予期せぬ依頼
今日は朝からギルドに呼び出された。なんでも今からすぐに受けて欲しい依頼があるらしい。指名依頼を受けられるようになったという話から急ぎの用なんて嫌な予感しかしない。
一応なるべく早く身支度を整えて皆でギルドへと集まる。勇者組に関してはサツキは今後別に俺たちのグループに自由に来ていいと彼女の兄からお墨付きをもらったらしい。何か納得させるような行動をした記憶はないのだが何かきっかけでもあったのだろうか。
「いやーすまないねえ。あんたのとこに指名依頼が来てるんだよ」
「依頼主は?」
「あんたは口の利き方がなってないね……。」
エルフの国の王が依頼を出す……いやいやエルフだからってだけだろう、そうに違いない。同じようなことを思っているのかアイシャは綺麗な顔を面白いように歪めて青ざめている。というかこいつ一応奴隷なのに帰りたいとか言わないけどそんなに実家はつまらなかったのだろうか。
アイシャは愉快な性格をしているのでこういうのびのびした生活の方があっているのかもしれない。今のうちに王様を誤魔化す方法を考えておくかと思ったが他人の空似で通した方が後を考えたらいいかもしれない。
「二人とも態度に出過ぎるきらいがある。私が誤魔化すのは手伝うから安心して」
コレットが力強いことをいってくれる。彼女は比較的ポーカーフェイスも得意なのでうまくやってくれるかもしれな……。
「待て、お前もバレたらまずいだろ」
「そんなことはない。何のことだかわからない」
「いやいや、明らかに訳ありのアイシャと俺より前から知り合いの時点で誤魔化せねーから」
ただ他の王家とのつながりがなかったお陰でティア達は知らないんだよな。
「そういえば依頼の内容は何なんだ?」
肝心なことを聞いていなかったので俺は質問をする。
「ふん、魔王の仲間、それも幹部クラスらしい存在を倒したお前らの力を借りたいそうさね」
その話をされて浮かぶのがドッペルゲンガーだ。奴を倒したのはそもそも俺じゃなくてルリアがワンキルだったりするがそこまで言う必要もないか。少しルリアが誇らしいどや顔をしているのがちょっとかわいい。こういう一面もあるんだな。
「まあ、わかった。それで交通手段とかは依頼主が用意してくれてたりしないのか?」
「それなら街の外で魔導車が待機しているからとっとと行ってきな」
雑だな、おい。しかも詳細は向こうで王様に聞けとかこの婆本当に偉そうである。俺?俺は元が元だからいいんだよ、記憶ないけど。
というわけで魔導車に乗せてもらい、いざ隣国に出発をした。ちなみに運転手のエルフはアイシャを見た時にぎょっとした表情をしていたがアイシャの方は知らない相手のようで首を傾げていたのでまだバレていないと思いたい。
「わーい、ルシエも連れて行ってくれてありがとーお兄ちゃん」
「ほら、アレだ1回くらい旅行に行った方が将来商売をするならいいと思ってな」
これは思ったより滞在期間が長くなりそうなのでルシエも連れて行くことにしたのだ。ダメ元で聞いてみたんだが何故かあっさりと申請が通ってしまった。正直遊びに行くわけじゃないって断られると思っていたんだが何を考えているのやら。実は切羽詰まった事なんて何もないんじゃなかろうか。
「先輩みてくださいよ、森ですよ森」
「そんなこと言われんでも分かってる」
アーカディアは全体的に緑の多い地域で王都も森の中にあるくらいらしい。既に領地的にはアーカディアの範囲に入ったので緑が周りにあふれていた。来たことがあるらしいコレットは特に面白い物でもないとそっけない感じだったが異世界から来たサツキなんて特になんにでも反応を示していた。そう言えば彼女はむしろ魔導車にかんしてはなんであるの!?とは言っていたが特に構造とかは不思議がっていなかったので元の世界には似たものがあるのかもしれない。
俺自身も当然ここまできたことはなかったので外の風景を見ているだけで楽しかったりする、それを横にいつものように引っ付いているイリスと俺の足に座っているルシエ、そして今日は俺の隣の席になったサツキと話しながら乗っているそう時間もかからずにアーカディアの首都が近づいてきた。
故郷が懐かしいのかアイシャは少し憂いを帯びた顔になっている……別に俺の物だし返す理由なんてない、ないのだが……。なんだかよくわからない感情に晒されたがそれが何かはよくわからなかった。




