進展
質問を何とか躱して数日、俺達は街に帰ってきた。予定通りなら新居が完成しているころだろう。帰っている時は同居人たちとウキウキしながらルリアに自慢したら物凄くうざそうな顔をしていた。
彼女の茶色の瞳にうつるのは呆れ一色。少し悲しくなってきたが彼女もうちの同居人3人娘と会いたかったらいつでも来ていいというと嬉しそうにしていた。1人話題に入れないのは確かに気になるな、申し訳ない気分になったので後でなにかアイテムをあげよう。
「それじゃ僕もあとで君たちの家にお邪魔しに行くね」
「いや、今日来られても何も歓迎できないんだが」
家具などが何もないんだから無理に決まっているだろう。そう呆れ気味に告げるとちょっと浮かれ気味だったのに気が付いたのか顔を赤らめてじょ、冗談さなんて返してきた。そのうち彼女にも隠し事をなくしたいものだ。
無事に依頼の完了報告をしてルリアを家へと送り届けてから荷物を取りに一旦宿へと戻る。思ったより時間のかかる依頼だったせいもあり、前回が最後の利用になるとは思っていなかった。
「お前あんまり女増やして刺されるなよ?」
「親父さんよ、その心配はな……いとも言えないな」
横からため息が聞こえてくるが一応きちんと交際関係にあるのがミナだけであり、アイシャとコレットは奴隷ということになっているはずなのだが。だが他に渡すつもりも開放するつもりもない。というかそろそろいいんじゃないだろうか。
そんな下心を出すとアイシャに睨まれる。時々彼女には本当に心を読まれているんじゃと思うことがあるので恐ろしいことだ。
親父さんも呆れた表情、とりあえず一言彼に俺は伝えたいことがあったのである。
「毎回飯うまかった」
「おう、そっちの娘さん達の飯に食い飽きたらいつでもまた来いな」
わざわざヘイトまで集めようとしてくれるので親父さんはいい奴だ。ただ全く逸れていないのが悲しいな。今日という転機に俺も一歩踏み出してみるべきなのかもしれない。
「まあまたな親父さん」
「おう、元気でやりな。それと夜はほどほどにな」
俺の周りはどうしてこうもエスパーが多いのか、アイシャとミナが真っ赤である。コレットは反応はしてるが赤く染まり切らないあたり流石と言えよう。
その後何とか落ち着かせた3人を連れて必要なものを買いそろえて例の家が建っているであろう場所へと向かう。
「ねえミナ。私とコレットが書いたみたいな家本当に作れるの?」
今更そこに疑問を持っていたのか。彼女のコネと権力があって無理なら恐らく実現不可能なものだろう。
「実はロードス皇国でも有名な方たちが依頼を受けてくださいまして……。しかも素晴らしい図面を見せてもらったから今回はタダでいいとか」
「……ついてるなー」
「マスターの運はずるい。少し下々の物にも分けて」
ぶっちぎりで幸運が低いアイシャが少し涙目になっているからやめてやれ。それにしてもロードス皇国の名前が出たのにやけに冷静なお姫様だ。普通家に帰りたいとか思うもんじゃなかろうか。
例え言われても返す気がないのであまり関係ないのだが少し疑問に思ってしまう。そんな考えが顔に出ていたのかコレットは少し笑顔になりながら言う。
「私は籠の中の鳥だったから。マスターのおかげで楽しい」
そういえばこういうことを彼女から聞くのは初めてな気がする。というよりミナ以外は自分が王族だと口では言っていないのだ。当然なんのことだろうと知らないミナは不思議がっているが。籠の中の鳥というなら何故アイシャと面識があったのだろうか……。
少し思考の海に沈みそうになったところで周りからのざわめきで意識を引き戻される。どうやら目的地に着いたようだ。
周りの余っている土地全部が家の敷地というワイルドさ、家は一般住宅に比べると大きく豪邸に入るが庭の広さに押されるサイズでしかない。ただそのデザインのおかげでそれすらもアクセントとしている。
コレットのデザインは機能美とデザインどちらも追及したもので周りにこの街の住人が大量に集まっており完成したばかりの家が観光名所のような扱いを受けていた。家と直接つながっている工房も注目の的になっていることだろう。むしろそこが一番力を入れてもらったところでもあるのだから技術職の注目度が凄い。これはもし中を見たら即倒するのではなかろうか。
「ご、ご主人様……こんなに目立つ中家に入るの」
そうだよな、この中で俺が家に入っていくと何者だって話題が凄いことになりそうだ。視認できる範囲だしなんとか転移するべきかもしれない。そんなこと考えていたがミナが堂々と進んでいく。
流石にミナだけ目立たせるわけにはいかないよな、思い切りも大事か。今後ずっと悪目立ちする覚悟で彼女の横に並び小声で感謝を告げた。
やはりというかまたお前かみたいな反応をされたが開き直る。ミナが玉の輿とか言われていて思わず吹き出してしまい怒られたがしょうがないだろう。
うまく家に必要家具の配置も終わりそれぞれの部屋決めも行った。流石に自室は4人全員別室である、つまり寂しいがこれからは特別な時以外は1人で寝なければならないのだ。
アイシャが用意してくれた料理を食べると彼女のスキル構成には家事に関するものもあるせいでこの中でぶっちぎりにうまかった。
「なあアイシャいつの間に練習したんだ?」
俺と会う前の可能性もあったがよく考えれば彼女は王女様であり、練習なんて特にする機会があったとは思えない。俺の問いに彼女は少し頬を染めて俺から目を逸らす。
「その……何でもないから」
いつもより可愛らしく見えるその仕草にドキッとしてしまい俺も少し顔が赤くなった。そんな様子を見てミナとコレットは2人で何か相談していたが盗聴対策でもしていたようで俺には聞こえなかった。
その日の夜、浴場を最後に使い部屋に戻っていた俺は誰もいないはずの部屋でアイシャに出迎えられる。何が起こっているのだろうか、もし据え膳なら遠慮する気はないんだが。
「なんかようか?それとも」
「その……寝られないの」
どうやらこちらに拉致されてから俺と一緒に寝てばかりだったせいで眠られないということらしい。今後もずっと一緒に寝るという意味だろうか。彼女の特徴的な耳が真っ赤に染まる。
謎のロマンチックキスの事でも大体分かっていたが俺のことを憎からず思ってくれているのがよくわかり嬉しいというか俺自身異様なほど緊張している。今までは自身の壊れ能力で押し切っていたがこれに関してはそうもいかないだろう。
「あー、一応ミナに断りを入れてくる」
「えーっと、ミナには先に話してるわ」
互いに自分たちの互いの態度に思わず吹き出してしまう。それにしてもミナも了承しているのか。別に言わけでもなんでもなく付き合っている相手がいるのに他の女に手を出そうというのだからそれが俺の名目上とはいえ所有物でも一言いうべきだと思ったのだが。俺の気の多さに目を瞑ってくれることは本当にありがたい。ただ嫉妬もしっかりすることを前に確認しているので誰でも彼でも手を出すと怒られそうだ。
後に確実に起きるアーカディア王国とのいざこざについてはとりあえず置いておく。今の俺は神ではなく1人の人間なのだ、欲望を我慢するのはらしくない。その時の感情で行動して後悔するところまでが人間なのだ。
俺は彼女と意識のある初めてのキスをしてそのまま彼女をベッドの上に押し倒した。
「できれば……優しくお願いね」
「お任せあれ」
一度吹っ切れてしまえばどうにでもなるものだ。俺は茶化した答えを返しつつ彼女の服に手をかけた。夜はまだまだこれからだ。一言感想を言わせてもらうならアイシャが今までで一番可愛らしかったということだ。




