王の罠
親御さんに挨拶に来る男とはこういう心境なのだろうか。まあ他人の空似で通す気なので特にそういったことはしないのだがなんとなくアイシャの父親に会うというのは緊張する。しかも何が面倒って俺1人で会わないといけないらしいのだ。
「あのねご主人様、間違ってもうちのおt……王様を怒らせないでね。下手に怒らせるとご主人様が危ないし」
こいつまだ俺にばれてないと思い込んでるのか?それとも分かっててはぐらかしているのだろうか。向こうが用意してくれた家は何故か一軒家で、しかも俺たちの家の構造とどことなく似ていた。もしかしてわざわざ用意していたのだろうか。
「まあ謎の好待遇の理由でも探ってくるとしますかねーっと」
そんなわけで彼女達には一応2人以上で常に行動しておいてくれとだけ伝えて俺は謁見に向かう。きっと偉い人であろうエルフ達に連れられて王のもとへと向かう。そういえばエンデシアの王城は遠くから見ただけだったがそれだけでもかなり構造が違うことが分かる。
というよりこれは城と言っていいのだろうか、はっきりと構造を言ってしまうとここのはただの木である、ただ物凄く大きい。来る途中から既に見えていた時は大きな木もあるものだと思ったものだが何を思ってこんな城にしたのだろうか。この城に入ってからなんだか重い体を動かしながら歩いていた俺の考えを予想したのか付き添いの1人が話しかけてきた。
「ここは世界樹と言って世界創世の時、神が最初に生み出した存在と言われているのです。たかが木なんて考えをしないでいただけると」
「は?この木を最初に?」
俺は何を思ってこんなものから作りだしたのだろうか。少しユニが俺の疑問に答えてくれることを期待したが何も教えてくれなかった。きっとどうでもいいことなのだろう、そう思って疑問をとりあえず頭から消す。
こうして世界樹の中を進むうちにやたら豪華な部屋にたどり着く。謁見の間ってやつだろうか、俺もとっとと話を済ませて観光をしたいのである。
「ようこそレン君だったかな。楽にしてくれよ」
そんなこと言ってるがここで本当に態度を緩くするのは愚策もいいところである。だが偉そうな存在だったせいで敬語を使うのを体が拒否するんだよなぁ。何とか敬語っぽいものを使おうと台詞を考えていたのだがそこで笑ったアイシャ父が言葉をつなげる。
「同盟国の王女と婚約したそうじゃないか。立場も低いわけでもないだろう?」
「……後で文句言わないでくれよ」
俺はそう断って普段通りの話し方で話す。ここで間違っても元創造神だから敬語は難しいなんて言おうものなら如何にも創造神に関する言い伝えがありそうなこの木の住人につるされかねない。そう考えるとよくアイシャはあっさり受け入れたものだ。
そこから王は何故かどうでもいい話ばかり振ってくる。やれ私生活がどうの、やれ連れてきたのは全員嫁かだの。全員じゃない、少なくともまだ大丈夫だ。いざ一緒に暮らさないことになると寂しくなりそうだと思っている時点で俺は相変わらずちょろい。
「それで気になったんだけど君エルフの奴隷持ってるよね?」
「ああ、それが?」
これが本題か、結局ここまで依頼の話なんてしていないのでこれが最初から目的だったのかもしれない。やはり親にはバレバレだったということだろうな。
「いや、最近うちの領に不法侵入する奴隷商がいてね。しかも誘拐して奴隷にするなんて悪徳なものなんだ。彼女もその被害者かと思ってね」
「さあな。俺は売っていたから買った。それだけだ」
「まあ君が悪いわけでもないしね、あんまり文句言ってもしょうがないか。つい愚痴を言ってしまったよ、すまないね」
そこで一度話を区切った王は依頼についての話を振ってきた。
「あーごめん本題についてだったね。君には私と決闘をして欲しいと思って呼んだんだ」
「……弱い者いじめでもしたいのか?」
名前 ディート・ゼス・アーカディア
種族 ハイエルフ
性別 男
年齢 351
レベル 61
<センス>
生命 S
魔力 A
知力 A
筋力 B
精神 A
器用 A
敏捷 S
幸運 C
<スキル>
【弓の天賦】【剣の天賦】【精霊神の加護】
【弓術:S】【剣術:S】【狩猟:S】【指揮:S】【統率:S】
【進化の奇跡】
<魔法適正>
水,風,光,精霊
ハイエルフ?その疑問には奴のスキル欄が答えていた。どうも人間でも進化するらしい、明らかに年齢の割にレベルが低いのはどういうことだろうか。
『進化をするとレベルが1になるんですよ。つまり進化したレベルが分からないと参考にならないということですね』
面倒な……。どのみち断れる空気ではないのでやりあえばいいということなのだろう。勝っても負けても俺にデメリットはなさそうだし問題ないか。俺がそう思ったところでまるで思い出したかのようにディートはポンッと手をたたいてにやりとする。
「そこで先ほどのエルフの話なのだがね。もしこちらが買ったら解放してもらえないかな?」
「俺に何かメリットでも?」
「一応君が勝った時の金額の10倍は払おう。それだけじゃない代わりに正規のエルフ奴隷を買うことを許可しよう」
「断ると言ったら?」
やっぱりそりゃ気づいてるよな……。アイシャは意地でもおいてくるべきだったか。
「その時は力尽くさ。これでも人の親なんでね」
「襲われたら叶わん。ルールは?」
俺に有利なルールにしてくれねーかななんて思ったがそりゃ無理だろうな。というか親なら誘拐されたりしないように大事な娘くらい守ってみせろっての。
「1人ダウンしたところで立っていた方の勝ちでどうだい。仲間との交代を1度のみありにしよう。君が司令に向いているタイプの人間なら申し訳ないしね」
「……わかった。場所と時間は?」
「明日の昼この城の闘技場で」
結局いいようにやられてしまった。この借りは明日返してやるとしよう。ただ俺はこのやたら重たい体に嫌な予感がぬぐえなかった。




