意外と秘密は傍にある
というわけで再びやってきたギルドにて報酬についての話をミナとしている。魔導車のおかげで日が暮れる程度で返ってこられたのが大きいだろう。ミナがまた様子が少しおかしくなっているがそこまで気にするほどでもあるまい。
「依頼ありがとうございました、報酬についてはこれに記入してもらえばいいそうです」
そういわれてミナから1枚の用紙を手渡された。家の特徴などの記入ができるようになっている。魔法を使えば大体1,2週もすれば豪邸も建つこの世界において規模はさほど問題ではない。ついでに俺は遠慮するような人間でもない。
「そっちも偉い人の相手お疲れ様」
俺がそういうと彼女は一瞬微妙そうな顔をしたがすぐに笑顔に戻る。もしかして様子がおかしい理由が違ったのだろうか。
今回の依頼主をティレシアという前回助けた女性だと仮定する。この名前を出してミナを揺さぶるのも情報の引き出しにはいいかもしれないがミナが守秘義務関連で罰せられる危険を侵すほど気になるわけでもないので我慢だ。
俺たちは受付を離れて席に着く。俺は家なんて快適でそれなりの豪邸で鍛冶ができるのならいいので元王族である2人に任せている。時々アイシャが必死に説得している声が聞こえてくるのでコレットも付けたのは失敗だったかもしれない。アイシャは割と苦労人気質だ、今後はもっと苦労かけるような気がしてならない。
そして俺は任せている間に少し自分の記憶の整理をしていた。あの時俺が助けた相手を思い出していた。何故か【創造神眼】でステータスを見た記憶がないのである、きちんと話をしたにもかかわらずだ。それにどこかで彼女を見たことがある気がしてならない。金髪ロングで赤い眼の知り合いなんていないはずなのだが。
『それはそうですよ、だってレン様情報を流したじゃないですか。元々あのスキルは人には余るものなので今でも抑えて使用しています。あんなに眠い状態で脳に負担をかけるわけにいかないというわけです』
やたら俺が戦闘中に疲れるのがはやいのはそのせいか。
『【鑑定】より情報量が多いですから。それをある程度取捨選択して流し見しているのが今なわけで。今だって無意識に1度見た相手の情報は見ないようにしているでしょう』
言われてみるとそうだ、意識しなければアイシャやコレットの情報が表示されなくなっているがこれは入ってきても流してるだけってことか。言われるまで全く気が付いていなかった、そういや最初に本気を出さないって自分で決めたがここまで機能セーブされていたとは。
『そういうわけですね。ですからあの時の騎士も朝になるまでステータスを見た記憶がなかったでしょう?』
これからは多少疲れても頑張ってみるようにしよう。そう思うと視界の情報量が一気に跳ね上がる。流石に空気の成分とかは流してくれているようだが人や物の情報が溢れかえって情報酔いしそうになる。
今思い出すと俺はこれだけ接点があるのに無意識に年齢以外の情報を見ていない相手がいることに気が付いた。そういえばあの時はちょうどスキルの操作加減が分からなくて周りの冒険者の詳細情報を見ずにステータスの偽装なんて間抜けなこともしたもんだ。
いい機会だしちょっと見てみるとしよう。流石に全情報は欲張りすぎだったので正面の情報だけに絞っておくことにして彼女を見る。
名前 ティレシア・ミナ・エンデシア
種族 ヒューマン
性別 女
年齢 15
レベル 8
<センス>
生命 E
魔力 A
知力 L
筋力 C
精神 A
器用 F
敏捷 D
幸運 B
<スキル>
【神撃】
魔法攻撃の威力が3倍。魔力消費1/3。非表示。
【お忍び】
王家に伝わるスキル。自身のステータスと姿を偽装する。
【魔法の天賦】
魔法に対して才能がある。ユニークスキル。
【火魔法:C】
火の魔法の威力を強化。
<魔法適正>
火,風,光,闇
「……は?」
思わず俺は間抜けなことこの上ない声を上げてしまう。当然奴隷2人組はいつの間にか取り合いになっていた紙を置いてこちらに注目していた。
とりあえず笑ってなんでもないと告げると誤魔化されていないが誤魔化されてくれた。こいつら本当にいい奴隷たちである。
『だからいったじゃないですか、姫コレ?って。私だって2人ぐらいじゃいいませんよ』
こいつにはどうも俺の流している情報まで見えているらしい。それにしてもティレシアといえば俺がこの前助けた相手と名前が同じである。そりゃどこかで見たことがあるわけだ、彼女も俺を見ておかしな態度も取ってしまうわけである。
どこから俺の居場所が特定されたのかと思えば知っていたのならば当然だろう。こんなところで王女が受付嬢なんてなんでやってるのかはよくわからんが俺は今まで通りに接することにしよう。この世界の王女があまり表に広められていないのは俺の横にいる2人の奴隷からもわかっていることだ。
「あ、あのレンさん」
「どうかしたか?」
「……要求が多すぎませんか?」
俺の渡したやたら事細かく書かれた家の情報についてミナは頬に汗を垂らしながら告げる。これから自分が使う金額の多さを考えているのだろう。ただ当初の予定と異なり裏面にうちのコレットが書いた図面があり、それがかなりの完成度となっているためあとは建てるだけという状況だ。
どうも彼女の固有特殊スキルは鍛冶以外にも発揮されるようだがそれなら説明文をもう少し工夫してくれと自分に文句を言いたい。
「そのー、どんな家でも大丈夫と言っていましたし大丈夫でしょう」
少し申訳ない気分になってきたが家を建てられるほど彼女がお金を持っていたことにも少し驚いている。もしかしたらここで1人暮らしているのも何か理由があるのかもしれない。
「一緒に飯にでもいかないか」
飯より遥かに高いものを買わせておきながら何を言ってるんだと思われるかもしれないがあくまで俺は気が付いていないということになっているのでセーフだ。
「マスターは女好き。今日アイシャとキスしたばかりなのに」
「へー、そうなんですか?面白い話ですね、ぜひ聞かせてくれませんかレンさん」
何故今ぶっこんだコレット。アイシャは顔を赤くして戦闘不能、ミナは言い方は怖いがしょうがないなみたいな声色で言って来たのでセーフだろう。今まで俺の落ち度で知らなかった彼女の秘密をこっそりと知って少しだけ特別感を覚える俺であった。
その後はまた俺だけ少し扱いが悪かった気がしたがミナとコレットも仲良くなってくれて何よりである。いつかと同じようにミナを送ると、別れ際に彼女が耳元に近づき俺の聴覚をもってしてギリギリのレベルで呟いた。
「明後日はお休みなんです、よければ一緒にでかけませんか」
振り返ると既に彼女は離れており、少し照れくさそうに笑って中に入っていった。
「女たらし。私は最後でお願い」
誑しこまれるのはいいのかよと突っ込みをすることもなく俺は少し呆然としてしまった。




