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レイハート公爵夫人の時戻し  作者: 風見ゆうみ


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55  レイハート公爵夫人の時戻し ①

 ロガンの件はひとまず片が付いたが、まだ、問題が残っていた。

 リット殿下は、なぜつく必要もない嘘をついたのか。

 イライアス様から、リット殿下にそう連絡を入れてもらうと、自分はロガンに騙されていたのだと返事がきた。

 ロガンからは謝りたいと聞いていただけで、復縁を望んでいるなんて知らなかったとしらばっくれたのだ。

 これ以上、このことで責めることができず、彼がこれからどんな動きをするか、警戒しなければならない日々が続いていた。

 そんなある日、王妃陛下から連絡があった。ちなみにイライアス様と結婚した今でも、王妃陛下という呼び方のままだ。私にとって義母に当たるが、未だにお義母(かあ)様と呼べずにいるし、王妃陛下も気にする様子はない。

 イライアス様も無理に呼ばなくてもいいと言ってくれているし、王妃陛下という呼び方が失礼なわけでもないので、良しとしている。

 ちなみに王妃陛下から私に何を言ってきたのか。手紙を確認してみると詳しい内容は書かれれていないが、私に相談したいことがあるらしい。

 都合のよい日を教えてくれとあったので、返事をする前にイライアス様に相談した。


「会わないわけにはいかないので、お会いしようと思います」

「忙しいと言って断るのは難しいからね。少し待ってて」


 イライアス様はそう言って、寝室を出ていくと、すぐに戻ってきた。

 その手には手帳が握られており、自室からとってきたと教えてくれた。


「十一日後はどうかな。その日なら予定が入っていないし、それまでに仕事をこなせると思うから、僕も一緒に行くよ」

「今回も一緒に来てくださるのですか」

「ミティ嬢と出かけるとかならまだしも、王城に行って母上と会うと聞くと落ち着かないんだ。心配性でごめん」

「謝らないでくださいませ。気持ちはとても嬉しいです」


 王妃陛下からの相談事がどんなものなのか、私には見当もつかない。それはイライアス様も同じだった。

 国王陛下やワシたちにも協力してもらったところ、リット殿下とうまくいっていないことがわかった。

 そのことで、私に相談するとは思えない。

 意図がわからないまま日は過ぎて、約束の日になったのだった。


 ****** 


 日時はこちらの希望通りになり、当日は、約束よりも少し早い時間に王城にたどり着いた。

 昨日はミティ様とお茶をして、王妃陛下からの嫌がらせがまだ続いているか確認した。すると、最近は態度が柔らかくなったらしく、何の心境の変化があったのかと不思議そうにしていた。

 ミティ様への態度を軟化させたことが、今回の呼び出しと関係があるのかはわからない。

 リット殿下との仲違いが、王妃陛下の中で、自分や女性に対する評価に良い変化があったのなら良いことだ。

 ぜひ、そうであってほしいと願いながら、メイドに案内されて、応接室に入った。

 少し待つように言われ、ソファに座り、部屋の中を見回す。

 背後の壁には大きな風景画が飾られている。それ以外は大して目を引くものはなく、一人でいるだけなら退屈な時間になったかもしれないが、私にはベェとルピがいる。

 二匹が興味深そうに、カップに淹れられたお茶の匂いを嗅いだり、窓の外を眺めている様子を見ていると退屈することはなかった。

 十分もしないうちに扉がノックされた。王妃陛下が来たのだと思い込み、笑顔を作って立ち上がった。しかし、予想は外れた。入ってきた相手が誰だかわかった瞬間、私の顔から笑みが消える。

 現れたのはリット殿下だった。


「母上は忙しいみたいでな。それまで、俺が相手をしてやる」


 リット殿下はテーブルを挟んだ向かい側に座り、ふんぞり返って足を組む。


「とにかく座れ。お前には色々と相談したいことがあるんだ」

「ベェェー!」

「ウォフッ!」


 ベェとルピは窓の近くで吠えると、ベェは私の所に、ルピは扉をすり抜けて部屋から出ていった。

 ルピはイライアス様を呼びに行ってくれたのでしょう。それにしても、どうしてリット殿下が? 王妃陛下は最初から、私とリット殿下に話をさせるつもりだったんだろうか。

 警戒を怠らないように気を引き締め、お決まりの挨拶をしてソファに腰を下ろすと、リット殿下が口を開く。


「お前の意見を聞かせてくれ。ミティに王妃が務まると思うか?」


 思いもよらなかった質問に、私は思わず眉をひそめた。


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