43 利用されていることがわからない元妹 ⑤ ~ソレイユSide~
お姉様が乗っていた馬車の中に、イライアス様の姿が見えた瞬間、初めてお姉様への殺意が芽生えた。
今まではお姉様のことを馬鹿にしていただけだった。だって、何をしても勝つのは私だと思っていたし、実際にそうだったから。
それなのに、どうして今になって思うようにいかなくなったの? なぜ、お姉様がイライアス様の隣にいるの?
以前、イライアス様に婚約を断られたことはある。でも、あの時とは状況が変わった。あの時の彼と今の彼は違う。本当は私と一緒になりたいはずだわ。だって、私の魅力がお姉様に負けるわけないんだもの!
そうよ。レイハート公爵夫人の座は私のものなのよ!
馬車を睨みつけていると、重厚な門がゆっくりと閉められた。それと同時に、兵士たちが私の両腕をつかんで門から遠ざけようとする。
「ちょっと、離してよ!」
「これくらいで済むことをありがたく思うんだな!」
右腕をつかんでいた兵士がそう言うと、左腕が解放された。
逃げるチャンスだと、私の右腕をつかんでいる兵士の手を振り払おうとしたが、その前に私は石畳の道に放り投げられた。
「いったあい!」
両膝を強打し、激痛が走る。
お気に入りである、レモンイエローのドレスは破れはしなかったが、かなり汚れてしまった。めくって膝を見ると、擦り傷ができ、血が流れていた。
「このドレス、いくらすると思っているのよ⁉」
「そんなことはどうでもいい。お前に王妃陛下と話す権利はない。まだ、優しく言っている間に、この場から消えろ!」
「嫌よ! 静かに返事を待っておくから、ここにいさせてよ! これだけ騒いでいたら、誰かが王妃陛下に報告してくださるでしょう?」
王妃陛下はお姉様のことを良く思っていないみたいだし、お姉様を苦しめようとする案なら、絶対に乗ってくれるに決まっている。
お姉様たちがなぜ、この王城に来たのかはわからない。でも、王妃陛下や私には関係のないことでしょう。
王妃陛下は協力してくれる。
私はそう信じて待ち続けた。
だけど、夕方になっても返事は来なかった。お姉様たちを乗せた馬車もまだ通っていないけど、もしかして、お姉様と王妃陛下が会っているわけがないわよね? だって、王妃陛下はお姉様のことを好きじゃないって、リット殿下から聞いたことがあるもの。
一体、王妃陛下は誰と会っているのかしら。それにしても、少し待たせすぎじゃない? いつまで待てって言うの?
暗くなる前に帰らなくちゃと焦っていると、私が立っている門から少し離れた場所にある通用門から人が出てきた。
たしか、王妃陛下の侍女だ。パーティーで王妃陛下とよく一緒にいるところを見かける人物だから間違いはない。
侍女は厳しい表情で私に向かって近づいてくる。
やったわ。これで、お姉様を絶望の淵に突き落とすことができる。
こぼれそうになる笑みを堪え、私は縋るような目を侍女に向けた。
「ソレイユ様、王妃陛下から伝言があります」
「どんなことでしょう?」
茶色の髪をシニヨンにした侍女は苦笑して答える。
「あなたの話に乗ることはできない。あなたのやろうとしている行為は、決して許されるものではないとのことです」
「……え?」
どういうこと? 私はまだ何も言っていないのに、話に乗るわけにはいかないなんておかしいんじゃないの?
信じられなくて呆然として侍女を見つめた。すると、侍女は近くにいる兵士に、ありえない指示をだした。
「彼女は王妃陛下を唆そうとしました。今すぐ捕まえてください。これは王妃陛下の命令です」
「なんですって⁉ 何を言っているのよ!」
わけがわからない。王妃陛下は私の味方じゃなかったの⁉
焦った私は急いでこの場から逃げようとしたが、兵士に捕まってしまったのだった。




