一見は平和
そろそろ話を進めます。一部を除いてキャラが揃ったので
自分たちから話題があっさりと移り困惑している勇者たち、そちらがふと気になって視線を向ける。サツキがこちらを見てびっくりした表情を浮かべてきたので気が付いたのだろう。後で話しかけてやろう。
一応国主体のイベントなのでついてきていた騎士たちも最初は困惑していたが流石にまずいと思ったのか警告が入ったので俺はバカ騒ぎを中止した。他の男冒険者たちも空気を感じたのかぴったりと俺とのチャンバラを中断する。本気で殺意がこもっていたとしても真剣ではなく木刀を使ってくれているのでチャンバラでいいだろう、交流みたいなものだ。
「なんだかこの街前来た時と少し空気が違うな……。何かあったのだろうか」
騎士の一人がこんなことを言っているが神が降臨したり王女が在住したり、別の国の王女が2人も奴隷やってたりするだけではじまりの街の名にふさわしい普通の街である。流石に無理があるかもしれない、もっとも俺が来る前のこの街の空気なんて俺が知るわけがないのでこのことは置いておこう。これから暫く魔王戦前にここで修行をするらしい。王都辺りは敵が強くまだ今の勇者たちでは太刀打ちできないのでレベリングなんていう理由だったりする。もしかしたら王様は俺のところに王女たちを避難させる目的もあるのかもしれないと思うと見ず知らずの相手に娘を預けた気持ちが理解できる気がした。
なんでも魔王覚醒が近づくまでは王都回りは魔物なんて現れないらしいのだが魔王覚醒が近づくと途端に敵の強さが跳ね上がるらしい。どうせ俺が決めたことなのだろうが何が目的なのかもよくわからない。
「先輩!お久しぶりですね。……聞いていた以上に女の人連れてますね、少し少なめに言ってたんです?」
「違う、あの後色々あって増えただけだ」
「サツキさんお久しぶりです。元気にしていましたか?」
面識の唯一あるイリスが話しかける。先ほどミナの正体バラシをした時からスキルは切っているようで元の姿に戻っていた。イリスの姿に気が付いたサツキは目を丸くして驚いている。
「え?あれ……なんでイリス様こんなところにいるんです!?」
てっきり勇者には伝わっていると思っていたのだがどうも知らなかったらしい。他の勇者たちもこちらに注目していたのでイリスに気が付いて面白いリアクションをしていた。
「今はお兄様の家に一緒に住まさせてもらっています」
「イリスの姉と婚約したからお兄様って呼ばれてんだよ」
「まあレン君は一途さなんて欠片もないから兄と慕ってくれているイリスちゃんにも手を出しそうだよね」
おい、余計なことを言わないでくれ。前みたいに悪意で言っているのではなくからかっているつもりなのは伝わってくるが初見の相手だと誤解される。実際誤解されたようで意外と純情なサツキが少し赤くなって目をそらしている。
「まあご主人様が最初に手を出したのは結局私だったし最低でも2股はしてるわよ」
事実だが今言う必要はないだろアイシャ。というか勇者たちからの視線がまずいことになっているんだが。普段の羨ましいって視線とは違い、少し引いている感じを見るに彼ら彼女らは一夫一妻の世界から来たのかもしれない。
「一応言っとくがこの世界は一夫多妻はオーケーだからな。サツキたちがいた世界が違うのかもしれないが俺は全部本気で浮気はしない主義なんだ」
「マスターはかっこつけてるけど、それただ惚れやすいってだけだと思う」
ちなみにサツキは別に軽蔑した様子はなく、俺たちのコントのようなやり取りで笑顔になってくれているので俺的には満足だ。他の勇者たちも今後は同じ街にいるのであまり悪い印象を与えたくないのが本音ではあるがこの調子ならマイナススタートだろう。
「いやー思ってた以上に先輩の女関係がだらしなくてびっくりです」
「まだ2人だけだからセーフってことにしてくれ」
「ルシエのこと忘れちゃ駄目!」
あ、今ので勇者たちから感情が抜け落ちた。サツキは少し固まった後に何故か吹き出す、実の姉であるルリアもこの状況を笑ってみてくるのだが少しは弁解を手伝ってくれてもいいのではなかろうか。
「言い訳をさせてくれませんかね」
俺の言葉なんてさておき勇者たちはお互い仲のいい相手とひそひそとこちらを見て話し始めた。こういう時サツキが話しかけられないのはやはり少し浮いているのかもしれない。スキルによると彼女だけ年齢が1つ下らしいので当然と言えば当然かもしれない。
「サツキは普段はどんなメンバーで戦闘訓練してるんだ?」
「すみませんね私は普段どうせボッチのソロですよ」
それは少し危ないからやめて欲しいのだが。実際にソロで行動していてたまたま俺が見たから助かったが本当なら死んでた奴がうちの仲間もいる。
そちらに視線をやると顔を赤くして目を逸らすなんて乙女な行動をしてくれた。……ああ、もしかしてルリアの俺への態度の緩和理由はコレットからその話を聞いたからか。今度はコレットに視線を動かすとこちらにぐっと指を突き出していた。正直半ば忘れていたのでファインプレーだったかもしれない。俺から言うと恩着せがましい事でもあるしな。
「この勇者騒ぎが終わったら俺たちもまた冒険者稼業を再開するんだけど一緒にやるか」
別に家で一緒に暮らさなくても前のルリアのように空いている時だけゲスト参戦すればいいのだから、転移魔法に関してはー適当に誤魔化そう。異世界人なのでそういう常識には疎いだろうし前も間違って彼女の目の前で使ってしまっていたのに特に何も今日言われなかったからな。
俺は相変わらずうっかりが多いななんて思いながら彼女の答えを待つ。
「えっと私レンさんやその仲間さん達ほど強くないですけどいいですか?」
「そもそも俺たちだって冒険者始めたのなんてほんの1か月前だから気にすることはないぞ」
これは俺なりの冗談だと思ったのかまた笑っている。ではよろしくお願いしますねと言われて俺たちの間での話は無事に終わった。俺たちの中では。




