判定か……子どもは仲良くなるのが早いなぁ。

 とはいえ、ディアンはともかく、アヴィが子どもたちを傷付けようとした事実は覆せない。本当に大丈夫なのか重ねて問いかけてみると。


「だって、ねーちゃんがもうおしおきしたんだろ?」

「……まぁそうだね。もう悪いことしないよう、約束してもらったよ」

「じゃあなんももんだいねーじゃん?」

「ねー!」


 ニカッと笑う子どもたちの顔には一切の我慢の色もなく。

 ……こういう時、子どもたちの強さを思い知る。私なんかより、ずっと強い心を持っている。

 この子たちに怪我がなくて本当によかった。肩の力を抜く私に、ステラ様が小さく囁いてくる。


「きっかけはクロノア様なのだとしても……貴女はしっかりと子どもたちを守りました。どうかそれは、忘れないでください」

「――」


 驚いてステラ様を見ると……彼女は、とても柔らかく微笑んでいて。

 負い目は消えないのだけれど……私は少し、自分が誇れた気がした。

これにて三章は終わりです。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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