絡まる運命
前回と同じように客としてやってきた俺を見て奴隷商は驚いた顔をしていた。まさか返品しに来たとでも思われたのだろうか。
「1週間ぶりだな、この奴隷はよく使える」
「は、はあ。ありがとうございます」
これでとりあえずの誤解は解けただろう、あまりここの空気は好きではないのでさっさと買って出よう。ちなみに違法奴隷であることを俺が気づいていないことにしたいという理由もある。
「今回はどのようなご用件で?」
「ああ、実は女のドワーフが入荷してないかと思ってな、前の時はいなかったから買えなかったのだが」
前回から買う意思があったかのように言う。これでこの商人がもしドワーフの奴隷を持っていなくても捕まえてくるかもしれないなんてゲスなことは考えていない。だからアイシャは人の心を読んだかのように冷たい目を向けてこないでくれ。
商人はアイシャの方を向き、鑑定できなくなっていることに驚いて一瞬表情を変えるもすぐに営業スマイルへと戻る。そりゃ鑑定Sで鑑定できなきゃ驚くだろうな……。
「それにしても前回と言い運がよろしいですね、ちょうど昨日手に入ったばかりのドワーフがおりまして」
本当に運がいいな、後はその女ドワーフを見せてもらうだけだ。そう思っていると少し苦い表情をして商人は俺に問いかけてくる。
「ドワーフが3人いるのですがうち女は1人ですね」
これは男の方は相当優れた能力を持っているのかもしれないな、俺の場合後付けで無理な強化をさせられるから今のスペックなんてアイシャ級じゃないとどうでもいい。アイシャの持っている【奇跡の巫女】レベルだと後付けでつけるのにスキルポイントが4桁いるので実質不可能なのである。
それにアイシャの例からして本物の天才は能力に偽装が行われている可能性もあるので下手に高くない方がいいというのもある。相手の能力を見抜く能力があるのにそれを欺く能力が天才には備わっているなんてこの世界作った奴は本当に性格が悪い。
「ああ、女を見せてくれ。もし気に入らなかったら男の方も頼む」
アイシャからの視線が氷の刃になったのを肌で感じつつ俺は奴隷二人が連れてこられるのを待つ。連れてこられたのは13歳くらいの大きさの女の子、なのだが年齢は18となっている。ドワーフの女性はもしかしてみんな小さいのだろうか。
『あれ、言ってませんでしたっけ。ドワーフは男は髭もじゃ、女はロリっ子ってレン様が設定したんです』
俺の前世は変態だったようだ、それドワーフ同士の恋愛ってすごい絵面になるんだが。そう思うとそれが狙いだそうですよと返ってきた、いい趣味してるじゃないか。
それはともかくこの少女顔や背は小さいのにそれに比べて大きな胸を持っている。顔も煤被りになって分かりづらいが茶色の髪を無造作に伸ばしていてわかりづらいが可愛い顔立ちが特徴的でそもそも状況が読めていないといった様子で別に暗くもなってない。
「気に入った、この子にする。いくらだ?」
前回相当な金額を使ったから吹っかけられそうな気がしてならないが、ステータスを見るに値切れる要素がある。そしてこの少女、アイシャと同じ訳アリ系のスキルを持っている。自分でもびっくりの運の良さ、俺は自分に都合のいいように運命調整してから来たのではないだろうか。普通に考えて誘拐されて奴隷にされれば混乱するものだと思うのだが。
名前 コレット・ロードス
種族 ドワーフ
性別 女
年齢 18
レベル 1
<センス>
生命 E
魔力 F
知力 C
筋力 A
精神 D
器用 A
敏捷 B
幸運 S
<スキル>
【超神煉磨】
鍛冶の才能において並ぶものなし。神器を作成できる。非表示。
【槌の天賦】
槌の扱いに対して才能がある。ユニークスキル。
【非力】
筋力が半分になる。ユニークスキル。
【神の束縛】
レベルが上がらない。ギフトスキル。
<魔法適正>
火,土
非表示スキルが見えなければ下手をするとアイシャ以上に外れに見えるだろう。恐らくこいつも前のアイシャと同じように貴族にでも売り飛ばすつもりだったというかもしれない。
「彼女は金貨40枚ですね、もしあなたが来なければ領主様に金貨30枚でお譲りするつもりでしたので。ああ、まだ話はしてないのでご安心を」
ちょっと足元見られているが気が変わられても面倒だ、買ってしまおう。アイシャの時と同じく即決で決めた俺にこいつはうまい客だとにやにやした面を向けてくるデブが腹立たしい。というか当然のように王族を誘拐してくるな。
この一週間で調べたのだがこのエンデシア王国の周りにはいくつか国があってドワーフ主体のロードス皇国という名前の国があるのである。ついでに見てしまったアーカディア聖王国とかいうエルフの国を見てしまったときは一瞬青ざめたが王女を奴隷というのはプレミア感があっていいと開き直ることにしていたわけだ。そこから日課にトレーニングを入れたのは言うまでもない。
もう1人連れてるのも2人連れてるのも同じだろう、折角可愛い上に優秀な奴隷が手に入るのだからわざわざ逃す手はないのだ。
『レン様姫コレというやつですね!どうせならコンプリートしちゃいましょう。そうすれば実質世界の支配者です』
なんという過激発言、別にそんなもの目指さねーよ。あれ、そういや途中からアイシャからの視線が消えたな。そう思って振り返ってみると俺の正体を知った時より驚いた表情でコレットを指さしていた。お前奴隷に見えないから、せめて奴隷らしい奴隷の演技でもしてくれよ。
「契約は完了です、いやーそれにしてもこの短期間に2人目の奴隷を買いに来てくださるとは。余程の性豪なのですかな」
おい、それセクハラだろ。アイシャなんて赤くなった顔を冷やそうと水魔法唱えている。相変わらず反応が面白い。
奴隷商の言葉に色々と反応している間もコレットはボーっとしている。戦闘中は危ないので気を付けて欲しいところだ。正直脂ぎった男よりはやく我が奴隷2人と話したい。俺は適当にこの男との話を切って彼女を連れて宿に戻った。
帰っている途中に彼女に合う服をアイシャに選んでもらって顔の汚れなどは生活魔法で取り除いてやる。思った通りの美少女でこれだけであの金貨の価値はあるなと俺は満面の笑みだ。当然戻った宿では親父さんに酷い目で見られた。そりゃデートに行く食事もいらないと言っていた男が食事時間前に帰ってきてしかも新しい女連れだ。もしかしたら最低な人間だと勘違いされてしまうかもしれない、酷い誤解である。
「久しぶりねコレット。元気にしてた?」
「私は元気。アイシャとこんなとこで会うとは奇遇。なにしてた?」
どうやら顔見知りらしい、道理でさっきから様子がおかしいわけだ。世間狭すぎないかと思ったが、そもそも姫同士であの2か国の国交は良好らしいので十分にあり得ることだろう。どちらもヒューマンの奴隷商、しかも同一人物に捕まって同じ奴に買われるのは奇跡だろうが。
……俺が原因で3か国戦争が起きそうな状態だがバレなければいいのだ。
「私はー最近はご主人様の奴隷をしているわ」
「……奴隷だったの?てっきり首輪はプレイだと」
アイシャにそういう反撃は強すぎる、流石は知人。一瞬でアイシャを撃破した彼女に一応俺は自己紹介を行った。
「あー、俺はレン。アイシャとお前のご主人様って奴だ」
「私はコレット、よろしく」
あっさりと受け入れたな、アイシャとは大違いだ。もしかして奴隷になったのには何か訳があるのだろうか。そんなことを思っていたが相変わらず表情の読めないボーっとした感じでこちらを眺めている彼女を見ていると別に今聞く必要もないように思える。
「最初は夜伽からすればいい?」
「なあ、奔放過ぎね?」
「安心して、私はまだ新品」
そういう意味じゃないのだが。どうやらこちらの姫様はそういうジョークもいける口らしい。何故ジョークと分かったかといえば先ほどまでとは違い顔が若干赤いからである。ただ思っていた以上に面白い性格をしているのでやはり俺の奴隷を見る目はいいようだ。
『そうはいってもステータスとかのぞき見して決めてますけどね』
うるさい、見ずに選ぶより効率的だ。こうして俺はこの世界に来て2人目の王族と運命を果たした。




