13 元夫の嘆き
二人はソレイユとの関係が長いことを、私と同じく知らなかったらしい。きっと、私が出かけている時に、ロガンは邸にやってきて、ソレイユと深い仲になったのでしょう。
侯爵夫妻は、彼が私に会いに行っていると思っていたから、婚約者を愛する息子としか思っていなかったのね。
レイハート公爵家の使用人たちは、お父様に口止めされていたのでしょう。
私が頭の中を整理している間に、今まで黙って話を聞いていた、イライアス殿下が口を開く。
「心はレイハート公爵代理から離れていないと言いたいのかもしれないけど、僕が彼女の立場だったら許せないな」
「殿下とソラリアの考え方は違います!」
イライアス殿下の考えを否定し、ロガンは私を見つめる。
「僕の顔を見てくれよ! 反省して泣いて苦しんでいるのがわかるだろう!」
ロガンの目は真っ赤で、今まで泣き続けていたことはわかった。だが、泣いたからって許せるものでもない。
「ロガン、反省しているのなら、大人しく両親と一緒にレイハート公爵家から出ていって」
「は、反省しているけど、出ていくのは嫌だ。離婚も嫌だ!」
「子供みたいなことを言わないでちょうだい」
どんどん彼への気持ちが冷めていく。もう、話すことなんてない。
「ロガンをレイハート公爵家の敷地内から追い出して」
「嫌だぁ!」
近くにいた騎士に命令すると、騎士の返事をかき消すほどの大きな声を上げてロガンは泣き出す。
「子供みたいに駄々をこねる度に、私のあなたへの気持ちは嫌悪感に変わっていくの。これ以上嫌われたくないと思うのなら、大人しく出ていって」
「ひ、酷いよ」
ロガンはぐすぐすと鼻をすすり、縋るような目で私を見つめた。
こんな彼を見て、可哀想だと思う人もいるかもしれない。けれど、私は情けをかけるつもりはない。騎士に再度指示を出した。すると、大柄な騎士がロガンの体を抱え上げ、問答無用で追い出してくれた。
嫌がるロガンを追い出し、侯爵夫妻に帰ってもらったあとは、イライアス殿下に王命のことで詳しい話を聞こうと思った。
だが、考えていた以上に、ロガンの排除に時間がかかり、今から話をするには夜になってしまうと気がついた。
夜はやはり昼間よりも治安が悪くなる。そのため、明日、私が登城して話を聞くことになった。
「父上も仲間なんだ。だから、君の手助けをしてくれると思う」
イライアス殿下はそう言って、馬車に乗り込んだ。
仲間というのは、国王陛下も魔法を使えて、使い魔がいるということかしら。そのことも明日教えてもらえるでしょう。
空を見上げると、日が傾き始めていた。一時間もしないうちに空には星が見えるはずだ。
「お気をつけてお帰りください」と言葉をかけると、馬車はゆっくりと動き出した。
国王陛下は父と何度も話したことがあるはずだし、父の人となりを知っているはず。
どうして父が私を憎んでいたのか。手掛かりになる情報を得ることができればいいんだけど――。
馬車が見えなくなるまでポーチに立っていると、離れのほうから声が聞こえてきた。
「お姉様、ここから出してよ!」
それはソレイユの声だった。




