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転生少女は灰を継ぐ 〜その婚約破棄令嬢、うちの辺境でもらいます〜  作者: なづきち
婚約破棄? じゃあその子、もらっていきますね

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04 辺境伯領へ

 しばらくして、着替えたステラ様が侍女さん――アンナさんというらしい――を連れて戻ってきた。まぁそりゃそうよね、貴族令嬢が一人で外出出来るわけないよね。

 侍女さんのも問題なさそうだし、連れて行っても問題ないだろう。そもそもステラ様を引き込もうという時点で他の人物の関与も織り込み済みだ。

 私は二人を連れて再度転移魔法を発動し、やっと見慣れてきた辺境伯領領主館の門の前へと出現する。大したおもてなしも出来ませんが、ようこそ我が領へ。


「領主様? お帰りなさい!」

「お疲れ~」


 門番たちに手を挙げて挨拶をし、敷地内へと。

 領主館までの道すがら、雑談として敷地内の施設を解説をしていくと、広場に差し掛かったところで私を見つけた子どもたちが走り寄って来るのが見えた。


「ねーちゃんおかえり!」

「りょうしゅさま、あのねあのね――」

「オレ、やっとあれができるように――」


 うーん、今日も元気だ。すくすく育っているようで何より。

 可愛らしい報告を聞き、頭を撫でたりしていると、子どもたちの中で一番大きい――といってもまだ十三歳の――少女、幼馴染の一人であるリンが一番小さな子を抱っこしながらやってきた。


「クロ様、そちらの方々は?」


 リンの視線はステラ様たちへと向いていた。……数分とはいえ忘れてしまっていた。申し訳ない。

 紹介しようと口に出す前に、やっとステラ様たちに気付いた子どもたちの攻勢が始まる。


「うっわ、すっげー美人!」

「きれいな銀色の髪! お星さまみたいにキラキラ!」


 そうよねぇ、美人よねぇ。ステラ様は私がこれまで出会って来た人々の中でトップレベルの美少女なのよ。

 何故か私が得意気になって――


「この方はシルバーレイン侯爵家のステラ様といって、とっても偉い……あっ――」


 ……今になってやっと、ステラ様が実際に偉い貴族令嬢であることも思い出した。やば。

 なんちゃって貴族の私と違い、彼女は生粋の貴族だ。性格は穏やかであると聞いているけれども、ここまで雑に対応されたことなんてないだろう。うわぁ、侍女さんの目が厳しく……!

 慌てる私に対し彼女は、何てこともないように。


「子どものしていることです、お気になさらずに」


 と、なんとも寛大なことを仰ってくれた。いい人で助かった……。

 私はともかく、子どもたちに類が及んでは目も当てられない。うーん、後回しにしていたけど、きちんとした礼儀も教えていくべきだろうか……いや今はそれどころでは……。

 にわかに悩む私に、小さな声と小さな手が伸ばされる。


「まま、まま」


 リンが抱っこしている幼な子、シェリィ(シーちゃん)だ。

 三年前、ゼロ歳の時に魔災で両親を失った女の子。顔など覚えているはずもなく、保護した私を『まま』と呼んで懐いてくれている。色々な意味で複雑だけれども、突き放すわけにもいかず、笑顔を保ち抱き上げた。


「ん、シーちゃん、ただいま」


 この子は普段は元気に走り回っているけれど、私かリンに抱っこされたがることが多い。……まだまだ親に甘えたい盛りで、痛ましさを感じる。

 常に魔災被害に遭っている辺境伯領であるけれど、三年前の魔災被害は酷く、親を、子を、友人を失った人がどれだけ居たことか。

 ……今後、それらの被害をどれだけ小さく出来るか、今は私の腕にかかっている。

 本当に、頑張らなければ。


「ごめんね。お仕事が残ってるから、また後でね」


 「うぅ……」とわずかにグズるシーちゃんをリンへと返す。


「リンも引き続き皆をよろしく。あ、これ王都のお土産。皆で仲良く食べてね」


 空間収納インベントリ――この魔法も遺失魔法らしいけど、禁制品の密輸入はしないと神紋契約に織り込み済み――からお菓子を詰め込んだ袋を取り出し、すぐ隣に居た子へと渡す。娯楽の少ない辺境伯領で甘味は大人気なのだ。子どもたちは歓声を上げ、大はしゃぎする。


「かしこまりました、クロ様。お邪魔をしてしまったようで、申し訳ございません」


 たどたどしく礼を取り、子どもたちを引き連れて帰っていくリンに手を振り、私は改めてステラ様へと謝罪をする。一応、シーちゃんは私の実子ではないと伝えたら「……でしょうね」と返ってきた。ふぅ。


「あの子たちは魔災で両親を失った孤児です。領主館に併設している孤児院で面倒を見ています。なので、私がというよりは領主館の皆が親代わりですね」


 この辺境伯領において孤児は珍しくない。むしろ私もその内の一人だ。

 孤児院はいつも一杯で、スラムに流れるほどに溢れていた。皮肉にも三年前の魔災の私の行動で特級狩人(ハンター)に認定され、養父様じーさまの目に留まり、アッシュフィールド辺境伯家の養女になり、権力を得た私が私費を投じて建てた。


「これでも三年前から被害は大きく減っているのですが、それでも毎年被害者は出るのでままならないものです」

「三年前、といいますと……」

「ンフフ。権力は使ってなんぼですからね。色々とやらさせていただきました」


 お金はたくさん持っていたけど、お金さえあれば何でも出来るってわけじゃないからね。権力けんげんを得たことで、やれることが一気に増えたのだ。


「何をなさったのかお聞きしても?」

「んーっと……魔の領域との間に壁を増やしたり、兵士たちの武器防具を強化したり、早期警戒網を構築したり」


 いやぁ、あの時の養父様じーさまはよくもまぁ思い切ったものだね。元平民に好きにやらせるなんてさ。



「クロノア様、お帰りなさいませ」


 領主館前に辿り着いた私たちをランが出迎えてくれた。……人前だから取り繕っているけれど、先ほどのリン同様、幼馴染にサマ付けされるのはどうにも座りが悪い。


「ただいま。ステラ様、この者は私の幼馴染で補佐官のランです。ちなみに先ほど会ったリンの実姉ですね。ラン、こちらがシルバーレイン伯爵令嬢のステラ様とその侍女アンナさん」


 ランは姉だけあって、リンよりも滑らかに礼を取った。この辺りを教えたのは私だけれども、彼女は本当に飲み込みが早くて助かっている。だからこそ大変な領主補佐官なんてものをやってもらってもいる。

 さて中に入ろう――と思ったところで、甲高い音が響き渡った。

 残念なことに聞きなれている、先ほどステラ様に述べた、早期警戒網の発する警報音。

 突然の大音量に驚くステラ様たちに「すみません」と一言断ってから、通信機イヤーカフを起動する。


「こちらクロノア。索敵班、今の警報音の説明!」

『領主様!? よかった、戻っていたんですね! 南の五の方角より大きな飛行型の魔物、推定ワイバーンが来ているそうです。数は……二、三……五……八体!!』


 チッ、ワイバーンか。

 三級狩人(ハンター)相当の魔物だ。ただし一体であるならば、の話で、八体となると話は変わってくる。辺境伯領軍の団長は一級狩人(ハンター)相当の腕を持っているけれど、部下を連れて行ったところで空を飛ぶ八体のワイバーンを相手取るのは厳しいだろう。ちなみに特級は一級より上という位置付けであるだけで、能力は細かく区分けされていない青天井だ。と言うか、私が一級に収まらないので新設された位階で、現時点で私一人しか居なかったりする。

 普段であれば私がフォローして兵の訓練に当てているところだけど……今は間が悪い。


「わかった。今回は時間がないから私が一人で全部やる。他からも来てないか警戒は続けて、何かあったらすぐ報告を」

『りょ、了解でありマス!』

「解体場、大きいの八体持ってくから空けといて!」

『っわわ、領主様? 了解っすよ!』


 ワイバーンは強力な魔物だけあって素材も高く売れる。領の収入のため、逃すはずもない。


「ラン、ステラ様たちを執務室にお通しして、一番いいお菓子とお茶でもてなしておいて」

「執務室、ですか? あそこは今――」

「そこが一番現状(・・)がわかりやすいからね」

「……承知いたしました」


 執務室と聞いてランが眉をひそめたけれども、それもそうだろう。何せ今のあそこは人を招ける(・・・・・)状態ではない(・・・・・・)のだから。

 それでもあえて私が見せたいのは、見てもらうのが一番早いから。……ステラ様に失礼だと怒られたら平謝りするしかない。


「ステラ様、空気を読まない魔物がすみません。すぐに片付けてくるので、しばらくお待ちいただけますでしょうか」

「え、は、はい」


 そうして私は転移魔法を発動し、ワイバーンが来ているという場所へと飛んで行った。

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