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転生少女は灰を継ぐ 〜その婚約破棄令嬢、うちの辺境でもらいます〜  作者: なづきち
婚約破棄? じゃあその子、もらっていきますね

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11/13

11 事の顛末

 ……などと誓いを立てたものの、シルバーレイン家の当主である宰相閣下の許可が得られないことにはどうしようもない。

 今後の打ち合わせもそこそこに、私はひとまずステラ様たちを学生寮へと帰す。お詫びとして残っていたチョコもお渡しして。


 宰相閣下に早速面会予約(アポ)を取る手紙を『お忙しいところ恐縮ですがなるはやでお願いします(意訳)』と添えて送ったら、意外にも翌日が指定された。あの人マジで忙しい人なのに……私の行動が予測されて空けられていた可能性も大か。手のひらの上で転がされていたとしても不思議じゃないくらいに、頭の切れる人なのだから。宰相という肩書きは伊達ではない。


 緊張でやや寝付きの悪い夜を過ごして翌日。

 指定された王城内の応接室(遮音結界付き)へステラ様と一緒に足を運ぶ。学院がまだ冬休み期間で授業がないのと、一緒に連れてくるよう記載があったからだ。

 先に到着し、解けない緊張を徐々に膨らませながら部屋の隅で立って待つことしばし、時間通りに宰相閣下が現れ、礼を取る。ステラ様も淑女としてのお辞儀をしていた。


「待たせたようだね」

「いえ、お時間をいただきありがとうございます」


 宰相閣下はステラ様と同じ銀色の髪を短く整え、目はステラ様の紫に青を足したような色合いをしている。

 そしていうまでもなくイケメンだ。年齢的にはイケおじ……というには見た目も声も若い。とても二十代の子どもが居るとは思えない。

 宰相閣下にソファに着席するよう促され、ステラ様と並んで座る。宰相閣下は対面だ。

 まずは挨拶……をする前に、侯爵閣下からとんでもない発言が出てくる。


色々と(・・・)連絡をもらっていたが、こうして会うのは久しぶりだな、アッシュフィールド辺境伯殿。……いや、未来の義娘むすめと呼ぶべきかな?」

「ぶふぉっ!? 何故それを!?」


 まだ何も言ってないのに!? もしや宰相閣下も先日の私の紛らわしい発言を耳にして、そう捉えたの!?

 などと慌てていたらそうではなく、宰相閣下から呆れたような目が向けられる。


「何故と言われても、先日のうちにステラから報告が送られてきたからに決まっている。報告連絡相談の重要さは辺境伯殿も知っているだろうに」

「早急に伝達しておくべきことと判断したのですが……何かまずかったでしょうか?」


 隣のステラ様が首を傾げていた。

 そうですよねぇ、報告の一つも先にしておきますよねぇ! 私の段取りが悪いだけで貴女は何も悪くないです!

 ……婚約破棄騒動という大事をステラ様に連絡していなかった宰相閣下に言われると釈然としないものがあるな?


「その話は後だ。先に先日の顛末を話しておこう」


 私たちが出ていった後の話か。それは確かに気になる。


「まず、横領をしていたティヘン教授は懲戒解雇。余罪がありそうなのでキリキリ吐かせているところだ」

「まぁあるでしょうねぇ……」


 学院内で色んな人を見てきた中で、比較的色が黒かった人だ。余罪があったとしても驚きはしない。


「次。第二王子の側近候補でありながら、愚行を止めずに乗った学生全員、謹慎一か月。武器を抜いた三名は三か月」

「やらかした割りには短くないですか?」

「辺境伯殿が被害を小さくした(・・・・・・・・)のでな。後、事前に止めなかった私と国王陛下にも責はないとは言えない」


 え? 小さくなったの?

 私としては、(主にステラ様に対しての被害を)大きくしたと思ったんだけど……? あいつら、そんなに暴れる予定でもあったのかしらん。

 国王陛下と宰相閣下に責任があるのはそれはそう。


 ピクリと、隣のステラ様の体がわずかに身じろぎした。

 ……まだ宰相閣下ちちおやが自分に何も言ってくれなかったことに痛みを覚えているのだろうか。

 『大丈夫?』と目で問うと、彼女は小さく笑みを浮かべてからゆるゆると強張りを解いた。うーん、まだケアは必要かもしれないな。気を付けておこう。


「最後に。ディオ王子殿下であるが……最低でも謹慎三か月。そして、王位継承権の剥奪」

「――えっ」


 と声を上げたのは私ではない。ステラ様だ。

 そこまで大きな沙汰になるとは思ってもいなかったと、目を見開いている。


「何を驚いている、ステラ。お前は、先日の経験を経てなお、アレ(・・)に王位を任せられると思ったか?」

「それ……は……」


 仮にも王子を『アレ』呼ばわりとは、実は相当腹に据えかねているのかな?

 罠に嵌めたのは国王陛下と宰相閣下であっても、その罠を自分で作って突っ込んでいったバカであるのもまた事実だからなぁ。

 んー、第二王子は上層部から見捨てられているとは思っていたけど……これはひょっとして。


「もっと前から、継承権剥奪を予定していましたか?」

「……そうだな。思い留まれば残す可能性はあったが……今回の件でその芽は潰えた」


 やっぱりか。継承権剥奪……元々ステラ様との婚約破棄の予定があったからこそ、私にあんな証文を作ったのだろう。

 宰相閣下は頭が痛いと言わんばかりに眉間を揉み解す。事は、私が思っていたよりも大きかったらしい。


「聖女を囲い、教会の権勢を得て王位を狙うだけならまだよかった。しかし……帝国の手を借りるなど以ての外だ。今回は事前に察知出来ていたからあの程度で済んでいるが、アレがもっと狡猾だったならば内乱にまで膨れ上がったかもしれないな」

「えぇー……」

「なん、ですって……?」


 よりにもよって帝国……第二王子、バカだバカだと思ってたけど……そこまでだったかぁ。いや、この場合はバカであの場で発覚したからこそ軽傷で済んだ面もあるか。……被害が大きくなる前に第二王子にトドメを刺すために、気付かないフリをしてやらせた可能性もワンチャン出て来たぞ。

 このエリュシオン王国の周囲には、当然ながら別の国々が存在している。

 代表的なのは、友好国であるカルディナ共和国、中立国であるハルメシア神聖国、そして……仮想敵国であるヴォルクス帝国。ヴォルクス帝国とは表立っては敵対していないけど、水面下でバチバチやりあっていると聞く。皇帝の野心の大きさゆえに。

 ちなみに、どの国も魔の領域の素材欲しさに狩人ハンターを雇って辺境伯領に滞在させている。明確な破壊行為でもしない限り止めることは出来ないし、大体の雇われ狩人ハンターは真っ当に活動しているのでその必要もない。ただし帝国紐づきは怪しい動きをしているので、要注意リストに入れて狩人組合ハンターギルド上層部と共有済みだ。


「王子殿下が洗脳魔法を受けていた可能性は?」

「王族は結界に守られているのでそれはない。念のため調べたが形跡もなかった。過程はどうあれ、行動したのはアレの意志だ」


 洗脳されていたわけでもなく、王位欲しさに仮想敵国である帝国の手を借りようとしたのであれば、剥奪はやむなし。もし帝国の手の者と知らずに協力を受けていたのだとしても、身辺調査能力がないってことなのでやはり資格なし。

 というかマジでバカすぎない? 教育どうなってんの? と私の感情を読みでもしたのか、宰相閣下は付け足してくる。


「アレの教育は生母であられる第二妃殿下の管轄で……いや、何を言ったところで言い訳にしかならないのでやめておこう」


 よくあるお妃様の勢力争いも関係してくる感じかな? いやぁねぇ。

 国王陛下と正妻である王妃殿下はそこそこ善人の色をしてたけど……その他お妃様の色は見てなかったかな。対面したこともないし。まぁ面倒なので関わりたくないのだけども……。


「その間者だが、パーティホールの件と同時に捕らえて現在締め上げている。調査状況によっては辺境伯殿の力を借りるかもしれない。その時は頼めるだろうか」

「そうですね……構いません」


 辺境伯領の平穏には王国の平穏が必要だ。戦争に駆り出されるのはごめんだが、戦争にならないよう、付け入られないよう手を貸すのは許容範囲内だ。


「そしてステラ。上層部の事情があったとはいえ、申し訳ないとは思っている」

「……いえ」


 私には全容はわからないけれど、様々な理由が絡み合ってあぁなった、ということだけはわかった。

 何も知らされず、囮のように使われたステラ様からすれば溜まったものではないだろうけど、宰相でありシルバーレイン侯爵家当主のやったことであれば文句は付けられず、呑みこむしかない。

 アフターケアは宰相閣下にもぜひ頑張ってもらいたいところである、などと思ったところに。


「詫びというわけではないが、今回のお前の要望(・・)は全て許可しよう」

「えっ」


 この「えっ」は私だ。

 ここで出てくるからには、私のことは無関係ではない……はず。


「ステラ様?」

「良かったですね、クロノア様。婚約の許可(・・・・・)が下りましたよ」

「あ、はい」


 それは……良かった、ですね?

 …………うん?

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