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【書籍発売中】レイハート公爵夫人の時戻し  作者: 風見ゆうみ


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47  元妹の末路 ② 〜ソレイユSide〜

 あの日、納得できない理由で捕まってからの私は、白い石造りの留置所の牢屋の中に入れられていた。

 私がいる牢屋以外にもあと十以上の牢屋があるらしく、左右から人の罵声が聞こえてくる。

 ここに入れられてから、丸一日以上が過ぎた。

 牢屋の中に窓はなく、寝心地の悪いベッドと用を足す場所があるだけで、明かりはない。廊下にあるランタンの明かりだけが頼りだ。

 ロガンに助けを求める手紙を書いたが、何の音沙汰もない。

 ロガンは私を見捨てたのか。本当に馬鹿だわ。私と繋がっておけば、お姉様と話す機会ができたかもしれないのに――。

 彼がなぜ被害者ぶっているのかはわからない。浮気をしたのは彼もそうじゃないの。

 どうして、私だけが責められるの?

 王妃陛下を唆そうとしたのは確かだけど、彼だって悪いことを考えているんだから、私だけ捕まるのはおかしくない?

 ロガンが考えていることを暴露してやろうかしら。そうしたら、司法取引ってやつで、私はここから出してもらえるかもしれない。

 そう考えていると、コツコツと足音が近づいてきているのがわかった。

 監視の男かと思ったが違った。無表情の若い騎士は、私のいる牢屋の前で足を止めた。


「場所を移動する」

「どこに? 私は釈放なの⁉」


 歓喜の声を上げて尋ねた。しかし、騎士は何も答えず、後から現れた仲間と共に牢屋の中には入ってきた。 やっと出られると喜んだ私だったが、女性騎士が持っているものが何かとわかった瞬間、目の前が真っ暗になった。

 女性騎士が持っているのは、手枷と足枷だった。


「嘘、どういうこと? 何をさせられるの⁉」

「大人しくしろ!」


 逃げようとしたけれど、すぐに騎士に腕を掴まれてしまった。逃げようと暴れているうちに、手と足に枷がつけられた。

 嘘でしょう? どうして、私がこんな目に遭わなくちゃいけないの⁉


「何よ。何をさせられるの? お願い、助けて!」


 罪人になるなんて絶対に嫌!


「ねぇ! 私を誰だと思ってるの⁉ ソラリアの妹よ! お姉様に連絡してよ! お姉様なら絶対に私を助けてくれるわ!」

「……そんなわけがないだろう」


 騎士は私を蔑んだ目で見つめ、鼻で笑った。


「嫌! 嫌よ! みじめな気持ちになりたくない! 誰か、誰か助けて!」


 どんなに助けを求めても、騎士たちは私に同情の目を向けるでもなく、ただ、自分の仕事をこなしていったのだった。


 ******


 馬車に揺られて数日が経った。

 数日というのは、何日目かわからなくなるほど乗り続けたからだ。

 目的地に向かう馬車の中は、足枷が外され、わりと快適で、これから行く場所に期待が持てた。

 だけどそれは、これから待っている日々が辛いものになるため、それまでは幸せな思いをさせようという気遣い――いや、より絶望を味わわせるためのものだった。


「着きましたよ」


 道中に世話してくれていた女性は、私を馬車から降ろすと、迎えに出てきた施設の女性に引き渡した。

 何日間も一緒に旅をしたっていうのに、冷たい人ね!

 これから私が生活する場所は、木造の二階建ての施設だった。周りには高い石の塀に囲まれていて、逃げるのは難しそうだ。

 去っていく馬車を睨みつけていると、施設の女性から腕を引っ張られた。


「何をぼーっとしているの。ここに来たら、のんびりしている暇なんかないからね。早速働いてもらうわよ」

「は、働くですって⁉」

「当たり前でしょう。あなた、ここがどこだと思っているの? 大体、あなたは王妃陛下を唆そうとしたのでしょう? 生きているだけマシだと思いなさい!」


 施設の女性は呆れたような顔をして言った。

 その後、連れてこられたのは、薄汚れた服を着た女性たちがたくさんいる場所だった。皆、目は虚ろで生気のない顔をして、針仕事をしている。

 私や施設の人が見えていないのか、動きを止めることもなかった。

 その様子に私はなぜか恐怖を覚えた。


「わ、私、嫌だわ」

「ふざけたことを言うのはやめなさい!」


 施設の女性は私を叱責すると、近くにいた男性二人に指示をし、私に足かせをつけたのだった。


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