考えなしは反省を
食事も済んだところで俺たち4人は鍛冶場へと向かった。ここは従来の鍛冶場と大きく異なり魔力を燃料にして炉の温度が上がるという仕様になっている。
「アイシャ、お願い」
「コレット、貴方ね……別にいいけど」
コレットはアイシャにお願いをして魔力吸引装置を握らせる。現状彼女が一番レベルが高く、しかもエルフなので魔力も最も多く持っているのだ。コレットは前にアリから落ちた金属やモンスターの素材を並べて吟味していく。
とりあえず俺の剣、コレットの槌、ルリアの短剣は新しいものにしたいと思っている。現状王族のミナはいい武器を既に持っているしアイシャは俺が割と本気で創造で生み出した武器がある。そのうち更新したいとは思うが敵相手なら十分だ。
「マスターとミナは今日いてもしょうがない。集中したいから出て行って」
きっと俺を待たせ続けるのも悪いと思っただけなのだろうがこんな言い方されると流石の俺も少し傷ついた。横をちらりと見るとミナも少し涙目になっていた。ちなみにコレットの現在スキルはこのようになっている。
名前 コレット・ロードス
種族 ドワーフ
性別 女
年齢 18
レベル 49
<センス>
生命 E
魔力 F
知力 C
筋力 A
精神 D
器用 A→L
敏捷 B
幸運 S
<スキル>
【超神煉磨】
【槌の天賦】【鍛冶の天賦】【発明の天賦】
【獲得SP増加】【必要SP減少】【成長率増加】【無限収納】【万能鑑定】
【鍛冶:G】【工作:L】【お忍び】【料理:S】
<魔法適正>
火,土
かなり生産に特化したスキル構成となっている。【鍛冶の天賦】を後付けしてやると【鍛冶】がLどころかGまで上げられた。というよりスキルにも存在するんだなということが驚きである。
彼女も自分のスキルランクが見たことのないものになっていて大層驚いていたがとりあえず俺のせいということにしておいた。あとは細かい作業に必要な器用をスキルポイントで上げておく。ちょっとインチキ臭い改造だが折角の生産系壊れスキルなので最大限利用したいのだ。
個人的にはあまりにも戦闘系スキルがないので今後戦闘時に不安を感じてしまいそうなのだが彼女自身が最後でいいというのだからしょうがない。その分普段の戦闘では彼女を一番気にかけることにしていた。
人類とは思えないスキル構成なのでどんなものが作れるのか楽しみではある。合金などは俺にはさっぱりわからないのでコレットにお任せするとしよう。
とりあえず俺とミナはアイシャとコレットにその場を任せて外に出た。個人的には埋め合わせのような気分である。ミナからもそういう気が使える辺りハーレム作る気満々ですよね、なんて呆れられてしまったが今は割と機嫌がよくなっている。
はっきり言って運命の人こと俺を待っていたミナははじまりの街について俺よりかなり詳しく、何もすることがないかのように思われたのだが逆にこの街に例外を除いているということなので鉱山都市まで連れてきたのである。前回この街に行く途中にあったのは王都に向かう途中だったらしい。実は鉱山都市から1日も馬車に乗ればつく距離なのである。
「みてください、射的ですよ射的。私人生で初めて見ましたよレンさん」
弓を使って的を射て景品を貰うという屋台のようだ。前回来たときはやっていなかったので日替わりなのだろう。
「ミナ、どっちが多く当てられるか勝負しないか?」
「そうですね……勝った方は相手の言うことを聞くというルールで行きましょう」
なんでもいうことを聞くか。なんというかとても魅力的な言葉である。そもそも自分から勝負を持ちかけておいてなんだがスキルがない相手と戦って俺が負ける要素なんてないと言っていいだろう。俺は勝利を確信しつつ分かったと返事をしたところで俺たちの順番となった。
俺は自身のスキルもあって外す要素などなく10本中10本とも的の中央を撃ちぬいた。ミナも健闘したのだが7本的中なので俺の勝ちである。
「お客さん困りますよ。ここに【狙撃】などの命中に関わるスキルがあるなら参加しないでくれって書いているじゃないですか」
「へ?」
確かにそこには小さくスキル所有者は禁止と書いてあった。まさかと思ってミナの方をちらりと見るとニコニコと笑顔の彼女と目が合う。どうやら最初から彼女は勝つのを確信していたようだ。一応射的の店主に謝ってからミナの分の商品を貰ってきた。何故スキルについて言われたのかと思えば最後の的が実はスキル抜きだと絶対に当たらないように細工されているらしい。
俺に勝って笑顔を浮かべるミナと手をつないでそこからも街を見て回る。彼女の見せる表情は新鮮なものが多くそれを見るたびに心が高鳴るのを感じた。流石は俺がこの世界に来て初の一目ぼれ相手である、あの時は自分のミスとはいえまさか王女様とは思わなかったし今もあまりそんな風に見えない。ただ今後も彼女と共にいられると思うと幸せな気分になる。
こうして暫くいろいろ見て回っていたのだが鉱山都市なだけあって色々とレアな金属や宝石なども露店を見つけた。その中に1つとても気に入った輝きをしているものを発見する。
「お客さんお目が高いね。これは創魂石と言う宝石でね」
「とても綺麗ですね……」
ミナも思わず息を漏らしている。青い石の中に光が閉じ込められて輝いているのがうっすらと見えて実に幻想的だ。俺たちの中では間違いなくミナが最も似合うだろう。彼女の瞳とよく似たそれを付けた彼女を俺は見たくなった。
「おじさん、これくれ」
「ヘイ毎度。一応加工できるけどどうするかい?」
「いや、それはこっちでやらせてもらうさ」
俺が買っているのを見て何故か少し不機嫌になったミナ、さっきまで手を繋いでくれていたのに離して少し前を歩いて行ってしまっている。もしかして家に残っている彼女たちの土産だと思ったのかもしれないな。俺は買ったばかりの宝石を手に握って久しぶりの創造の魔法を発動する。突然発生した膨大な魔力にそういうのが分かる人間達が驚いていたがすぐに終わったので落ち着きを取り戻す。
魔力に関しては魔法使いのミナも当然詳しく、俺の方を振り返った。
「あープレゼントというか婚約指輪みたいなもんだ、貰ってくれないか」
内心不安でいっぱいだったりするけどな。まだあまり彼女と恋人らしいこともしてないしアイシャには先に手を出すろくでなしと言っていい俺だが、彼女と今後も一緒にいたいという思いがこの行動に走らせたと言っていいだろう。もう少し時間を重ねてからでよかったような気もするが動いてしまったのである。
「これ私に……いいんですか?」
そのために作ったんだから当たり前だろう。俺が頷くとミナはおずおずと俺に向かって左手を差し出したのでそれに指輪を通す。創造魔法で無病息災になるような付与もしておいた自慢の一品である。ちなみに石から作らなかったのは魔力が枯渇するからという情けない理由だったりもするがそこは置いておこう。
「その……うれしいです」
恥ずかしそうに指輪のある指を手に包む彼女がとても愛おしくなり、俺はそのまま彼女を抱き寄せてそのまま唇を合わせた。ミナは俺の突然の、そして彼女にとって初めてのキスに完全にパニック状態に陥ったがそんな姿も可愛いなーなんてぼけたことを考えて暫くそのままの状態で固まる。
後で思い返すと俺は完全に暴走していたと言えるだろう。少しすると心に刺さった棘みたいなものが抜ける感覚のおかげで少し冷静さを取り戻す。
そして冷えた頭で周りを見渡すと場所がダメだったと気が付かされた。
「見てみてお母さん。チューしてるよチュー!」
「なんというか青春ね……」
「あんな可愛いこと羨ましい野郎だな」
「んーあの人どこかで見たような気が」
「アツアツすぎないかしらアレ。教育に悪いわ……」
ごめんミナ。これは俺が悪い。俺は自分のしたことの恥ずかしさに耐えられなくなってミナの手を取り物陰に逃げ込んでから自宅へと転移で逃げ帰り彼女に土下座で謝罪した。俺今凄くかっこ悪い。




