ギルドでの日常
今日も近場で出来る依頼をしようとギルドへとやってきたがどうやら出来そうな依頼もないようなので今日は休みにすることにした。あと4日後には勇者御一行様がやってくる予定になっているせいか今日はギルドでもその話題で持ちきりである。
今俺と話している受付嬢も勇者のことが気になるのか既に30分ほど話を続けていた。幸い今日は人も少なく並んでいないので問題にはなっていない。というよりどうも周りが気を使ってここ以外の窓口を使っているようだ。この街の人たちはなんだかんだ良い人たちが多い。少し周りの男から嫉妬の目線が飛んできているが許容範囲である。そもそも受付嬢は誰もかれも見た目麗しいのでファンは多かれ少なかれついているものらしい。今話しているのは青い髪をポニーテールにした美人さんでおっとりした感じのお姉さんで会話をすると和む感じだ。
とはいえ流石に話が長すぎたのか彼女の先輩らしき人が後ろから軽く小突いくと先ほどまで楽しそうに話していた受付嬢の表情が青ざめてそこで話はお開きとなった。今度良ければ愚痴でも聞いてあげよう。
そんな俺に待たされていたパーティーメンバー達だが何やらテーブルで楽しそうに談笑をしていた、本当に彼女たちの仲良くなるペースには毎度驚かされる。
「待たせて悪かったな、とりあえず日帰りで取れそうな依頼がないから今回は無しだ」
実際には俺たちには転移があるので距離の問題なんて大体どうにかなるのだがギルドに転移ができるとバレるわけにもいかないのである。第1の問題だったルリアには正体を明かしたので転移についても話せるだろう。問題はギルドに完了報告をしてそれを誤魔化してくれる人材だ。前まではおかしなことがあってもミナが恐らくやっておいてくれたのだろう。
ちらりと彼女に視線を送るとウインクをしてきた、やはりそういうことなのだろう。それならいっそ現役の受付嬢の誰かにばらしてしまえば解決はするがそこまで信用できるほど仲のいい相手もいない。ベストは今まであったことはないがギルドマスターに国を通して話を付けることだろう。
だがどのみちそれは今後の課題であり、今日は休みだ。
「わかった、次はいつにするの?」
「勇者が帰った後にするつもりだ。ルリアは予定を空けておいてくれると助かる」
一人称が僕で少し気が強いルリアだがお年頃の女の子だ。予定がもし埋まっているようなら日程をずらすか転移日帰りで依頼を受けずに行ってくるとしよう。
「そのことなんだけどさっき皆と話してて暫くそっちに泊まってもいいかな?」
家主の俺がいないところで勝手に話が進んでいるようだ。確かに建てたのは俺じゃなくてミナだけどさ。
「一応どういう話になっているのか教えてくれ。状況がよくわかっていないんだ」
俺が聞くとアイシャが丁寧に教えてくれた。なんでもこのように毎度毎度予定を合わせるのも大変なのでいっそうちで一緒に生活すれば自然と予定も同じになるとのことらしい。
なんで徒歩10分程度のご近所さんなのにそんなことになるのか知らないが俺は別に構わない。やはりコレットが彼女に何かを吹き込んでから彼女から俺への態度は相当軟化している。前のままなら彼女たちの勧めでも俺と同じ家に住むなんて口が裂けてもいわなかっただろう。少し不気味ですらある。
「俺はいいけどおっさんの許可出るのか?」
ルシエの件は事情が事情だけに見逃してもらえたが最初の反応を見る限り奴は間違いなく娘を溺愛している。そんな娘が他に沢山女がいる男の家で娘が生活するのを許可するとは思えない。
「ふふふ、そこは心配いらないさ。ルシエ共々生活費を負担してくれるなら助かるって言質を取ってきたよ」
「さりげなくルシエを巻き込むなよ!」
なんだか元神で記憶喪失者の俺が一番まともに感じてきたんだが。俺の中では唯一の常識人枠になってくれると信じていたのにルリアお前も異様な行動力を見せやがって。
「なんだか最近貯金が空になったから貯めるために使う量を減らせて比較的安全そうなところに送るのはしょうがないって言ってたよ」
これは間接的な脅しだろうか……。俺は正当な価格を払わせただけなのに俺が悪いみたいな空気になるのはやめて欲しい。特にアイシャには俺を責める権利なんてないと思うんだ。
俺の家は次々に同居人が増えていく。そういえばまだ部屋が余っているがこれを設計したコレットはどういう目的であの空き部屋の数を決めたのだろうか。
「なあコレット」
「別にマスターがこれからも女を増やすだろうと思って予想の数部屋を用意したわけじゃない」
自白しやがって。少しお仕置きで頬っぺたを引っ張ってやるとモチモチとした感触に懐柔されそうになった。
「お兄様、私にもしてください!」
「もう、イリス何を言ってるの……」
少し嬉しそうな顔をしたコレットが羨ましかったのか自分から引っ張ってほしいと顔を突き出すこの国の第2王女とそれを少し羨ましそうに見るこの国の第1王女。この国の未来はきっと明るくないだろう。そんなしょうもない事を思いつつも姉妹の頬の柔らかさを堪能した。
翌日以降ギルドのテーブルには過度のイチャイチャはお控えください。と書かれた張り紙が追加され男たちから殺意の籠った視線を向けられるようになるのは別の話である。




