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【書籍発売中】レイハート公爵夫人の時戻し  作者: 風見ゆうみ


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42  利用されていることがわからない元妹 ➃

 ソレイユと王妃陛下の使いを接触させなかったことで、彼女は怒っているそうだ。

 宿屋が協力してくれることになったおかげで、今回はソレイユの悪巧みで終わらせることができそうだわ。

 残るは、王妃陛下に自分の立場をわかってもらうことだった。

 王妃陛下には明日の朝に謁見できることになっていて、王城まではイライアス様も一緒に行ってくれることになっている。

 なぜ王城までなのかというと、私と二人でなら話すと返事がきたからだ。


「無理に話をしなくてもいいんだよ」


 その日の夜、寝室のソファに座っていた私の隣に、心配そうな顔をしたイライアス様が座った。

 心配してくれる気持ちはありがたい。でも、何でもかんでも怯えているわけにはいかない。

 私は微笑んで答える。


「大丈夫ですよ。さすがの王妃陛下も私と二人きりの空間で何かあれば、自分が疑われることくらいわかるはずです」

「とは思うけれど、何か企んでいるんじゃないかと思うんだ」

「そちらについては、ワシやクロたちを信じます」


 万が一のために、イライアス様はルピを通じて国王陛下とラックス殿下に連絡をとってくれていて、ワシとクロが今も監視してくれている。クロたちは普通の人たちの目には見えないから、怪しまれることもない。

「ベェ!」


 ベェが自分もいるよと鳴いたので、イライアス様は苦笑する。


「そうだね。ベェもいるから大丈夫だとは思う。それに、最悪、僕が時を戻せばいい。だけど、時戻しができるといっても、心の傷は残る。それだけは忘れないでほしい」

「わかっています」


 膝に置かれていたイライアス様の右手に自分の両手を重ねて宣言する。


「やり直しがきくとわかっていても、イライアス様を悲しませるような真似はいたしません」


 イライアス様が時戻しをしてくれた場合、私の記憶はなくなるかもしれないが、イライアス様の記憶は残る。辛い思いを引きずらせたくないわ。


「そういえば、前回の時戻しの時は私の記憶があったのはなぜなのでしょうね」

「そのことについては、魔法について書かれた古い本にも載ってないし、今のところ答えを出すのは難しいかな」

「ベェたちもわからないって言うし、どうしようもないですよね。また、余裕ができた時に改めて調べてみようと思います」


 明日は早い時間から出発しなければならないため、話を切り上げて、いつもよりも少し早い時間に眠りについた。


 ******


 次の日の朝の空は今にも雨が降り出しそうなくらいの黒い雲に覆われていた。

 屋内にいる分は雨は嫌いではないが、出かける時は別で、どこか憂鬱な気分になる。

 イライアス様に心配をかけないように、そんな気分を隠して馬車に乗り込み、王城へと向かった。すると嬉しいことに薄暗かった馬車の外が明るくなり、窓から空を見上げると、雲の合間に青い空と太陽が見え始めていた。

 これは幸先がいいかもしれない。なんて甘いことを考えたが、明るい気持ちは城門を前にして打ち砕かれた。


 城門の前で門兵と言い争っていた人物がおり、それはソレイユだった。


「私は王妃陛下と話がしたいだけよ! お願いだから、中に入れて!」

「お約束はされていないのですよね?」

「していないけれど、会う約束をするために会うのよ! どうしても中に入れてくれないと言うのなら、手紙を渡すから今すぐに返事をもらってきて!」

「それはできかねます。お帰りください」

「嫌よ!」

 

 イライアス様と顔を見合わせたあと、私は馬車からは降りずに、窓を開け、少し離れた場所にいる彼女に話しかける。


「ソレイユ、人に迷惑をかけるのはやめなさい。貴族ではなくなったあなたに、王妃陛下が興味を持つわけがないでしょう?」

「お姉様!」

「近づくな!」


 ソレイユは馬車に近づこうとしたが、護衛によって阻まれた。

 彼女は護衛の手から逃れようとしながら叫ぶ。


「お姉様! 王妃陛下は私のやろうとしていることに興味があると言っていたの。詳しい内容は聞かなくてもいいわ。ただ、手助けしてくれるかだけ聞いてほしいの!」

「あなたのやろうとしていることって何なの?」

「それは……、お姉様には関係ないわ」

 パンナを酷い目に遭わせて私を悲しませようとしているなんて口に出せないわよね。

「私に関係がないのならお断りするわ」

「え?」


 断って窓を閉めた時、私たちの入城が許可され、ちょうどいいタイミングで馬車が動き出したのだった。


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